実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

かすみ網 実戦教師塾通信九百三号

2024-03-08 11:41:29 | 福島からの報告

かすみ網

 ~カラス対策~

 

 ☆初めに☆

東日本大震災、そして原発事故から丸13年が過ぎようとしています。あの時福島に来てよかったと、今年も思い返します。今回の福島入りは、去年の11月下旬に行ってから3ヵ月ぶりとなります。コロナ騒ぎが始まって以来このペースが続いてますが、今回は何故か、久しぶりですね珍しいですね、とあちこちから声を掛けられました。少し恥ずかしいような、でも有り難い気分でもありました。楢葉・渡部牧場の梅は、元気よく咲いてました。

お茶請けを御馳走になりながら、畜産農家の現状を始め、思いがけず、原発事故のその後を知ることになりました。

 1 ビーグル犬

 渡部家に着くと、いつも断りなく周辺の畑や牛舎ををうろつくのだが、私の姿に気づいたカラスどもが一斉に飛び立つ。春先の空を覆うかと、一瞬思うほどだった。カラス増大の私の気がかりは、ビンゴだった。

すぐに飛散してしまうのでカメラに収められないが、人を小ばかにしたような声が気持ちのいい空に響く。エサがあるからだろうとは渡部さんの推論だが、そうだったら前と変わらないわけで、よそでは食べられなくなったという意味だろう。ご存じかも知れないが、日本のカラスはスズメほどでないが、人間の生活に近い場所で生息している。「♬~カラスは山の~♬」といっても、大体が近場の山や森林である。なんでも食べるし、ゴミをあさるのもうまい。以前、カラスの死骸を模したフィギュアは全く効果なしだったし、本物をぶら下げた効果も一週間しかもたなかったという。カラスの頭の良さは定評がある。猟銃の資格を取ったら?という私のしょうもない思い付きは、散弾銃のことである。カラスどもの多くが傷つき退散する。しかし、近所もびっくりするし、という渡部さん。こんなに広い場所なのに?と思うが、広い静かな場所で銃声がこだまするのだ。また、今さらこの年で猟銃の資格もねえぞ、と渡部さんは笑った。ふかし芋をテーブル上に置いた奥さんが、ビーグル犬ではどうかなと、やっぱり笑った。犬ならいいかなと思ったが、なんだ、これって大谷ネタだったみたい。デコピンは「慎重だが、勇敢でもある」犬らしい。

 私はかすみ網を思い出す。かすみ網は法律で禁止されている。細い糸で作られた網を地面近くに張る、古くからの狩猟方式だ。しかし、渡り鳥などを全滅させる恐れまであった。それで戦後、法的な規制がされた。私が渡部さんにかすみ網のことを言えるのは現物・現場を見ていたからで、法制化の後もしばらくは野放し状態だったからだ。でも、今は違う。だから出来ねえよ、という渡部さんの答だ。ところが、浪江町の一部では、やってるよ、という。かすみ網を、だ。調査なんだよ、野鳥に放射能がどのくらい蓄積してるかっていう調査だよ。背筋が伸びる。我が世の春とさえずるはずの小鳥たちが網にかかる姿、そして、帰還スケジュールが見えず、空を見上げる被災者たちの姿が浮かんだ。

 2 賑わいの思い

 干物工場「ニイダヤ」に顔を出すと、女工さんが驚いた様子で、お久しぶりです!と声を上げる。売り場の冷蔵庫が新しくなっている。原発からの廃水放出が始まって半年。しかし、工場内に陰りは見えない。「県水産物 風評 見られず」(福島民友)とあるように、売れ行きは上々で、放出が始まった直後は注文が殺到した。相双(相馬・双葉)地区が立ち上げた機構の呼びかけを中心に、全国からの支援が拡がったという。常磐ものブランド名がどこでも堂々と並んでるわ、と女工さんは元気な顔を見せた。知り合いに届ける詰め合わせと、自分は好きなサバをたくさん買った。

広野・二ツ沼直売所「のらっこ」。火力発電そばの公園は、春の風が穏やかだった。店に入ると、珍しいですね、と声を掛けられる。お昼近い時間の売棚は、いつも品切れ状態となっている。聞けば、4月から開店するのは週の後半だけで、時間も一時間短縮になる。閉めちゃうんですか、私は残念な予感を伝えた。今年いっぱいやりますよという答だったが、始まってから10年間あった賑わいは遠ざかった。定期的な線量検査は、後に抜き打ちになった。やり方もそうだが、検査そのものへの不満で「のらっこ」はその都度熱くなった。おばちゃんたちの本音に座り込んで聞き入った懐かしい日々が、思いがけずよみがえった。今日はいつもいる元気な女(ひと)がお休みでねと言った後、本を書いてる人でしょ?今日は取材でどこかへ?と聞かれた。いや、こうしてするあなた方とのやり取りが、元気の源になってるのです、と思う。大変だった町に、間違いなくあなた方は元気を送っていたのです、とも思った。そうして、10年前の「あたしたちも頑張るからね!」という、元気な声を思い出す。

 

 ☆後記☆

いつも利用しているビジネスホテルでも、お久しぶりですねと声をかけてもらって、ありがたい福島行でした。やはり、渡部さんのところでは、濃い時間を過ごしました。後半部は次回、伝言館のレポートと共にお送りします。

お茶請けで頂いた芋が美味しくて、お土産を催促しました。日向に4,5日置いとくと甘さが出て来るヨと言われたので、このようにやってみました。確かに日ごとに甘みが増す。皆さんもやってみてください。ふかし芋ですよ。

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今日は柏市内の中学校で卒業式🌺 せっかくなのに雪、それも牡丹雪です。でも、見送りの時には止んでる感じですね。みんなと肩を並べて同じ年月のことを振り返る/心を通わせることって、実は人生の中でそんなにないことなんですよね~👬 ♬~意味のないいさかいに泣いたあの時(『旅立ちの日に』)~♬ みんなおめでとう🏫⛄

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オオタニさんの結婚を書かないのか、というご意見をいくつかいただきました。書いてるんです。福島に出発した後に分かったことでした。ブログはデスクトップのパソコンからアップしているため、急きょスマホからコメント欄に追記したという具合です。良かったら読んで下さい。


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