実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

ガザ・上 実戦教師塾通信八百八十八号

2023-11-24 11:48:40 | ニュースの読み方

ガザ・上

 ~問われる「立場」~

 

 ☆初めに☆

連日続く目を背けたくなる映像に、皆さんはどのように対処しているのでしょう。どんなにちっぽけに思えても、出来ることを続けるしかない、私はそう思っています。ガザを巡る記事を二回にわたって書きます。今回は、ニュースの伝えることが中心です。いつも通り、なぜニュースは伝えないのだろうと思えることを書きます。そして、まじめな研究者や活動家からのレポートが、この頃ようやく取り上げられて来るようになりました。イラク空爆の時のこと、第一次大戦時の「バルフォア宣言」などです。次週は、この問題を考えるにあたって必要な歴史認識を書きます。

 1 「ハマスの拠点」

 イスラエルの再三にわたる、国際法上・人道上許しがたい戦闘行為が続く理由は「ハマスの蛮行」が理由だ。イスラエルの先端技術レーダー網と、多数の無人機による24時間の警戒がなぜ突破されてしまったのか、ネタニヤフ首相は記者団の質問にしどろもどろだった。直近、首相は経済政策の失敗と幾多の賄賂疑惑で失脚寸前だった。つまり、ハマスの奇襲攻撃がまさに首相の反転攻勢の機会となったことは、未だ報道上に浮上している。イスラエル市民の「家族を殺したのはあいつらだ!」と怒る時の「あいつら」とは、ハマスではない。イスラエルの政府を指すのである。補足すれば、イスラエルが病院を攻撃するにあたっては、それが「ハマスの拠点」として熟知した上で敢行されないといけない。ずい分手こずった上に、その「成果」が思わしくないわけである。「カラシニコフが出てきた、病院にこんなものが必要なのか」と、病院内にあったというライフルを示してイスラエル兵が言ったという。戦闘能力は今さら比べるも愚かな重装備のイスラエルが、ライフルを発見して大騒ぎしている。現在のライフルなど、大戦時の竹やりのようなものだ。沖縄に進撃した米軍が「竹やりが出てきた、民間人に必要なものか?」なるたとえで考えればいい。中東・湾岸の人たちは、イスラエルの主張していることなど、はなから相手にしていない。ライフルはイスラエル軍が自身で持ち込んだものだ、ぐらいに思っているだろう。一体、我々がどれだけ騙されて来たのかという彼らの積念の思いは次回に譲るが、イスラエルの主張を慎重に見極めようとしている「西側」に、中東・湾岸の人たちが憎悪を募らせているのは間違いがない。それにしても、命の危険を顧みず病院に寄り添って取材を続ける記者たちの存在は、医療従事者の「患者を見捨てて病院を去るわけには行かない」思いと共に胸を打つ。

 2 「人間の盾」

 イスラエルは、病院が「ハマスの拠点」と言うだけでなく、ハマスが傷病者や新生児を「人間の盾」にしているとも批判する。この「人間の盾」は、イラクのフセイン政権が崩壊して、雨後の筍のごとく登場したISの作戦でよみがえった。しかし、事情は今回と全く違っている。あの時ISは、病院や学校に避難したのではない。逆だ。アメリカ主導の国際連合軍から空爆の危険がある建物に、住民を誘導したのである。では、ウクライナの場合はどうだったか。千人以上のマリウポリ市民が避難した製鉄所「アゾフスターリ」を、ロシアはウクライナ側の卑劣な「人間の盾」だと非難した。生命の保証をするというロシアの呼びかけに、この時市民は誰も応じなかった。それは市民が拘束されているからだ、というロシアの主張を今は置いておく。ガザ問題を考える場合、ロシアがウクライナ軍に対し投降を呼びかけた事実が重要だ。イスラエルは、病院にいる?ハマスに対して、一度でも投降を呼びかけたのか。報道から伝わって来るのは、例えば「イスラエル側がシファ病院に数分以内に突入すると通達してきた」(ガザの保健省報道官)のような一方的通告で、ハマスへの投降呼びかけがあったとすれば、ここにあるように、それは病院攻撃と同時だった。病院を攻撃するということは、どこでも攻撃の対象になるゾと言ってる。ジュネーブ条約なんぞ、なんぼのもんや、というのだ。これらのことに対し、報道からは「国連の無力」と繰り返される。しかし、国連は無力となったのではない。これも次回に譲るが、一連の悲劇は、国連が加担して作り上げた中東・湾岸の構造がもたらしたものだ。

