中教審教員免許更新制小委員会が8月23日に開催され、「教員免許更新制」の「発展的解消」という方向性が確認された。萩生田文科相は当日に記者会見を行い、そのことを発表し各マスコミが挙って報道した。7月に一部マスコミで「教員免許更新制廃止へ」という記事が報道されたが、その時は中教審で審議が続いていたので、僕はそこまで断言できるのかと思わないでもなかった。今回は文科省のサイト掲載の中教審資料に明記されているから間違いはないだろう。文科省の目論見としては「2022年通常国会に法案を出し、2023年度から廃止」というスケジュールが固まっていると考えてよいと思う。むろん法律を制定するのは国会であり、衆参両院を確実に通過するまでは正式決定とは言えないけれど。
(萩生田文科相の記者会見)
今回はっきりしたのは萩生田文科相の強いイニシアチブだと考える。今まで萩生田氏が「スピード感を持って」と言うのを聞いても、行政の常套句と思っていた。教員免許更新制小委員会は今まで月1回開かれていて、8月はすでに4日に開かれた。常識的に考えると、夏休み期間が入ることでもあるし、次は9月上旬の開催かなと思っていた。だから文科省のサイトは時々チェックしていたのだが、しばらく見てなかった。「8月中にも廃止を判断」と言われていたが、それも9月以後になるのかと判断していた。まさか3週間後にまた小委員会を開くとは予想していなかったのである。このような「スピード感」には萩生田文科相の強い意向があると思われる。
それは萩生田文科相の退任が近づいているということだと思う。萩生田氏が文科相として自ら「発展的解消」を決断して申し送りをするためには、8月中に判断しないといけない。もちろん菅義偉氏が自民党総裁に再任され、総選挙で自民・公明が過半数を獲得し、第2次菅内閣で萩生田氏が文科相に再任されるという可能性もゼロではない。しかし、2019年9月11日に就任以来ほぼ2年間文科相を務めている萩生田氏は、常識的に考えれば次は交代だろう。現時点では衆院選は自民党総裁選後という予測だが、夏前にはパラリンピック終了後に臨時国会を開いて解散という可能性の方が強かった。その時には9月上旬にまず内閣改造があるだろう。
萩生田氏は選挙に強いから、今度は交代の可能性が高い。萩生田氏は八王子市の出身で、東京24区(八王子市のほとんど)から5回当選している。2009年は民主党の阿久津幸彦氏に敗れて落選したが、阿久津氏は前回から選挙区を移動し、次回は立憲民主党から東京11区に立候補予定である。現在のところ、東京24区には立憲民主党の候補予定者がいなくて、共産党、国民民主党、社民党がそれぞれ立候補を予定している。今後どうなるかは判らないが、八王子の小中学校を出て、市議、都議を経験している萩生田氏の地盤は固いと考えられる。
選挙前に内閣改造をやるなら、選挙情勢が厳しい「入閣待望組」を登用するだろう。ということで、萩生田氏はもう文科相をしているのもあと少しと認識しているだろう。文部科学行政のエキスパートで終わりたくないだろうから、ここは一端退いて、次は党三役か重要閣僚での登用を目指すことになる。ではそういう萩生田氏がなんで「教員免許更新制」の「廃止」を早期に決断したのだろうか。それは憶測になるが、行政は止めることの方が難しい。「大学共通テスト」の「民間テスト」や「記述式」の導入を断念した萩生田文科相は痛感しているだろう。
(「教員免許更新制廃止へ」を報じるテレビ)
河野太郎前防衛相は「地上イージス」の配備を停止したが、そのことで「実力派大臣」として認められた。萩生田氏も「実力派大臣」にしか出来ない思い切った政策転換を自らの任期中に行っておきたいと思ったのではないか。もちろん萩生田氏が自ら判断したというよりも、省内外にブレインのような存在がいると思う。それにしても、教育現場を少しでも知る人ならば、この制度はもう持たないことはよく判っていたはずだ。単に教員の負担が大きいという問題に止まらない。僕もうっかり気付かなかったが、「もともと10年期限の免許しか持っていない教員」が続々と期限を迎えている。多忙な学校現場で誰が免許の期限なのか、把握するのも大仕事である。
この問題はもう少し考えてみたいが、その前に23日の小委員会資料の「審議まとめ(案)」を紹介しておきたい。あまりにも長くて面倒な官僚的作文なので、読むのも大変だけどその一番肝心な部分だけ。
よって、本部会としては、「新たな教師の学びの姿」を実現するための方策を講ずることにより、教員免許更新制が制度的に担保してきたものは総じて代替できる状況が生じること、教員免許更新制は、「新たな教師の学びの姿」を実現する上で、阻害要因となると考えざるを得ないこと、教員免許更新制の課題の解決を直ちに図ることは困難であることを踏まえ、必要な教師数の確保とその資質能力の確保を将来にわたって実現するとともに、教師一人一人が、持続可能な学校教育の中で、自らの人間性や創造性を高め、教師自身のウェルビーイング(Well-being)を実現し、子供たちに対してより効果的な教育活動を行うことができるようにするためにも、「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて、教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当であると考える。
