尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

これからどんどん大変になる遺産相続ー相続を考える③

2024年05月02日 22時19分42秒 | 自分の話&日記
 遺産相続を通して考えたシリーズ3回目(最後)。1回目は相続財産確定が大変な話。2回目は不動産があると自分では難しいという話。3回目は最後にまとめとして、相続が難しくなっていく様子を考えておきたい。相続は「相続財産額」と「相続人数」で決まってくる。この相続人数の確定もなかなか大変である。もちろん自分にとっては、相続人数は判りきっている。親と兄弟姉妹の数だから自分は知っている。しかし、本当にそうなのか証明せよと言われると、これが結構大変なのである。

 「自分が自分である証明」も昔よりはるかに大変になった。何でもかんでも「本人確認書類」がいる。昔はそんなものはなかったのである。母親が主に使っていた銀行は「みずほ」で、自分が使っている銀行は「三菱UFJ」だが、初めに預金したときの名前は別だった。親が家を買った東京近郊は僕の幼少期には田畑ばかりだったが、どんどん住宅や団地、商店が建ち並ぶようになった。地区の発展に合わせて、駅周辺に銀行が作られていった。それが「富士銀行」や「東海銀行」だったのである。

 まあ僕の世代なら、金融危機などがあって銀行がどんどん合併していった様子はよく覚えている。そして、僕は東海銀行に口座を作ったのだが、開いたのは母親である。中学だか高校だかの時に、勝手に作ったのである。親なら子ども名義ですぐに口座が開けたのである。僕の「本人確認」などもちろんなかった。まだ銀行カードもなかった時代である。今じゃ考えられない。

 ちょっと脱線したが、「相続人数を確定させる」とは、つまり父母に他の子どもがいないかどうかということである。そんな話は聞いたことがないけど、それを証明せよと言われると面倒なのである。結局は生まれた時から死んだ時までのすべての戸籍を集めるということになる。この話は前に書いたことがあるが、異様に面倒だった。旧憲法時代の生まれで、「家族制度」があったからである。今と違って「母の父親」も「戸主」の戸籍に入っていたのである。

 だけど、そんな人は知らないし、ひょっとすると祖父の名前や出身地も知らない人がいるんじゃないだろうか。自分の場合、祖父の戸主の戸籍に母の出生が記録されていた。その後、祖父が分籍して戸主となり、さらに結婚で(僕の)父親の戸籍に移った。その戸籍は父方の祖父が住んでいた市にある。結局全部集めると、何十枚にもなってしまうのだった。もちろん戸籍謄本を申請するときには、僕の本人確認書類が必要になる。

 銀行や証券会社で相続手続きを行う場合、原則的にはその「すべての戸籍」の提出が必要になる。じゃあ、何通取ればいいんだと思うが、それを解決する方法があった。「相続情報一覧図」を作って法務局に登録するのである。これは2017年に始まった「法定相続情報証明制度」で、まあ公式認定された家系図みたいなものである。自分でも出来るらしいが、相続手続きを頼む時に一緒に頼めば簡単だ。(もちろん5万円ぐらい別に必要になる。)ただ、これがあれば紙一枚ですべての相続情報を証明出来るのである。
(相続情報一覧図=見本)
 銀行の場合は、振込手数料が取られるが自分の(他金融機関の)口座に入金可能である。(もちろん同じ銀行に自分の口座があれば、手数料なしで振り込める。)しかし、証券会社の場合、自分も同じ会社に口座を開かない限り相続が出来ない。わが家は父親由来の不動産と株式があったので、手続きが増えていったのである。株や投資信託は毎日値が変動するから、売るかどうかの判断は相続人がするしかない。そして証券会社に新規口座を開くときにも、本人確認書類がいるわけである。(他に「反社じゃない」とか、「北朝鮮に住んでる相続人がいないか」などにチェックする。)
(証券類の相続)
 こうしてやってみると、相続手続きは今後どんどん複雑になっていくと思う。母親の世代だと「暗号資産」など持ってない。FXとかネットの株取引もやってない。ネット上で完結する財産があって、パソコンやスマホにもパスワードが掛かっていたら、財産があるかどうかも判らない。それが判っても、財産額をどう見積もれば良いのか。一応死んだ日の値段で決まるんだけど、株や円相場の変動が激しくて困ってしまう。それにしても、どんどん世の中が面倒になっていくものだ。

 僕の身近な知り合いでも、配偶者がいないとか、子どもがいない、あるいは一人っ子であるという人がかなりいる。そういう人の場合、相続人の確定が難しい。そして昔買ったままの株などが残っていると、処理が大変である。昔は「株券」という実物があった。今は株券もなくなって、デジタル化されている。(2009年に株券電子化が行われた。)高齢者の場合、逆に紙の株式が見つかることもあるかもしれない。「デジタル化」に遺産相続が対応仕切れないのである。

 今は死後10ヶ月以内に相続税を払わないといけない。これはなかなか難しくなるのではないか。自分の場合、不動産の納税負担者の基準が1月1日なので、まず不動産の相続を先に行った。続いて、所有株がたまたま3月決算だったので、3月末までに株の書き換えを行った。相続税は少し掛かるレベルだったが、2月末には払った。遺産分割協議書は不動産とそれ以外の2冊になった。そういうことも可能なのである。だが難しいケースを考えると、申告期限を死後1年に延ばす必要があると思う。また「無条件でパスワードを開示出来る」国家資格(「相続士」とでもいうか)も必要なんじゃないか。

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