 

 ☆後記☆

ここまで書けば、賢明な読者には次回の記事が想像出来ようというものですね。まことに欧米(西側)の、中東・湾岸(だけではない)に対する侮蔑を知るにつけ、愕然とします。とにもかくにも「戦争反対」は正しい、というわけには行かないと思うはずです。私たちの「立場」が問われています。次回は、日本が「西側」とは違う独自のスタンスで、今までこのエリアと関わって来たことも書きたいと思っています。中東・湾岸で、日本は愛されていたのです。

先週の子ども食堂「うさぎとカメ」です。「優美会」から協力いただいた、飾り寿司「トトロ」!です。まっくろくろすけも大人気で、子どもたちには嬉しい&困難な選択だったようです😊

こちらは、これから肉を仕込むところの「トン汁」。鍋から上がる湯気、いいでしょう? 食べるまで、うどんが少しふやけてしまう。難しかったけど「美味しかったです」の声の数々。嬉しい

手前は、お土産用で5キロ入り袋のお米です。柏市・社協(社会福祉協議会)が始めた食糧倉庫活用のお陰です。皆さん、お米を喜んでくれるんです🍙

 ☆☆

昨日から福島に来てま~す。今年最後です。暮れにレポートします


ヘイト 実戦教師塾通信八百八十七号

2023-11-17 11:25:19 | 報告

ヘイト

 ~福祉部の回答・中間報告~

 

 ☆初めに☆

千葉県・柏市議会議員選挙は7月に行われました。その選挙運動中に、障害者の議員は税金の無駄遣いだ、と聴衆から誹謗中傷があったというのです。議員の自宅前でもあったらしい。目の不自由な内田ひろき議員に対してです。9月の定例市議会で、このことは「差別ではないか」と、本人が市長はじめ関係部署に質問しました。すると福祉部長が、簡単に言えば「差別ではない」と応答したのです。柏市議会の動画(録画)を見て、私は耳と目を疑いました。議場の議員からヤジが飛ばなかったことも驚きでした。このことで、内田議員から「応援依頼」の連絡が入りました。応援はともかく、最低でも確認はしないといけない事態です。「中間報告」としましたが、もしかしたら今月下旬に始まる定例本会議の経緯によっては「続き」もあるかもしれない、という意味です。後編があるとしても、来年です。

 

 1 必要な「対面」

 答弁をした福祉部長と、面会になるまでにも色々あった。教育委員会相手のものは、私個人として日常的だが、市役所でのヒアリングは二度目だった。10月半ばのことだ。私からの取次(電話)のお願いに対し、最初はずい分待たせたあげくに!「不在」。次の時には「代わりに承ります」という職員が登場。そういうわけには行きませんと、お引き取り願った。こういう成り行きとなったからには、乗り込まないといけない。翌日に部長から連絡があった。あの本会議での答弁は言葉が足りなかったと釈明した後、今は忙しい、と続けた。庶民は暇だと思っているか、自分の言動を軽く見ているか、逃げようとしているか、のどれかだ。どれだろうが、許されない。急ぐ話ではない、しっかりと確認を取りたいだけだと言ったが、相手は忙しい理由を延々と続け、11月(下旬)に始まる本会議の準備もあると言う。まさか、会うのを来年にしようと言うのではあるまい。すると今度は、手紙かメールのやり取りではいけないか、と提案をして来た。対面での確認の大切さは、リアルタイムで修正等のポイントが明らかになることにある。あとで良く来る「誤解」のその場での訂正も、対面でこそ可能なのだ。何より、答弁は市議会議場で議員全体になされ、傍聴や録画で見ている市民もいる。密室と言える手紙・メールの類は、相手にならない。電話で話してすでに15分が過ぎ、それも忙しいという無駄な説明に費やしていることを分かってますかとくぎを刺し、私の都合いい日程を提示した。数時間後、相手の告げた都合のいい日程は、私のものとはだいぶズレていたが仕方ない。また、他の課から同席もありますがいいですかと言うので、二つ返事で承諾。私の方の立会人はいないので、録音の承認をいただいた。