判ったような判らないような文章だが、要するに「発展的解消」が適当だということである。その原案が了承されたということだろう。
(萩生田文科相の記者会見)
今回はっきりしたのは萩生田文科相の強いイニシアチブだと考える。今まで萩生田氏が「スピード感を持って」と言うのを聞いても、行政の常套句と思っていた。教員免許更新制小委員会は今まで月1回開かれていて、8月はすでに4日に開かれた。常識的に考えると、夏休み期間が入ることでもあるし、次は9月上旬の開催かなと思っていた。だから文科省のサイトは時々チェックしていたのだが、しばらく見てなかった。「8月中にも廃止を判断」と言われていたが、それも9月以後になるのかと判断していた。まさか3週間後にまた小委員会を開くとは予想していなかったのである。このような「スピード感」には萩生田文科相の強い意向があると思われる。
それは萩生田文科相の退任が近づいているということだと思う。萩生田氏が文科相として自ら「発展的解消」を決断して申し送りをするためには、8月中に判断しないといけない。もちろん菅義偉氏が自民党総裁に再任され、総選挙で自民・公明が過半数を獲得し、第2次菅内閣で萩生田氏が文科相に再任されるという可能性もゼロではない。しかし、2019年9月11日に就任以来ほぼ2年間文科相を務めている萩生田氏は、常識的に考えれば次は交代だろう。現時点では衆院選は自民党総裁選後という予測だが、夏前にはパラリンピック終了後に臨時国会を開いて解散という可能性の方が強かった。その時には9月上旬にまず内閣改造があるだろう。
萩生田氏は選挙に強いから、今度は交代の可能性が高い。萩生田氏は八王子市の出身で、東京24区(八王子市のほとんど)から5回当選している。2009年は民主党の阿久津幸彦氏に敗れて落選したが、阿久津氏は前回から選挙区を移動し、次回は立憲民主党から東京11区に立候補予定である。現在のところ、東京24区には立憲民主党の候補予定者がいなくて、共産党、国民民主党、社民党がそれぞれ立候補を予定している。今後どうなるかは判らないが、八王子の小中学校を出て、市議、都議を経験している萩生田氏の地盤は固いと考えられる。
選挙前に内閣改造をやるなら、選挙情勢が厳しい「入閣待望組」を登用するだろう。ということで、萩生田氏はもう文科相をしているのもあと少しと認識しているだろう。文部科学行政のエキスパートで終わりたくないだろうから、ここは一端退いて、次は党三役か重要閣僚での登用を目指すことになる。ではそういう萩生田氏がなんで「教員免許更新制」の「廃止」を早期に決断したのだろうか。それは憶測になるが、行政は止めることの方が難しい。「大学共通テスト」の「民間テスト」や「記述式」の導入を断念した萩生田文科相は痛感しているだろう。
(「教員免許更新制廃止へ」を報じるテレビ)
河野太郎前防衛相は「地上イージス」の配備を停止したが、そのことで「実力派大臣」として認められた。萩生田氏も「実力派大臣」にしか出来ない思い切った政策転換を自らの任期中に行っておきたいと思ったのではないか。もちろん萩生田氏が自ら判断したというよりも、省内外にブレインのような存在がいると思う。それにしても、教育現場を少しでも知る人ならば、この制度はもう持たないことはよく判っていたはずだ。単に教員の負担が大きいという問題に止まらない。僕もうっかり気付かなかったが、「もともと10年期限の免許しか持っていない教員」が続々と期限を迎えている。多忙な学校現場で誰が免許の期限なのか、把握するのも大仕事である。
この問題はもう少し考えてみたいが、その前に23日の小委員会資料の「審議まとめ(案)」を紹介しておきたい。あまりにも長くて面倒な官僚的作文なので、読むのも大変だけどその一番肝心な部分だけ。
よって、本部会としては、「新たな教師の学びの姿」を実現するための方策を講ずることにより、教員免許更新制が制度的に担保してきたものは総じて代替できる状況が生じること、教員免許更新制は、「新たな教師の学びの姿」を実現する上で、阻害要因となると考えざるを得ないこと、教員免許更新制の課題の解決を直ちに図ることは困難であることを踏まえ、必要な教師数の確保とその資質能力の確保を将来にわたって実現するとともに、教師一人一人が、持続可能な学校教育の中で、自らの人間性や創造性を高め、教師自身のウェルビーイング(Well-being)を実現し、子供たちに対してより効果的な教育活動を行うことができるようにするためにも、「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて、教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当であると考える。
判ったような判らないような文章だが、要するに「発展的解消」が適当だということである。その原案が了承されたということだろう。