「一票の格差」を問題にする場合、何を基準にして不平等と言うのか?普通は「小選挙区の有権者数」が違うという問題だろう。最大は千葉県第4区で、野田前首相の選挙区。49万5212人。一方、最少は高知県第3区。20万3712人。片方は50万近くで1人。もう一方は20万で1人だから、これはどう見ても不公平だろう。ところで、他にも子どもなどを入れた全人口で比べるという考えもあるし、当日の投票率で比べるべきだという考え方もある。実際に選挙に行ってる人の数で比べるのが一番公平だというのである。
都市部では政治に無関心な人も多いが、地方では投票率も高い。それなのに、都市部の議員定数を増やせば、実際に選挙に行った人の考えが反映されないのではないか、というのである。だから(小選挙区だったら仕方ないんだけど)、ブロック別(あるいは県別)の比例代表制度の場合は、当日の投票者数で当選者の定数を決めればいいという考えになる。つまり、今の日本では、衆議院の比例代表区は総数180人で、有権者数に基づき事前に各ブロックの定数が決まっている。それを当日の投票者により、選挙をした後で各ブロックへの配分数を決めるというのである。実際にドイツではそういう制度があるらしい。僕が読んだ中では、小林良彰「政権交代」(中公新書)が、独自の方法でそのやり方を提唱している。
これはちょっと聞くともっともらしいが、データを調べてみると必ずしも正しくない。選挙区はすべてそれぞれの事情があるが、千葉県第4区は投票率が59%ほどだった。全国の投票率と大体同じである。野田首相(当時)に、自民党候補と「日本未来の党」(当時)から三宅雪子議員(当時)と共産党がたった。何しろ首相の選挙区であり、注目も高かった。結果は野田氏が16万3千票余りで圧勝している。一方、高知県第3区は、小選挙区に移行以来全6回すべてを自民党の山本有二元金融相が勝ち続けている。あまりに強いので、昨年は民主党も立てなかった。2009年はさすがに民主党がかなり善戦しているが。昨年は共産党以外の各党は立候補せず、これでは(結果が見えているので)投票率も上がらない。結局55%で、千葉4区より低い。だけど、有権者に選択肢が少ないという事情を考えるべきだろう。実際に比例代表区の方では投票率が59.4%で、全国並みである。小選挙区では8千票以上の無効票があったのである。
2番目の選挙区を念のために見てみる。有権者数が2番目に多い選挙区は、神奈川県第10区で城島前財務相が落選したところ。自民の他、みんな、維新、共産が立ち、自民党の田中和穂が勝った。投票率は58.5%。少ない方の2番目は長崎県第3区で、自民谷川弥一が返り咲き、民主を離党した山田正彦元農水相が落選した。投票率は65.5%で、これはかなり高かったと言える。自民、未来、共産しかいないので、やはり地方の投票率が高いということになるだろう。長崎市だけの第1区は56%程度なのを見ても。
しかし、こうして見てくると、小選挙区の「一票の格差」も確かに問題ではあるが、それ以上に「選択肢の少なさ」という問題が地方ではあるということだ。新しい政党ができるとき、民主党もそうだったわけだが、まず都市部で票を伸ばしていった。地方では自民党議員の強固な地盤があり、立候補すらできない場合も多かった。(ほぼすべてで立てる)共産党と(自民党と連立している)公明党は別として、他の党はまず人口の多い都市部で立候補することが多い。もともと「維新」は大阪、「みんな」は神奈川など都市部で強い。この問題を解決するためには比例代表制度一本に変えるというのも有力な案だろう。実際、「一票の格差」以上に皆が関心があるのは、自分の選挙区では自民、民主、共産以外にどの党が立つのかということではないか。比例代表区では大体すべての党がそろっているから、自分が一番支持したい政党に投票できる。
では、その場合「投票後に定数を配分する」というやり方はどうだろう。僕はその考え方には、どうしても反対しなければいけないとも思わないが、どちらかというと反対である。選挙というのは、(今までに書いてきているように)「全国民の代表」を選ぶものである。ところで、選挙に行かない、行けない人も国民であり、当選して議員になった人はそういう人のことも考えていく必要がある。投票した人が多いと定数も増えるという制度では、「議員は投票した人の代表」になり、今以上に「支持基盤の方だけ見る」意識を強めてしまうのではないか。そんなこと言っても、選挙に行かない人が悪いというかもしれない。でも「選挙に行けない」という人がいる。大きく分けて、「未成年」と「病気や障害を持つ人」である。そこに「裁判で有罪が決定して選挙権を停止されている人」も加えてもいいだろう。特に、「未来の有権者」である子ども世代の声をもっと政治に反映させるためにも、本来は「子供も含めた全人口で、一票の格差を比べる」ということがいいんではないかと思う。