 

 2 今後どうする?

 これに関する市長の答弁は、一般的な言い方ではあったが「許されるものではない」というものだった。対して福祉部長は、繰り返しになるが「障害者差別解消法に照らし合わせ、今回のことは(支援する)対象にならない」という返答だったのである。市長答弁との食い違いはもとより、ヘイトを承認すると受け取られても仕方ない応答に、一体どのようなわけがあったのですかと私は尋ねた。それさえ聞ければよかったのである。相手側は、部長と共に4人の役人が同席した。困った様子で「言葉足らずで」と、部長は同じことを言った。しかし「言葉が足りなかった」のではない。ヘイトが「許されるものではない」と、福祉部長はひと言も言ってない。部長は、内田議員に対して今までサポートをずっとしている、差別するつもりは毛頭ないと言った。議員は、実は我が「うさぎとカメ」のスタッフとして働いている。しかし、私の議員に対するシンパシーは強くない。いや、議員の(学校)現場への無定見に対し、私は「現場の足を引っ張るな」と何度も叱り飛ばして来た。内田議員を応援するために来たのではない。しかし、障害者でも外国人でも貧乏人でも何でもいい、ヘイトが「許される」ものであっていいはずがないのだ。内田議員が目の不自由な事情を分かってやったことと思えば、今回の野郎どもは卑怯で臆病としか言いようがないのである。あの答弁を障害者の皆さんが聞いたら、恐怖におののくのではないか、私は言葉を継いだ。

 さて、言ってしまったことを今さらどうすることも出来ない。大切なことはこの後のことだ。もちろん、私なんかへの釈明ではどうしようもない。この不始末をどうするつもりですか、と私は続けた。福祉部長は、これから議事録が出るので詳細に検証し、私の管轄で出来る説明と釈明をして行くつもりだといった。内田議員も暮れの議会で再びこのことを取り上げると思うので、誠実に応えていきたいとも言った。どうなるか。

 

 

 ☆後記☆

この時の議会でのやり取りを見たい方は、「柏市議会中継」を検索し、次に「 令和5年第3回定例会」を選び、 「9月21日質疑並びに一般質問」の内田ひろき議員を選ぶと、動画映像で見られます(50分を経過した辺りです)。

往年の名車、ホンダCR110いただいちゃいましたぁ🏍 これで同じシリーズ3台目ですが……嬉しいなぁ。後ろは、ニューヨークタイムズ「今年行くべき52個所」の盛岡です。いつか再び、バイクで行きたいです。

子ども食堂「うさぎとカメ」、明日となりました。いつも通り、明日発行のチラシ(裏)をご紹介します。トン汁うどんで温まってくださいね。飾り寿司は「トトロ」ですよ~🐻(クマですけど……) ご来店お待ちしてま~す

オオタニさん、やっぱりやってくれました🔥 МVP満票🚀❕ 久しぶりに、オオタニさんを見れますね、乾杯🍻


今市事件・下 実戦教師塾通信八百八十六号

2023-11-10 11:29:27 | 戦後/昭和

今市事件・下

 ~再審の壁~

 

 ☆初めに☆

前々回の能天気な宇都宮レポートは、今市事件「勝又拓哉さんを守る会第7回総会」の翌日のものです。今回は総会のレポートになります。会場の宇都宮総合コミュニティセンターは、市の郊外にあります。

