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館山いじめ報道(下) 実戦教師塾通信六百四号

2018-06-15 11:17:22 | 子ども/学校
 館山いじめ報道(下)
     ~大人たちが問われていること~


 ☆初めに☆
「遺書はあったのですか」
「いじめと言っても、そこには被害者ばかりがいるわけではない」
「学校は加害側の生徒まで守らないといけない」
「第三者委員会の報告後は、賠償請求になるんでしょうね」
これは、事件当時の学校や館山市教委の発言ではありません。
講演会の案内で学校めぐりをする中、私が出会った質問や感想です。なるほどそうなのだな、であった。おおごとにならないと、こんな究極の発言は出て来ません。しかし、おおごとになった瞬間、証拠はあるのか、こんな事態になってしまったんだから、残されたものが第一だ等々。そんな反応をする人たちに、私は驚きを禁じ得ませんでした。
 大切なことは、近くにいる大人が、
◇事実を確かめること
◇その事実と向き合うこと
からしか始まらないことです。淡々と説明する私に、うなずく相手(先生)なのです。でも、のっぴきならない現実に対したとき、果たしてこの先生が「誠意ある対応」をしてくれるだろうか、と思う私でした。

 1 隠蔽(いんぺい)しているようにしか見えなかった
 「館山いじめ問題を考える会」の開示請求に基づいて出された、再アンケートへの回答。その中には、子どもたち(と言っても、この時は高3)が、記名式という中ではきっと決意が必要だっただろうと充分に推測される、そんな回答の数々がようやく出てきた。

私には、
◇S君が「臭い、うざい、死ね」と言われているのを聞いた
◇いじめにより破かれたカバンを見た
という新たな証言もだが、当時の3年生(勝君より一級上)の回答、
◇当時の学校のずさんな対応に今でもあきれています
◇学校側はいじめを隠蔽しているようにしか見えなかった(写真の記事ではない)
が、強く胸に響いた。この子たち(もう大人だが)の気持ちを無駄にしてはいけない、そう思った。大人たちは責任を問われいる。
 しかし、この新たな事実を前にしても、
「似たような指摘の回答はあり、結論は変わらない」(市教委担当者)
「2通とも全くの記載漏(も)れ。隠し事はない」(教育長)
という見解を見ると、今まで遺族や支援する方々は、一体どれだけ辛い思いをしてきたのだろうと憤(いきどお)るばかりだ。

 2 そして第三者委員会の発足(ほっそく)
 遺族の第三者委員会設置要求を、市教委(教育長)は「第三者の立場で取り組んで来たので」と拒絶して来た。今までの経過を認識していたら、とても言えない言葉である。市長も「市教委と見解は変わらない」として来た。これが突然変わる。

毎日新聞の記者で、ずっとこの事件を追いかけてきた中島章隆(ふみたか)氏による2015年9月26日の記事、
「(昨年9月の)市長選を前に金丸謙一市長が……第三者委員会を設置することを表明した」
は、この謎解きをするかのようである。
 しかしここからまた、第三者委員会発足までには、ひと山もふた山もあった。
 ひとつは、第三者委員会の関係規則をめぐってである。市側の事務方への根気強い取り組みの中、全国的に見ても大きな成果があった。
◇遺族同意の上で第三者委員を決める
◇審議のたびに、遺族に報告・公表する
である。どれも大切なことだ。
◇審議は「公平」ではなく「公正」に行う
この三点目だが、今までの経過から明らかなように、核心は、問題を「中立/公平」に扱うことではないという意味だ。これも大きい。
 もうひとつ。遺族側は6名の第三者委員のうち、3名を推薦。しかし、当初は受け入れる姿勢を見せていた市側は、途中から「団体推薦でないといけない」と言い出す。激しいやりとりが続いた。しかし、時間だけが過ぎていく。ついに遺族側は委員会発足に向け、市側の方針を受け入れる。

2016年3月1日、田副さんは「一区切りついた」と、記者会見で初めて名前も顔も公表した。
 ここでも何度か報告してきたが、日本教育大学院大学・大野精一教授を委員長とする第三者委員会の対応は、私たちが見ていて誠実なものだった。
 しかしその後、第三者委員会の事務責任者が、事件当時に学校の学年PTA委員長だったこと、そして勝君が所属し、まさに「臭い」事件の現場だった野球部にこの事務担当の息子がいたという「人事」が、昨年11月に判明。今年の3月に区切りの24回目を迎えるはずだった第三者委員会は、延長されているのである。



 ☆後記☆
6月23日ですが、遺族の田副義春さんのほかに、「館山いじめ問題を考える会」事務局の小出一彦さん、館山市議会議員の石井敏宏さん、そして毎日新聞記者の中島章隆さんも登壇します。きっと、あっと言う間に二時間が過ぎてしまうと思います。そして、意義深い集会になると思います。ぜひ皆さんお出でください。
 ☆ ☆
新幹線で恐ろしい事件がありました。後でこのことについて、きちんと書かないといけないと思っています。今日は少し気に止まったことだけ書きます。
会社員の方が殺されたことについて、この会社の社長が、
「彼を誇(ほこ)りに思う」
と言ったことです。覚悟を感じるコメントです。それでも社長は言わないといけないと思ったのでしょう。死んではいけない、でもオマエは偉(えら)いと言いたかったのでしょう。
 ☆ ☆
学校めぐりで、私の最後の「母校」に行ったときのショットです。懐かしくてついついシャッターを押してしまいました。玄関を出たところです。この桜がきれいなんですよねえ。

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2 コメント

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伝えたいですね。 (小出一彦)
2018-06-19 12:56:41
ありがとうございます。
「館山いじめ問題を考える会」でご遺族支援をしてきましたが、少しでも皆様にお伝えできればと思っておりますので、
よろしくお願い致します。
こちらこそ (琴寄)
2018-06-22 09:04:22
よろしくお願いします。明日は車で千葉を縦断することになりますね。気をつけてお出でください。

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