ちょっと面倒な議論を書いた。選挙制度に関心がある人ではないと関心がないかと思う。そういう考えもあるということの紹介も含めて、いろいろ書いてきた。あと一回、いわゆる「中選挙区」の問題点をかいておきたい。今でも「中選挙区幻想」が強いので、是非書いておかなくてはいけない。
都市部では政治に無関心な人も多いが、地方では投票率も高い。それなのに、都市部の議員定数を増やせば、実際に選挙に行った人の考えが反映されないのではないか、というのである。だから(小選挙区だったら仕方ないんだけど)、ブロック別(あるいは県別)の比例代表制度の場合は、当日の投票者数で当選者の定数を決めればいいという考えになる。つまり、今の日本では、衆議院の比例代表区は総数180人で、有権者数に基づき事前に各ブロックの定数が決まっている。それを当日の投票者により、選挙をした後で各ブロックへの配分数を決めるというのである。実際にドイツではそういう制度があるらしい。僕が読んだ中では、小林良彰「政権交代」(中公新書)が、独自の方法でそのやり方を提唱している。
これはちょっと聞くともっともらしいが、データを調べてみると必ずしも正しくない。選挙区はすべてそれぞれの事情があるが、千葉県第4区は投票率が59%ほどだった。全国の投票率と大体同じである。野田首相(当時)に、自民党候補と「日本未来の党」(当時)から三宅雪子議員(当時)と共産党がたった。何しろ首相の選挙区であり、注目も高かった。結果は野田氏が16万3千票余りで圧勝している。一方、高知県第3区は、小選挙区に移行以来全6回すべてを自民党の山本有二元金融相が勝ち続けている。あまりに強いので、昨年は民主党も立てなかった。2009年はさすがに民主党がかなり善戦しているが。昨年は共産党以外の各党は立候補せず、これでは(結果が見えているので)投票率も上がらない。結局55%で、千葉4区より低い。だけど、有権者に選択肢が少ないという事情を考えるべきだろう。実際に比例代表区の方では投票率が59.4%で、全国並みである。小選挙区では8千票以上の無効票があったのである。
2番目の選挙区を念のために見てみる。有権者数が2番目に多い選挙区は、神奈川県第10区で城島前財務相が落選したところ。自民の他、みんな、維新、共産が立ち、自民党の田中和穂が勝った。投票率は58.5%。少ない方の2番目は長崎県第3区で、自民谷川弥一が返り咲き、民主を離党した山田正彦元農水相が落選した。投票率は65.5%で、これはかなり高かったと言える。自民、未来、共産しかいないので、やはり地方の投票率が高いということになるだろう。長崎市だけの第1区は56%程度なのを見ても。
しかし、こうして見てくると、小選挙区の「一票の格差」も確かに問題ではあるが、それ以上に「選択肢の少なさ」という問題が地方ではあるということだ。新しい政党ができるとき、民主党もそうだったわけだが、まず都市部で票を伸ばしていった。地方では自民党議員の強固な地盤があり、立候補すらできない場合も多かった。(ほぼすべてで立てる)共産党と(自民党と連立している)公明党は別として、他の党はまず人口の多い都市部で立候補することが多い。もともと「維新」は大阪、「みんな」は神奈川など都市部で強い。この問題を解決するためには比例代表制度一本に変えるというのも有力な案だろう。実際、「一票の格差」以上に皆が関心があるのは、自分の選挙区では自民、民主、共産以外にどの党が立つのかということではないか。比例代表区では大体すべての党がそろっているから、自分が一番支持したい政党に投票できる。
では、その場合「投票後に定数を配分する」というやり方はどうだろう。僕はその考え方には、どうしても反対しなければいけないとも思わないが、どちらかというと反対である。選挙というのは、(今までに書いてきているように)「全国民の代表」を選ぶものである。ところで、選挙に行かない、行けない人も国民であり、当選して議員になった人はそういう人のことも考えていく必要がある。投票した人が多いと定数も増えるという制度では、「議員は投票した人の代表」になり、今以上に「支持基盤の方だけ見る」意識を強めてしまうのではないか。そんなこと言っても、選挙に行かない人が悪いというかもしれない。でも「選挙に行けない」という人がいる。大きく分けて、「未成年」と「病気や障害を持つ人」である。そこに「裁判で有罪が決定して選挙権を停止されている人」も加えてもいいだろう。特に、「未来の有権者」である子ども世代の声をもっと政治に反映させるためにも、本来は「子供も含めた全人口で、一票の格差を比べる」ということがいいんではないかと思う。
ちょっと面倒な議論を書いた。選挙制度に関心がある人ではないと関心がないかと思う。そういう考えもあるということの紹介も含めて、いろいろ書いてきた。あと一回、いわゆる「中選挙区」の問題点をかいておきたい。今でも「中選挙区幻想」が強いので、是非書いておかなくてはいけない。