総会の基調講演は、京都法律事務所の鴨志田祐美弁護士でした。再審開始が決定されたものの、先の6月に棄却された「大崎事件」を覚えてますか。満期まで刑務所で過ごし、96歳となった今も無罪を訴えている原口アヤ子さんの事件です。鴨志田弁護士は大学時代のインターンからこの事件に関わり、それで40年間担当。『大崎事件と私:アヤ子と祐美の40年』という「40年」はそういう意味です。写真が鴨志田弁護士(不鮮明ですみません)。

 

 1 証拠開示

 ここしばらくの間、袴田事件の報道が連日のようにあったわけで、裁判の仕組みを考えた読者も多いのではないだろうか。27年間にわたって開示されなかった証拠が、裁判所の開示勧告で出て来た。そのひとつが「5点の衣類」だ。無茶苦茶な発見のされ方と、恣意的な判断はもうここでは書かない。まず、証拠開示が大切なものであるにもかかわらず、それが極めて困難である実情は知らないといけない。2016年、ここの改善が試みられる。「証拠の一覧表(タイトル)交付制度」が国会で通る。しかし、弁護士会はこれに対し積極的な評価をしない。まず、証拠のタイトルが分かっても、どのような証拠なのかを判別することは困難であること。袴田事件で言えば、タイトルに「5点の衣類」と示されたところで何も分からない。また、その証拠について実際に開示を受けられるかどうかは別の問題となっていることだ。さらに良くないのは、この法案とセットになった司法取引(「自白内容で起訴を免れる」等)の導入、通信傍受(盗聴)の拡大等によって、捜査側に大きな武器を与えたことだ。鴨志田弁護士は語る。

「証拠開示は、裁判所による検察官への証拠開示勧告・命令がなければ実現せず、証拠開示勧告・命令を行うか否かは事件を審理する裁判所の裁量に委ねられています。つまり証拠開示によって冤罪被害者が救済されるか否かが、当たった裁判官のやる気次第(「再審格差」と呼ばれる)という事態を招いています」

しかし、今市事件の場合、開示されていない証拠とは何なのだろう。勝又拓哉さんのDNAを始め、凶器のバタフライナイフもすべて、証拠が「ない」か「見つかっていない」のである。あるとしたら、取り調べの録音・映像だけという情けない状況だ。しかし、別件逮捕から自白まで4カ月間の記録はとってない。映画「それでも僕はやってない」・周防正行監督のコメント「一部可視化は冤罪を生む」が、守る会に寄せられている。

100名の方々が詰めかけて、講演に耳を傾けました。

 

 2 「敵は法務省にあり!」

 この「再審の壁」は、世界に共通のものではない。日本の刑訴法(刑事訴訟法)は、明治から大正にかけ明文化される。その原型となったドイツでは1964年の法改正により、再審開始決定に対する検察官上訴は明文で禁止された。つまり、袴田事件や大崎事件のようなことは、ドイツでは起きない。また、日本の刑訴法をひな形にした台湾では、

①「新証拠」は「判決確定前に存在し……たが調査はしていなかったもの、若しくは判決が確定した後に存在し……た事実や証拠」とされた(2015年成立)。

②新証拠になることが……期待できるときは、原裁判所にDNA鑑定を請求出来る(2016年成立)。

等のような改良が見られる。もっとあるのだが、分かりやすい部分のみの抽出である。流行り文句で言えば、ガラパゴス化している日本と言ってもいい。日本はいま何をしているのか。以下は、鴨志田弁護士の講演からの聴き取り。

 国会においては、かなりの数の議員たちが超党派で再審法改正について議論し、改正案上程を目指している。地方議会から国会に対し、再審法改正を求める意見書を採択する動きが拡大(今年の10月現在、北海道・岩手県・山梨県の議会と153の市町村議会が意見書を採択)。市民団体レベルでも、「再審法改正を目指す市民の会」「冤罪犠牲者の会」が、去年結成されている。これだけの動きがあるというのに国がなかなか変わろうとしない理由は、国会の方にあるのではなく旧態依然とした「法務省」だと、鴨志田弁護士は断じた。そして、冤罪は自分に無関係だと思っている人が多いがそれは違う、と言って鴨志田弁護士が強調したのは「痴漢」という「言いがかり」だった。素朴な勘違いもあるが、示談金目当ての方(もちろん「女の人」)もいるそうだ。他人事ではないゾと強調したのだった。

