石破首相・下
~「自衛」と「同盟」~
☆初めに☆
石破茂が首相になることを、私たちの多くが待っていたような気がします。わけあって石破氏は、自分の党からコケにされていた。私たちの新首相への期待は、すでに幾ばくか肩透かしを食らっているようですが、私たちが石破氏に期待してしまうまでのいきさつを確認した方がいいと思われます。一方、国際的な緊張を前に、煽られてばかりいる私たちです。「平和ボケ」の私たちに、考えるための具体的な手立てはないのでしょうか。ないはずはない。
1 森加計問題
忘れそうだが、石破氏は党内きってのタカ派だ。憲法九条・第2項を撤廃するというのが、その代表と言える。
「(戦争放棄の)目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」
この項目を廃棄する考えは、今もって変わっていない。では、石破氏へのシンパシーを私たちはどのように持つに至ったのだろう。中でも、森友・加計学園問題は大きかったはずだ。4年前の総裁選に出馬するにあたって日経始め報道各誌に、長期政権にあった安倍内閣が目を剥いてびっくりするような発言をしている。要旨は以下のようだった。
「キャッチフレーズは「納得と共感」。首相になった場合に森友・加計学園問題や「桜を見る会」の問題を再調査する。検証しなければいけないことがあるとすれば、検証していかなければならない。政治が『何かごまかしている』『ウソを言っている』という思いが(国民の間に)ある以上、納得にも共感にもならない」
この問題に対し、渦中の自民党でこれほどはっきり言う人間がいたのかと、留飲を下げた人も多かったと思う。実は時期を同じくして、繰り返し都知事に挑戦し続けている、元幕僚長の田母神俊雄との間で石破氏は激論を交わしている。田母神氏は雑誌『Will』で突っ込み、石破氏は同じく『正論』で受けた。もともと田母神氏は、靖国神社に参拝したことのない石破氏**に我慢がならなかった。そこに油を注いだのが石破氏の、
「『日本は侵略国家ではない!』それは違うでしょう。西欧列強も侵略国家ではありましたが、だからと言って日本は違う、との論拠にはなりません。『遅れて来た侵略国家』と言うべきでしょう」
という田母神氏への反論である。「こういう御仁が自衛隊のトップに君臨していたのである」と、田母神氏が激怒したのはもちろんだ。また、2008年に起きた護衛艦「あたご」と漁船の間の海難事故で、漁船側にふたりの死者が出たことで、この時防衛大臣だった石破氏が遺族に謝罪に出向いた件にも言及する(これは海難審判では「あたご」に回避義務があり、刑事裁判では無罪になるという経過をたどった)。こんな防衛大臣の下で、自衛隊員が胸を張って活動出来るはずがない、と田母神氏は反論したわけである。当時、田母神氏は「石破茂氏には、どうしても総理大臣になって欲しくない」と繰り返し語っていたが、その石破氏、総理大臣になってしまった。
**今朝の報道で、石破総理が「昨日、靖国神社参拝」とあった。田母神氏との激しいやり取りは、2010年代後半のものだ。田母神氏は「(石破氏地元の)護国神社さえ参拝していなかった」と、批判している。
2 集団的自衛権
しかし、これが国際紛争・戦争に及ぶと、石破氏の持論が前面に押し出される。小泉政権の下で防衛庁長官だった石破氏が2004年のアジア安全保障会議で、また地方講演で、首相を力強くサポートする姿は圧巻だ。
「自由と民主主義を否定する集団から自由と民主主義の体制を守るためには、かかる集団との対話は意味を持ちません。力を含むあらゆる手段を用いて断固として戦うほかはありません」
「イラクが大混乱に陥って……飛び火していったとして、一番困るのは(石油のない)日本人じゃないですか」
石破氏はこの辺にして、私たちの「自衛」を考えてみよう。国を揺るがす出来事はなかったのか。「自衛」とは、そこから考え得るものだ。それで思い起こすのは、オウム真理教である。日本全体の機能がいかがわしい宗教集団に覆されるのではないか、と恐れおののく時もあったと思う。この時、自衛隊に出動要請をしたのは、東京都知事である。「地下鉄爆撃」の誤報を、オウム真理教によるサリン攻撃であるとただちに判断し、初期段階で自衛隊は待機していたという。教訓にしたいのは、相手が理屈の通らない集団だったら(実際、紛れもないテロ集団だった)どんな違法な捜査がされても構わないと、私たちが思ったことだ。そんな考えの決定的欠陥をさらしたのは、警察庁長官狙撃事件だった。オウムとは関係のない事件と分かるまで信者に対して嫌疑をかけ、あらゆる手法が使われた。
興味深いのが福島第一原発事故だ。これも国の存亡にかかる大事故である。物質的・経済的、医療的支援が世界各国から寄せられた。そして人的支援もされるのだが、とりわけ原発事故の対応に現場まで赴いたのがアメリカ軍だった。トモダチ作戦は「強固な日米同盟」の証明とされた。しかし、押さえておかないといけない。命の危険を賭して現場にいたのは、東電の現場職員だ。そして「日本」の自衛隊・「日本」の消防・「日本」の警察、以上である。アメリカ軍は2011年の3月17日、危険回避のため原発から80キロ圏外へ避難する。「敵前逃亡」した米軍を、集団的自衛権議論の俎上に上げない手はない。憲法九条第2項撤廃と共に集団的自衛権の行使を持論とする石破氏が、「イラクに派遣された自衛隊が、戦闘エリアになったからと言って撤収(**敵前逃亡)なんかすることが出来るはずがない」と言った石破氏が、この件についてどんな論評をするか聞いてみたい。
**( )内は私の解釈による勝手な加筆です。
☆後記☆
週刊新潮の記事に、コメントが欲しいとの連絡を受けました。言われずともやるつもりでした。昨日発行の新潮に「取手いじめ事件」が、大きく取り上げられました。地裁の「原告(元担任)の処分を撤回しろ」という判決を支持し、県の立ち上げた第三者委員会を批判する記事です。来週も続く連載なのです。前に書きましたが、事件の控訴審は今月の31日に判決があります。つまり、新潮の連載が終わった翌週です。控訴審も原告有利に動いていると見た新潮が、掲載に踏み切ったのではないかと、私は思いました。来週に書くつもりです。
一方、ノーベル平和賞という驚きのニュースもありました。ちゃんと書かないといけません。後日、改めて書きます。「非核の火」を引き継いだ、福島県・楢葉町の早川住職も喜んでいることでしょう。
今年も庭の金木犀が満開。家の中まで香りがむせ返るようです🥀
明日は、子ども食堂「うさぎとカメ」ですよ~ 定番の焼きそばにポテトフライを添えま~す🍝 食欲の秋🍄💛
チラシ裏面の通信です。皆さん、おいでくださ~い👪