『脱東電』のために
step2のⅢ
①『非電化工房』
前号に引き続き先輩からのアドバイスで考えてみた。まずひとつ、バカバカしいくらい当たり前のことを言われた。
「東電から逃れたいのだったら、東電の管轄外に引っ越すこと」
笑ってしまった。そうだった。言われて見て、自分が「個人的に」東電の管轄外に脱け出すことを目的としているのではないことに今さら気付いた。私は、「私たちとして」東電の鎖(電線?)を断ち切るにはどうしたらいいのか、ということを考えたいらしいのだ。
東京の先輩もそうだが、いや恐らく東京の先輩の方が、この岩手の先輩よりも自然に寄り添った生活をしている。その生活ぶりを見たり(雑誌で見た)聞いたりすると、都会的生活につかっているもの、あるいは都市的空間にいるものは、「自然」というものに、あるいは自然という姿をした自分というものに耐えられるのだろうか、と思った。「自然葬」などという流行りものがあるが、それまで近未来的・都会的生活をしていたものが、末期に及んで「森林に」「海に」還りたいと思うのは自由だが、きっといきなり「自然に」さらされた自分の骨の方ではびっくりするんではないか、と思ったりもする。
『非電化工房』というのを聞いたことがあると思う。栃木県は西那須野に研究者(趣味者?)が立ち上げた電気に頼らない、自然エネルギーで生きる実験的場所である。耳にはしていたが、今回、先輩の勧めがあったので覗いてみた。ここに二、三紹介するが、皆さんも検索してみるといい。その発想の、素朴かつ豊かなことに「笑う」に違いない。そして思う。「面倒くさい」。私たちがいかに「文明」の中にどっぷりとつかっているか、ということも分かる。
○雨水トイレ
もうお分かりのことと思うが、蓄えた雨水を排泄物とともに流す「水洗トイレ」だ。
○バイオトイレ
となれば、それを流すのは「川」!?ってそんなバカな、である。微生物の力で無機化する。
○非電化除湿機
これは実際詳しく、画像も含めて確かめることをお勧めする。もちろん「しかけ」は除湿剤であるが、立派な姿にほれぼれ出来る。そして、これが大切だが「能書き」がいい。初めに来るのが「除湿機は必要なのか」である。「日本古来」の住居に対する考え、その合理性を高度成長の日本社会はブルドーザーのごとくなぎ倒してきた、と始まる。それで出来上がった「高気密・高断熱」の住居こそが、もともと不要だった「除湿」を必要とした、という。そんなことを踏まえた上での「非電化除湿機」の提案となっている。
その他、非電化冷蔵庫は有名なので読者も知っているかも知れない。そんな沢山の「製品」が並んでいる。この工房がいいのは、やたらに気負い振りかぶることもなく、ユーモアさえ感じさせる空気のなかでやっていることだ。じゃないと続かないよ、ということなのか、「自然」体でやろうよ、ということなのかな。
②岩手手作り「モートンハンバーグ」
この話題が『脱東電』をストレートに扱うものではない。しかし、原発事故のもたらしたものをどうクリアするかということを考えるうえで、この手作りハンバーグのことは考えさせられた。4月10日の『クローズアップ現代』(NHK)を見ただろうか。ニュースのあとの番組で、私はまず見ることはないが、つい画面に引きずられて見てしまった。
岩手の手作りハンバーグの小さな会社の話だ。地元の牛を使ってハンバーグやハムを作ってきたこの会社は、セシウムが検出された肉をどうすべきか迷い、消費者にその事実を伝えて販売に踏み切ることにした。「キロ当たり6ベクレル」を表示、基準値(キロ当たり100ベクレル)をはるかに下回る数値だ。ところが、ハンバーグは4割が売れ残り、牛肉の在庫は800キロに及んだというレポートだった。元飛行士の解説者は「放射能が検出されたということでそんなに神経質になることはない」と言い、番組は「消費者側も少し学習することが必要かも知れない」というように結ぶ。
私はそんな思いをして作るハンバーグを是非とも食べてみたいと思って、検索した。結局私は注文しなかったのだが、「原発事故の現在」を知る上でずいぶんと参考になった気がした。身も蓋もないような2チャンネル的ブログの反応に、初めは気が滅入った。
「今は簡単に輸入品買えるんだよ。誰が汚染ハンバーグ食うか」
「作る方も考えろよ。どうして放射能の肉で作るかな」
「解説者はパイロットだろ。なんで食品や放射能の専門家出さねえか」
「飛行機で放射線浴びて平気だって!? 今さら内部被曝と外部被曝違うって昔の話を蒸し返す暇ねえって」
「『クローズアップ現代』見損なった。売れ残ったハンバーグは消費者のせいですか」
どっさりあった。ついでに言うが、これらのブログの装丁やデザインが立派なんだよねえ。こんな立派な衣装を身につけながら、こんな内容で恥ずかしくないのかな、と私の貧相なブログの装丁と比べて思ったものだった。