勝又拓哉さんのお母さんや弁護士さんも写ってませんが、守る会の中心スタッフ。最前列のトレーナーが、弟の高瀬有史さんです。守る会の各支部が、全国で活動中です。

 

 ☆後記☆

ガザの「トンネル網」をイスラエルが攻略してます。トンネル網はハマスの隠れ家だとイスラエルは言いますが、その中には当然、住民がすがる思いの防空壕もあることでしょう。私は沖縄戦での「ガマ」を思い出しました。イスラエルには鉄壁の守りと言われる、レーダー&ミサイル迎撃がセットとなった「アイアンドーム」と呼ばれるシステムがあります。この圧倒的な力の差を比較すると、ガザ、いや、パレスチナの人々を思わないわけには行きません。「私は壁の側ではなく卵の側に立ちたい」と言った、村上春樹はどう思っているのでしょうか。ガザのレポートは再来週になります。次回は成り行きとはいえ、市役所に乗り込むことになってしまったことを、お知らせしたいと思っています。

 ☆☆

やってくれましたね、オオタニさん💣 いいニュースは、やっぱりここからだぁ 全国のすべての小学校に、グラブを合計6万個 少し調べたら、現在の小学校の総数は20390校だそうで。全校で千人を越える学校もあれば、中には10人という学校もあるわけです。ひとつの学校にグラブは3個。玄関に飾る学校もあれば、全校生徒がわが手で愛でる学校もある。なんか、ロマンを感じますねぇ


今市事件・上 実戦教師塾通信八百八十五号

2023-11-03 11:16:21 | 戦後/昭和

今市事件・上

 ~「冤罪」という場所~

 

 ☆初めに☆

今夏の読書特集で『殺人犯はそこにいる』(清水潔)を取り上げました。そしてこの本を取り上げたのは、袴田さんのことが差し迫っているからではありませんと書きました。あとで話すつもりですとも書きました。私が今市事件に近づこうとしていたからです。2005年に起きたこの事件を覚えているでしょうか。そして逮捕から判決に至るまでの、多くの不可解を覚えている方もいるのではないでしょうか。今年の暑さが始まる前、この事件と直接関係する方から、力を貸して欲しい、という連絡を受けました。栃木からわざわざ、私のところまで出向いて来られました。私のようなもので役に立つかどうか、心もとありませんでした。でも、感謝の気持ちで話をうかがい、私からも尋ねたいことを確認出来ました。今市事件の現況と、この再審に向けた国民救援会の動向を、二回にわたってお知らせします。

 

 1 一審判決まで

 この号は、事件の経過と内容の確認にしたい。これは2005年の12月1日に起きた事件だ。栃木県の今市で小学校1年の女の子(吉田有希ちゃん)が行方不明になった。翌日、有希ちゃんは茨城県の山林の中で、無残な遺体となって発見される。事件から8年、警察は商標法違反(偽りブランド所持)の罪で、栃木県・鹿沼在住の勝又拓哉さん(当時32歳)を逮捕する。それが1月29日なのだが、のちに女児殺人を自供するのが、2月18日。実は偽りブランド容疑で拘留可能なのは、最大23日間である。つまり、拘留期限ぎりぎりでの自供ということになる。検察が有罪の決めてとした母親への「あんな事件を起こして……ごめんなさい」という手紙は、この自供数日後に書かれる。初めは7枚書いたのを「長すぎる」と、何度も修正を命じられて2枚にされた手紙だ。もとの手紙はシュレッダーにかけられる。さらにこのあと、自供内容と事実との不可解な不一致が、数多く出て来る。第一の不可解は、容疑者がキスをする・身体を触る等のわいせつ行為を行う、その後バタフライナイフで身体を10個所以上にわたって刺す、という自供を裏付けるDNAがどこからも出なかったことだ。もちろん、遺体のあちこちから複数のDNAが検出された。あるものは捜査員のものと分かった。そして、誰のものか分からない(弁護団は「真犯人」のものかもしれないと主張)ものも検出された。しかし、容疑者の勝又さんのものだけは出なかった。疑問符だらけの一審(宇都宮地裁)は物的証拠がない不十分性を言いつつ(知りつつ?)、無期懲役を言い渡す。「こんなのでいいのか」と述べる裁判員もいたが、「自供の映像を見たら犯人だと思った」なる、天を仰ぐような裁判員の発言も覚えている。

