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震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

治療 実戦教師塾通信八百八十一号

2023-10-06 11:38:04 | 子ども/学校

治療

 ~改めて「障害」ではなく~

 

 ☆初めに☆

ジャニーズ問題は来週に書きます。留飲を下げたい、みたいな読者からの声が届いています。ホントですね。

 ☆☆

フランスの中学校で授業中に生徒が逮捕され、手錠を掛けられたといいます。いじめに対する国がらみの回答です。この対処は「検察と警察の合意の上だ」と、閣僚が答えたそうです。その場にいた教師は、ショックのあまり授業を続けられなかったというのが救いです。いやぁ、毅然と対処できる「神の国」はやっぱりスゴイんですね。その点、「神は罰し仏は赦(ゆる)す」神仏ごちゃまぜの日本は、優柔不断です。それが大切です、というのが今回の記事です。

 

 1 頭が悪い

 この頃、授業で先生の声がよく聞こえないと思っていた生徒が、友人に「アタシ病気かな」と聞いたそうだ。

「それは気のせい。聞こえないんじゃない。Hちゃんの頭が悪いだけ」

友人のKが即答した。一瞬で不安は溶解したそうだ。Hは耳が聞こえないことが一大事だった。他のはどうでも良かった。大切なのは、Kが自分にとって「仲が良い友だち」だったこと。その上、Kは頭が良かった。これらがないと、安心には到達できない。この場合、授業を「聞かなくていい」としたのが、友情なのだ。Hに「先生の話をちゃんと聞かせる」時・場合ではないと、Kは思ったのだ。ここには「環界」と「了解」の興味深い関係がある。

 H自身は自分の「頭の悪さ」が困る=「障害」とは感じていなかった。ところが、この「通常の居場所」が揺らいだ。「先生の話が聞こえない」のだ。しかし、相談されたKは、相手に自分の話が聞こえていることに気づいた。普通に話せているのに、Hは「アタシの耳悪い?」と尋ねている。「大丈夫だよ」では、Hの心は「聞こえない」ままになると思った。単に「聞けてない」事実を、Kは分かりやすく、そして「肯定的に」伝えようと考えた。かねてよりHの頭の悪さは、Kとの間で了解済みなのである。「話が聞こえない」Hの悩みを取り除いてやればいい。「聞こえていてもムダだ」という意味のことを言えばいいのだ。「ちゃんと聞こえてるんだから聞きなさい」とは言わなかった。

 

 2 ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)

 まだ示唆に富んでいることがある。Kは見事にHを「治療」したのである。しかし、これは「非医療的行為」だ。逆に、本人がいたたまれなくなるような対処を「医療的行為」としているケースがたくさんある。ことは耳に限らない。「なんだかドキドキする」とか、「いつも悪口を言ってる奴がいる」などと相談がある。すると、ろくろく話を聞かない担任が、「脳波を見てもらった方がいいですよ、お母さん」とか、直近で仕入れたにわか知識で「自閉症スペクトラムですね」等と言ったりする。これらを病気(病名)が形成される瞬間、と言ってもいい。公民関係なく、組織成長のかなめは「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」だ等と良く言われる。しかしこのように、「相談」というものには慎重を期さないとひどい目にあう、のです! 自分の特性と、その特性を理解してくれる相手に相談しないといけない。その時初めて「治療」が可能となる。Hは、そこが分かっていた。ホントに「頭が悪い」わけではない。相談には相手を選ぶ手続きが必要なのである。また、相談には「秘密」が伴っている。Kはおしゃべり女子ではない。でないと悪事千里を走るごとく、「Hは耳がきこえなくなった」噂は、またたく間に学年全体に拡がったりする。今回のことは、ふたりだけの問題として「闇から闇へ」と正しく処理された。大げさなのではない。「相談」は「ホウ・レン」よりグレードが高い。「何かあったらまず相談して」と言っても、レスポンスは低いのだ。

 ついでながら、「非医療的」な「医療的行為」には、酒・たばこ・パチンコ等も含まれる。読者には分かってもらえると思う。また、「病者」に「健常者」を対置するのは誤りであるとしたのは、精神科医の中井久夫だ。あるのは「病者」と「非病者」だけなのだ。そして、この両者はつながっている、としたのである。いずれ書きます。

 

 ☆後記☆

10月になりました。胸くそ悪いニュースばかりですが、爽やかに美味しく、今月もこども食堂「うさぎとカメ」は頑張りま~す。チラシでは未定の「お楽しみ!」副菜は、「肉豆腐」に決定しました

ジャニーズ問題はもちろんですが、多くが知らないF1日本グランプリ、先月やったんですよ。ムカつく 20万人の観客を動員したこのイベントは、ニュース映像さえなかった。なんてこった 60年前の1962年、鈴鹿で開かれた第一回日本グランプリの映像を見てください。あの頃、日本も世界もこんなにレースを愛していたのです。

変わらず元気を届けてくれるオオタニさん、ついにメジャーでホームラン王。おめでとう


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