今や輸入牛肉の方が安全だとするこの人たちが、「潜伏期間60年」という狂牛病が話題になった時、どんな反応をしたのか、興味のあるところだった。また、政府が「どうして?」と思うくらい急いでいる原発の最稼働に、この人たちがどんな考えを持っているか、これまた興味を持ったのだった。私にはこの人たちが「国民(消費者)にはできることとできないことがあるんだから(しょうがない)」と言ってそうで…ヤダね。
「そんなバカなこと(セシウムが検出された肉でハンバーグ作ること)やらないで、損害賠償請求すりゃいいんだよ」
「現地人は、そんなあぶねえとこに暮らしてて怖くないのかね。避難するから金くれって言えばいいんだよ」
「暮らす」とか「働く」とかいうことで、壁にぶつかったり、考えたことのないバカどもでないと、こんなことは言えまい。「やっぱり前に居たところに帰りたい」という女の子に引きずられて南相馬に戻った家族の話など、こういう間抜けどもには伝わらない話だ。
いいブログもあった。私はこの通りだと思う。
「単純な話ではないと思います。安全な数値だ、ということで割り切れる方とそうでない方がいらっしゃると思います。小さなお子さんがいらっしゃる家庭ではやはり割り切れないことと思いますし。購入される方でも、安全だと思っている方、また、支援というものを動機として購入される方、と色々だと思います」
番組終了直後、この番組担当に沢山の問い合わせがあったという。その多くが、
「このハンバーグ(牛肉)を購入したい」
というものだったという。購入しようとしていた私の気勢が削がれたのは確かだった。
☆☆
「じゃあストーブを使わなくなったら、それで沸かしたお湯を使っての洗い物は出来なくなるんじゃないですか?」と、私の「エコな生活」にチャチャを入れられました。なにを言うかです、暖かい季節は「水洗い」です。でも、しつこい脂汚れは、残念ながら少し電気!のお手伝いを願います。マグカップに水を入れて電子レンジでチン、そいつぐらいお湯があれば充分!
☆☆
「先生がまだ現役のときに震災があったらどうだったのかなって思うんです」
「逆に先生が退職して10年過ぎて震災があったらって思うんです」
昨日、私の家に寄った教え子がそう言うのです。彼の言う通り、そうだったら私は支援に向かえなかった気がします。
「先生のような生き方をしている人だから、こんな『絶妙なタイミング』で震災は起こった気がするんです」と、彼は続けました。
変ですが、なんか嬉しかったです。
step2のⅢ
①『非電化工房』
前号に引き続き先輩からのアドバイスで考えてみた。まずひとつ、バカバカしいくらい当たり前のことを言われた。
「東電から逃れたいのだったら、東電の管轄外に引っ越すこと」
笑ってしまった。そうだった。言われて見て、自分が「個人的に」東電の管轄外に脱け出すことを目的としているのではないことに今さら気付いた。私は、「私たちとして」東電の鎖(電線?)を断ち切るにはどうしたらいいのか、ということを考えたいらしいのだ。
東京の先輩もそうだが、いや恐らく東京の先輩の方が、この岩手の先輩よりも自然に寄り添った生活をしている。その生活ぶりを見たり(雑誌で見た)聞いたりすると、都会的生活につかっているもの、あるいは都市的空間にいるものは、「自然」というものに、あるいは自然という姿をした自分というものに耐えられるのだろうか、と思った。「自然葬」などという流行りものがあるが、それまで近未来的・都会的生活をしていたものが、末期に及んで「森林に」「海に」還りたいと思うのは自由だが、きっといきなり「自然に」さらされた自分の骨の方ではびっくりするんではないか、と思ったりもする。
『非電化工房』というのを聞いたことがあると思う。栃木県は西那須野に研究者(趣味者?)が立ち上げた電気に頼らない、自然エネルギーで生きる実験的場所である。耳にはしていたが、今回、先輩の勧めがあったので覗いてみた。ここに二、三紹介するが、皆さんも検索してみるといい。その発想の、素朴かつ豊かなことに「笑う」に違いない。そして思う。「面倒くさい」。私たちがいかに「文明」の中にどっぷりとつかっているか、ということも分かる。
○雨水トイレ
もうお分かりのことと思うが、蓄えた雨水を排泄物とともに流す「水洗トイレ」だ。
○バイオトイレ
となれば、それを流すのは「川」!?ってそんなバカな、である。微生物の力で無機化する。
○非電化除湿機
これは実際詳しく、画像も含めて確かめることをお勧めする。もちろん「しかけ」は除湿剤であるが、立派な姿にほれぼれ出来る。そして、これが大切だが「能書き」がいい。初めに来るのが「除湿機は必要なのか」である。「日本古来」の住居に対する考え、その合理性を高度成長の日本社会はブルドーザーのごとくなぎ倒してきた、と始まる。それで出来上がった「高気密・高断熱」の住居こそが、もともと不要だった「除湿」を必要とした、という。そんなことを踏まえた上での「非電化除湿機」の提案となっている。