 

 2 高裁の不可解

 不可解は続く。控訴審で高裁が、一審の破棄を命じる。勝又さんに対する正当な判断が降りた、のではなかった。取り調べが正当な範囲を越えて、不当に拘束して行われたこと。これはいい。問題は、一審で認めた殺害場所と時間には合理的な疑いが残る、とした方だ。高裁はここで何をしたか。場所と時間を拡大するよう、検察に促したのだ。訴因変更である。「これなら可能だ」ということか。なぜか高裁は繰り返し、容疑者が犯人であることは疑いがない、と主張している。また、一審で争われたことが二審では消える(正確には「重要な争点でなくなる」)ことは注目しないといけない。裁判では一般的にあることらしい。私は大川小学校の事件の際、遺族と対面する中で知ったのだが、控訴審では裁判の争点が変わり、それ以前の争点は公判から遠ざかるようだ。では、今市事件はどうか。一審で争われた「わいせつ行為」が見当たらない。これでは訴因変更をはじめ、一審破棄が検察を有利に仕立てているように見えて当然だろう。高裁の判決文「被告人の凶行により突然に被害者を失った遺族らの心痛は察するに余りある」は、高裁の心情なのだ。読める人は読んで欲しい(控訴審_判決文.pdf)。100頁に渡る判決文は「あくまで確立性(判決文では「蓋然性」と表記)の問題ではあるが、だからと言って犯人でないとは言えない」論調で満たされている。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則は一体どこに行ったのか、と思う内容だ。公判で検察が有罪の根拠とした、

容疑者の飼い猫の毛が被害者から見つかった/容疑者は犯行に使われた?スタンガンを持っていた/容疑者の車が犯行現場近くのNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)で確認された/児童ポルノのビデオ所有

等々の容疑について書けなかったのだが、これら「有罪の根拠」が「容疑者に特定すべき事柄」なのか?という疑問は持つだろう。繰り返すが、物的証拠は何もない。判決文を読めば、この気持ちは強まるばかりだ。勝又さんは現在、最高裁判決に従って無期懲役に服しているのだ。こう見えて、猜疑心の強い私でも、最低これだけは言える。

「再審を認め、公正な審理をしなくていいのか。いや、しなさい」

 

 ☆後記☆

「お兄ちゃんのため」に頑張っている、実弟の高瀬有史さんには頭が下がります。柏に来ていただいた際には、勝又さんが逮捕された後の、自分や家族・親族周辺に訪れた大変な出来事まで話してくれました。私に出来ることは何なのでしょう。とりあえず、今までの私の微々たる経験や考えを話しましたが、とても参考になりましたと言ってもらえて、良かったのかなと思っています。次号では、守る会総会で聞いた「再審(やり直し裁判)の壁」は、具体的課題をお知らせします。えん罪今市事件 | 勝又拓哉さんの家族会 もあります。良かったら見てください。

今日は文化の日。三連休ですね。秋はこれ、柿のオレンジと空の青ですよ。近くの二松学舎付属高校で~す🍂

11月です。今月の子ども食堂「うさぎとカメ」は、トン汁にうどんをからめます。久しぶりに飾り寿司も登場です。楽しみです。そして、楽しみにして下さいね