尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

18歳選挙権問題①基礎データ編

2016年02月18日 23時05分21秒 |  〃  (選挙)
 選挙権年齢が18歳に引き下げられた問題について、数回書いておきたい。昨年に決まった時には書かなかったけど、実際に施行される時期が近づいてきた。まず、最初はこの問題の基礎データ編。

 「18歳選挙権」は、7月に行われる参議院選挙から実施される。参議院選挙は任期満了で行われるので、必ず7月半ば以後に行われる。選挙日程が決まった時点で、選挙翌日までに18歳になるものに選挙権が発生する。選挙翌日生まれだと、普通に考えると、選挙当日は17歳である。翌日が18歳の誕生日のはず。だが、法的には「翌日の0時以後に生まれたもの」に18歳としての権利を認めることになっている。「18歳」とは「18年間生きた」ということだから、誕生日前日=投票日が18年に達した日になる。1月1日生まれの人は、12月31日で「一年間生きた」ことになり、翌日の元旦は1年と1日目になる。)

 4月に衆議院の補欠選挙が行われる。(今のところ、北海道5区と京都3区が予定されている。)これは「20歳以上」である。なぜなら、2015年6月19日公布の公職選挙法改正で、一年後から施行と決められているのである。6月から7月にかけて、どこかの地方で市区町村長選挙が行われたとしても、それも20歳以上で行われる。「施行日後初めて行われる国政選挙(衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙)の公示日以後にその期日を公示され又は告示される選挙」から実施と書いてあって、国政の通常選挙が最初に18歳が投票する選挙なのである。(参院選告示後に行われる地方選挙は例外。)

 該当者は、約240万人と言われている。正確な数を知ろうと思うと、かなり難しい。人口統計は今後の経済、教育、社会保障などの重要な基礎データだから、探せばさまざまなデータが出てくる。だけど、それらは大体「誕生年」か「誕生年度」で数えた数値である。でも、選挙は年度途中だから、本当は「1996年8月から1998年7月に生まれた日本国民」をカウントしなければならない。厚生労働省の統計を丹念に見て行けば判るかもしれないが、そこまで細かく調べる気は起きない。恐らく、各マスコミ等も、単純に「18歳人口」と「19歳人口」を足しているのではないか。

 96年生まれは約120万、97年生まれは約119万、98年生まれは約120万である。これは生まれた数だが、死亡者は少ないだろうし、月により誕生人口がものすごく違うとも思えないから、やっぱり概ね240万ということで大きな間違いはないんだろう。(ちなみに、戦後直後のベビーブーム時代は260万人以上生まれていて、1952年まで200万を超えている。その後1971年から74年までの4年間が200万を超えて、第二次ベビーブームとなった。その後、さらに減っていって、2005年からは105万人を割っている。)

 ところで、世界各国の選挙権年齢を調べてみると、圧倒的に「18歳が世界標準」になっている。サミット参加国国連安保理常任理事国はすべて18歳。(中国にも選挙はあり、18歳から選挙権とされている。しかし、それは地方レベルの選挙などで、国政における普通選挙はない。)インド、オーストラリア、スイス、スウェーデン、スペイン、イスラエル、トルコ、メキシコなどすべて18歳である。19歳が韓国20歳が台湾、チュニジア、モロッコ、カメルーンなど。21歳からのシンガポール、パキスタン、マレーシアなど、25歳からのアラブ首長国連邦などもある。

 一方、もっと若い国もあって、16歳からがオーストリア、キューバ、キルギス、ニカラグア、ブラジル。17歳からが、インドネシア、北朝鮮、スーダン、東ティモールとなっている。恐らく、日本人のほとんどは「日本が世界でも選挙権年齢が高い国」になっていたことを知らなかただろう。だから、「何で引き下げるのか、判らない」などと今でも言う人がある。世界では、20歳以上にしている主要国はどこにもない。そして、そのことを日本の若者自身がほとんど意識していなかった。だから、今回の引き下げも「勝ち取った」ものではなく、「世界の流れに合わせるべきだ」的な気分で決まってしまった。

 最後に「年齢別投票率」について。よく、若い人は選挙に行かず、高齢層は投票率が高いと言われる。実感として正しそうだし、ほぼ常識になっているだろう。でも、それを具体的に裏付けるデータはあるのだろうか。これは検索すればすぐ見つかる。だけど、全国すべてを調べたものではなく、そういう大変な調査はさすがにやられていないようである。データは、標準的な投票率を示している地区を抽出して総務省が調べたものだという。それによると、先の指摘は全く正しいことが判る。

 2014年12月の衆議院選挙を例にとると、20代は32.58%。順を追って見ていくと、30代=42.09%、40代=49.98%、50代=68.02%、60代=68.28%、70代以上=59.46%となる。60代が一番高く、20代の倍以上ある。人口そのものが倍ぐらい違うのだから、実際の投票者の違いは4倍ぐらいになるだろう。70代以上は下がっていくが、まあ、それは高齢になればなるほど健康問題が大きくなるということだろう。いつの選挙を見ても、大体同じような傾向だから、とりあえず「若い人は選挙に行く人が少ない」というのは間違いなさそうである。

 と言っても、ここまで「倍」の差がついているのは、特にこの四半世紀、「平成」と言われる時代の特徴である。昭和最後の衆議院選挙となった1986年の中曽根内閣の衆参同日選を見てみると、20代はやはり一番低いのだが、それでも56.86%と半数以上は行っていた。ただ、60代はさらに行っていて、85.66%になっている。その後、80%台を続けて、だんだん70%台になり、ついに68.28%と7割を切ったのが、前回の選挙。60代の投票率も下がっているのである。近年一番高かったのは、2009年の民主党「政権交代」選挙で、ほぼ7割に近い投票率だった。その時は、30代も63.87%が行っている。だが、20代は49.45%とわずかではあるが5割に達していない。このように、全体的に投票率が下がっているのだが、特に20代が低いというのが、データから見えてくる。その理由はまた別に考えたい。
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