その他、非電化冷蔵庫は有名なので読者も知っているかも知れない。そんな沢山の「製品」が並んでいる。この工房がいいのは、やたらに気負い振りかぶることもなく、ユーモアさえ感じさせる空気のなかでやっていることだ。じゃないと続かないよ、ということなのか、「自然」体でやろうよ、ということなのかな。
②岩手手作り「モートンハンバーグ」
この話題が『脱東電』をストレートに扱うものではない。しかし、原発事故のもたらしたものをどうクリアするかということを考えるうえで、この手作りハンバーグのことは考えさせられた。4月10日の『クローズアップ現代』(NHK)を見ただろうか。ニュースのあとの番組で、私はまず見ることはないが、つい画面に引きずられて見てしまった。
岩手の手作りハンバーグの小さな会社の話だ。地元の牛を使ってハンバーグやハムを作ってきたこの会社は、セシウムが検出された肉をどうすべきか迷い、消費者にその事実を伝えて販売に踏み切ることにした。「キロ当たり6ベクレル」を表示、基準値(キロ当たり100ベクレル)をはるかに下回る数値だ。ところが、ハンバーグは4割が売れ残り、牛肉の在庫は800キロに及んだというレポートだった。元飛行士の解説者は「放射能が検出されたということでそんなに神経質になることはない」と言い、番組は「消費者側も少し学習することが必要かも知れない」というように結ぶ。
私はそんな思いをして作るハンバーグを是非とも食べてみたいと思って、検索した。結局私は注文しなかったのだが、「原発事故の現在」を知る上でずいぶんと参考になった気がした。身も蓋もないような2チャンネル的ブログの反応に、初めは気が滅入った。
「今は簡単に輸入品買えるんだよ。誰が汚染ハンバーグ食うか」
「作る方も考えろよ。どうして放射能の肉で作るかな」
「解説者はパイロットだろ。なんで食品や放射能の専門家出さねえか」
「飛行機で放射線浴びて平気だって!? 今さら内部被曝と外部被曝違うって昔の話を蒸し返す暇ねえって」
「『クローズアップ現代』見損なった。売れ残ったハンバーグは消費者のせいですか」
どっさりあった。ついでに言うが、これらのブログの装丁やデザインが立派なんだよねえ。こんな立派な衣装を身につけながら、こんな内容で恥ずかしくないのかな、と私の貧相なブログの装丁と比べて思ったものだった。
今や輸入牛肉の方が安全だとするこの人たちが、「潜伏期間60年」という狂牛病が話題になった時、どんな反応をしたのか、興味のあるところだった。また、政府が「どうして?」と思うくらい急いでいる原発の最稼働に、この人たちがどんな考えを持っているか、これまた興味を持ったのだった。私にはこの人たちが「国民(消費者)にはできることとできないことがあるんだから(しょうがない)」と言ってそうで…ヤダね。
「そんなバカなこと(セシウムが検出された肉でハンバーグ作ること)やらないで、損害賠償請求すりゃいいんだよ」
「現地人は、そんなあぶねえとこに暮らしてて怖くないのかね。避難するから金くれって言えばいいんだよ」
「暮らす」とか「働く」とかいうことで、壁にぶつかったり、考えたことのないバカどもでないと、こんなことは言えまい。「やっぱり前に居たところに帰りたい」という女の子に引きずられて南相馬に戻った家族の話など、こういう間抜けどもには伝わらない話だ。
いいブログもあった。私はこの通りだと思う。
「単純な話ではないと思います。安全な数値だ、ということで割り切れる方とそうでない方がいらっしゃると思います。小さなお子さんがいらっしゃる家庭ではやはり割り切れないことと思いますし。購入される方でも、安全だと思っている方、また、支援というものを動機として購入される方、と色々だと思います」
番組終了直後、この番組担当に沢山の問い合わせがあったという。その多くが、
「このハンバーグ(牛肉)を購入したい」
というものだったという。購入しようとしていた私の気勢が削がれたのは確かだった。
☆☆
「じゃあストーブを使わなくなったら、それで沸かしたお湯を使っての洗い物は出来なくなるんじゃないですか?」と、私の「エコな生活」にチャチャを入れられました。なにを言うかです、暖かい季節は「水洗い」です。でも、しつこい脂汚れは、残念ながら少し電気!のお手伝いを願います。マグカップに水を入れて電子レンジでチン、そいつぐらいお湯があれば充分!
☆☆
「先生がまだ現役のときに震災があったらどうだったのかなって思うんです」
「逆に先生が退職して10年過ぎて震災があったらって思うんです」
昨日、私の家に寄った教え子がそう言うのです。彼の言う通り、そうだったら私は支援に向かえなかった気がします。
「先生のような生き方をしている人だから、こんな『絶妙なタイミング』で震災は起こった気がするんです」と、彼は続けました。
変ですが、なんか嬉しかったです。