尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

日活アクションの中で-芦川いづみの映画を見る③

2015年09月24日 00時13分56秒 |  〃  (旧作日本映画)
 芦川いづみの映画を見てまとめるのが2回で中断してるので、続き。まず「日活アクション」映画で出演した映画を振り返る。「日活アクション」というのは、石原裕次郎や小林旭が主演して続々と作られた日活のプログラム・ピクチャーである。アクションと言っても、本質的には「青春映画」と言ってよく、正義のヒーローに対する可憐なヒロインが必須である。初期の裕次郎映画では、大体その役は北原三枝が演じた。芦川いづみも出ている場合もけっこうあるが、役柄的に北原が姉的、芦川が妹的な存在になっている。一方、小林旭の出演作では、ほぼ浅丘ルリ子がヒロインだった。

 芦川いづみは裕次郎との共演がかなりあるけど、石坂洋次郎原作の「青春文芸映画」などの場合が多い。これは芦川いづみの持ち味を生かしているんだろう。だから、アクション映画の共演は少ないし、出ていてもヒーローの運命的な愛人役ではなく、ヒーローを陰で支える妹なんかの場合が多い。(裕次郎主演の「紅の翼」など。青春文芸映画では裕次郎に対して、自立した女性として交際する。)

 一方、裕次郎、旭以外のスター、赤木圭一郎宍戸錠などとの映画では、アクション映画での共演がかなりある。1960年の「霧笛が俺を呼んでいる」はその代表。だけど、この映画では芦川は赤木の先輩である葉山良二の恋人という設定になっている。葉山は死んだことになっているが、それを疑う赤木が真相を追求し、芦川との心の結びつきが生まれてくる。だから、対等な恋人ではない。赤木圭一郎(1939~1961)はわずか21歳で事故死したが、芦川の方が4歳年上である。そのキャリアの差が対等の恋愛関係を難しくさせるわけである。

 赤木が事故死し、裕次郎がスキー事故で骨折した1961年は、日活にとって難局の年になった。そこで二谷英明やまだ若い和田浩治を主演級に抜てきした。その中で作られたのが、鈴木清順の「散弾銃(ショットガン)の男」(1961)という珍品。清順ブレイクの年は1963年で、まだここでは人物の出入りがゴタゴタしている。山奥に恋人の死の謎をさぐる二谷英明に対し、山の私設保安官の妹という変な役が芦川いづみ。兄の保安官がケガして、後任におさまる二谷の目的は何か。この映画では、日本アルプス級の山の奥に、秘密のけし畑を作る悪徳組織があって、山の町を牛耳っている。そこの酒場が日活的な無国籍空間になっている。横浜や神戸の港にあると言われれば、多少は納得できるのだが、山奥に悪の王国があるというのはムチャである。そこに散弾銃を抱えた男が登場するというのも…。日活アクションにリアリティを求めても意味ないけど、これはすごい。ラストは海辺の決闘になる。芦川はいつの間にか二谷を慕う役柄を好演している。

 今回一番ビックリしたのが、「気まぐれ渡世」(1962、西河克己監督)。宍戸錠が射撃の達人で、謎の事件にかかわりがあると警察に追われる。ある酒場でうっかり子どもを預かると、預けた男が殺される。子どもを預かってウロウロする宍戸錠がおかしい。アパートで違う部屋の牛乳を盗もうとして、その部屋に来ていたシスターに出会う。つまり修道女である。これが芦川いづみで、シスター姿で終始するという不思議な映画である。結局、話は死んだはずの宍戸の戦友、内田良平が生きていて、悪の組織を作っているというところになっていくが、その主筋と関係なく、宍戸錠も逆らえない芦川いづみのシスター役が素晴らしい。だから、好意は生じるものの、恋愛感情とも言えないのだが、コメディだからそれでいいのである。ただ見つめるしかない芦川いづみ。
 
 「大学の暴れん坊」(1959、古川克己監督)も、赤木圭一郎主演のアクション映画と言える。赤木は大学の柔道部員で、先輩の葉山良二の弁護士と悪に立ち向かう。悪徳地上げ屋が登場するが、東京五輪の5年前の開発ブームで、ホテル建設をもくろむ勢力が町の商店街をつぶそうとしているという設定。芦川いづみは葉山良二の弁護士をおびき出すために捕まってしまう。そういうシーンがあるが、まあ芦川いづみ映画としては普通だろう。まだ赤木圭一郎が若造で、学生の暴れん坊という設定で映画になった時代の映画である。
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