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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

衆議院を比例代表制に-選挙制度論⑥

2016年01月27日 23時37分43秒 |  〃  (選挙)
 選挙制度論がちょっと長くなっているので、頑張って今回で最後に。どの国も、その国の歴史のありように基づき、それぞれにあった選挙制度を持つ。(普通選挙制度がいまだにない国も世界にはいくつかあるが、やがてどの国でも普通選挙が導入されるだろうと思う。)日本では最初の選挙は1890年に行われた。125年の歴史があるのである。そして一貫して、「候補者名を自書する」というやり方で行われてきた。もちろん、最初の頃は「男性のみ」「財産制限あり」の制限選挙だったけど、有権者が選挙会場に行って名前を書いてくるというやり方は、ぞの後もずっと継続されている。

 まあ、その時代の政府は「超然主義」と言って、国民が結成した「政党」を認めない立場を取っていた。だから、当然のこととして、政府支持の政党を作ってその党への支持を訴えることもなかった。よって、政党ごとに争い合う「比例代表制」になるわけがない。また、財産家が投票する、つまり字を書けるのは当たり前ということで、自分で候補名を書いた。その後、財産制限がなくなり、女性参政権も認められたわけだが、有権者が字が書けるのは当然視された。実際に、世界有数の識字率であって、選挙に行く人は候補の名前ぐらい書けるだろう。なかなか書けないような難しい字の候補は、立候補時にひらがなで届けたりしている。それなら、まあ書けるわけだ。

 このやり方はホントはけっこう大変である。支持する党、というか首相(または支持しない党、首相)は判っていても、自分の選挙区でその党(または反対党)から出てる人の名前を覚えて行かないといけない。でも、それが定着しているのは確かだろう。今さら、党の名前しか書けない、党の決めた順番で当落が決まってしまうというのでは納得がいかないのではないか。

 小選挙区か比例代表かというのは、一長一短あって難しい問題である。だけど、ここ4回衆議院で3分の2を超える巨大与党を生んでしまった今の制度は問題が多いと思う。(もちろん、実際に3分の2を超える支持率の党が当選するというのなら問題はないが。)優勢な党が小選挙区の大半を制し、同時に比例区でも多くの票を集める。その結果、小選挙区で勝ちぬけた当選者が多くて、比例名簿の下位の方の「本人も当選する気がなかったような候補」まで当選してしまう。そういう選挙結果が繰り返されていて、どうも納得できない。今の小選挙区比例代表並立制は問題が多い

 完全な小選挙区制だと、僕が先に書いたような決選投票や順位付け投票を取り入れたとしても、小党が当選できないという問題と、「一票の格差」が是正しにくいという問題がある。特に後者は決定的で、今のままでは毎回の選挙で「違憲判決」が出るだろう。ということで、「小選挙区比例代表併用制」(当選者数は比例で決め、どの候補が当選するかは小選挙区で決める。比例票が少なくても小選挙区で当選したら有効で、無所属も小選挙区で立候補できる。だから、議員定数は選挙結果で変わる)か、あるいは「非拘束名簿式比例代表制」(今の参議院と同じ制度)が望ましい。

 僕が思うに、衆議院議員は「人口20万人に1人」と決めて、総定数を都道府県に割り振って、「候補者名または党名」で当選者数を決めるのが一番納得できるのではないか。当選者は個人票の順で決めるという、参議院の比例代表区と同じやり方である。人口や面積が大きい東京都や北海道などは、高校野球と同じく2つに分けた方がいいかもしれない。「20万人に1人」というのは、鳥取県に3議席を想定した数である。毎回、人口で都道府県の議席数を変えるから、一票の格差が生じない。

 一方、そうすると衆議院が600人ぐらいになる。多すぎるとも思うが、人口減で減っていくから、やがて400台になるはずだ。一方、参議院議員が思い切って減らす。各地方から選ばれる「選挙区」は、1人区から6人区までという状態で、訳が分からない。今夏の選挙から宮城、新潟、長野各県が1議席となる。また、島根・鳥取、高知・徳島が合区される。島根・鳥取の合計人口は約126万人。高知・徳島の合計人口は葯148万人。この4県は人口ランキングの下位4県だが、次の福井県は78.5万、佐賀県は83万弱。山梨、和歌山、香川が100万人以下の人口である。一方、宮城県は葯232万。次の京都府から260万人で2議席である。この差は理由が見つからない。

 一部には、憲法を変えて、参議院は各都道府県から一人は選ぶようにすべきだという意見がある。しかし、これはどう考えても無理である。連邦制度ではないのだから、「法の下の平等」を理由にした「一票の平等」を否定する改憲はできないし、してはならない。(連邦制度にして、各県に一国並みの権限を与えて法律の制定権を認め、日本連邦からの離脱権も認めるところまで考えているのなら、また別だが。)だから、思い切って参議院の「選挙区」は廃止して、比例区だけにすればいいではないかと思う。そうすると、今なら96議席、前に戻して100議席。少ないと思えば、120ぐらいにしてもいいか。問題は、それでは少なすぎて国政上の意義が薄れて、投票率も下がるだろうということである。だからこそ、選挙制度論の前に書いたように、参議院選挙ごとに「国民投票」をすることにすればいい。

 もう一つ問題があり、それは比例代表選では、無所属が出られないということである。政党は憲法に規定がない私的結社である。政党に所属しない限り国政選挙に出られないということになると、憲法違反ではないかという訴えが出てくると思う。だけど、実質は政党に属さないと国会内の政治活動もままならない。供託金を大幅に下げて政党を作りやすくすることも必要だろう。しかし、それより、無所属は「一人一党」扱いにする特例を設ければいいだけだと思う。まあ、絶対実現しそうにないアイディアだから、これ以上考えるのは止めにするが、政治の中心は衆議院にして、参議院は衆議院のチェックに徹する。そのために、例えば国民投票の発議は参議院のみに認めるといった考えもありうるだろう。まあ、国民投票が実現する方が先だが。でも、そういう憲法改正は大いに議論するべきだと思う。
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