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館山いじめ報道(上) 実戦教師塾通信六百三号

2018-06-08 11:34:30 | 子ども/学校
 館山いじめ報道(上)
     ~2012年からの始まり~


 ☆初めに☆
6月23日の集会案内のため、千葉県柏市内の学校を回っています。短期間でこれほど多くの先生方に会ったのは初めてですね。この事件をまったく知らない先生ばかりでなく、丹念に追跡している先生方もかなりいることに、少しホッとした私です。
 ☆ ☆
館山いじめ事件を二回にわたって振り返っておきたいと思います。
2008年9月10日、この時中2だった田副勝(たぞえしょう)君が、遺書を残して自殺したあと、報道は遅れました。大きく動くのは2012年です。今回のブログは、全国版の記事を中心に、この事件を検証したいと思います。
この経過を読んだ読者はきっと、今クローズアップされている日本の現実をかいま見ると思います。

 1 2012年9月5日
 息子の勝君の自死をめぐり、一体何があったのか知りたいと、それまでたったひとりで取り組んできたのは、お父さんの田副義春(よしはる)さんだった。
 2012年9月5日、事態は大きく動いた。

事件を伝えるこの日の毎日新聞は、全国面の8段抜きの記事だった。字が小さく読みづらいと思うので少しまとめます。
◇事件後行ったアンケート結果を、学校は
「……いじめにつながる事実はあったが、死に直接結びつく要因は分からなかった」
と結論。
◇小学校時代からあったいじめを避けるため、学区外の中学校を選ぶも……いじめを受ける。
◇「他の家族への影響を考えて黙っていたが、大津市の事例もあり」と、4回目の命日を前に、父親は再調査を求めた。
◇亡くなる二カ月前の部活動での出来事「臭い」をきっかけに学校を欠席、部活動をやめたいと申し出るいきさつ。
◇父親の「犯人探しをしたいのではない。息子の死の原因がなんだったのかを知り」たいという談話。

 そして同じくこの日、館山市議会で、議員の石井敏宏(としひろ)氏が、この事件に関する質問をした。館山事件はようやく日の目を見る。

 2 アンケート廃棄(はいき)から再アンケートへ
 そのひと月あとの10月、事件当時のアンケートが廃棄されていたことが判明。

遺族が出し続けてきた「内容を教えて欲しい」の声は、届いていなかった。4年もの間、行政は、
「説明は終わっており」
「市教委としても(学校と)見解は同じ」
を繰り返した。この場に及んでも、廃棄の連絡をしなかった理由が、
「遺族から正式な要求がなかったため」
などと言う。
 しかし、このアンケート廃棄発覚がきっかけで、再調査をすることとなった。このひと月あと、11月だ。

再調査も異例ならば、それを「記名式」で行うというのも異例だった。日大の宮川選手が記者会見を開いたことを私たちは思い出しておこうと思う。顔・名前を出すことがどんなに大変だったのか、あの時も、そしてこれからも私たちは見るはずだ。
 勝君の同級生はこの時、高3だった。彼らへの市教委の依頼文には、ご丁寧(ていねい)に、
「(廃棄したアンケートには)いじめに関する記述はなかった」
という、事件当時とは違った厚かましい説明まであった。


 3 持ち物をボロボロに
 そんな館山の「記名式」再アンケートにも、勇気を奮(ふる)い起こした子どもたちが回答した。
(写真が小さいのは、大きくすると、なぜか横向きの画面になってしまうためです。写真画面上をクリックしてください。そのまま大きくなります)

「教員見ぬふり」の見出しの記事(2012年12月)には、
◇殴る蹴るの暴力
◇親の国籍や服装についてのからかい
◇持ち物をボロボロに
◇自転車のタイヤをパンク
◇バスの中で臭いと言われていた
◇あの時起きたことを隠そうとしている(これは保護者の回答)
などの回答が多数寄せられた。しかし、市教委は、
「ほとんどが伝聞(でんぶん)であり」
「いじめと自殺との因果関係は不明」
との見解を変えなかった。

 年度が変わる。2013年の4月、地元の住民たちの手によって「館山いじめ問題を考える会」が発足(ほっそく)する。
 「考える会」は、情報公開条例に基づきアンケート原本の開示を請求する。そして、隠されていた事実が判明する。



 ☆後記☆
主催が「防災教育を考える会」なもので、いじめが「防災」になるの?とよく聞かれます。広い意味での「防災」なのでと答えると、
「そうか『危機管理』だ!」
と膝(ひざ)を打つ校長先生もいて、私もなるほどと思いました。思いがけない出会いもあって、この学校めぐり、楽しんでます。
 ☆ ☆
とうとういやな梅雨入りですね。仕方がありません。美味しいくず饅頭(まんじゅう)やカルボナーラ、そしてビールで憂(う)さをはらしましょう!

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1 コメント

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ありがとうございます (小出一彦)
2018-06-19 12:47:15
ずっと一緒に取り組んで頂きまして本当にありがとうございます。
今、こうして振り返ることはたいへん大切だと思いました。
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