チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 448

2021年09月08日 09時15分02秒 | 日記
24節気の白露(9月7日)に入ると、チャ子ちゃん先生は着物の整理を始める
まず麻の着物を点検、着るたびに霧吹きかけて物理的な汚れは絹石鹸で洗っている。そのあと寝押ししているので、悉皆屋さんに出す必要はない

紗とか絽の着物はじっくり点検、大体汚ごれている、汚しの天才!と悉皆屋さんに言われている
染み抜き、生き洗い、そして解き洗いと分ける。襟とか袖口の汚れはそのつど「襟元」で真綿を使って落としているのでこちらはアイロンをかけて仕舞うので、ついつい面倒で後回しになり、季節が通り過ぎていきあわててたたむだけにしてしまうこともしばしば

解き洗いは丸洗いを3回ぐらいするともう汚れが落ちにくくなり、全体にくすんだ感じになるので解く。忙しい年代は悉皆屋さんに解いてもらっていたが、ここ30年は自分でほどいている。これがなかなか楽しい

解く事の発端は、「えらそうなことを言っても着物一枚縫えないくせに」と陰口を言われたことが在る。まさしくその通りでいまだに着物一枚縫えない。それで悩んだこともあるがわたしの仕事は別にあるという結論を自分に与え、その代わり着物を解いて、仕立ての勉強をさせていただいている

着物はこうまで丁寧に縫ってあるのかといつも感心する。昨日なんと40年ぶりの着物を解いた。夏の色留めそでなので着る機会も少なく、丸洗いも三回してそのまましまっていた。この夏その色留めそでを浴衣風に肌襦袢と湯文字だけで着ていたら、さすがに色あせた感じと、なんと墨をつけてしまった。墨は落ちないので悉皆屋さんに頼んで柄を書いていただくつもりだが、解いていて感動した

この色留め白地の絽縮緬に紫で葦の葉を手描きしている。白地なので当然白絹糸で縫ってある、と思いきや模様の些細な葉っぱのところまでも、その都度紫の絹糸に替えている。その細やかな配慮に胸を打たれた。もちろん襟ぐりのカーブの布のたたみ方(最近は切り込みを入れてカーブを出している人もいる)袖口のくけ方、袖の丸みの処理、今の和裁士の縫い方とどこか違う。途中から解くのがもったいないと思ってしまった

この色留めは竺仙の先代社長と、尾形光琳の絵の中の葦の様子だけを引き出して染めていただいた。その時どうしても絽縮緬がいいと駄々をこねると
「比佐子さん絽縮緬は昔縮緬浴衣によく使われていて、堅気の人はあまり着なかったけどね」「だからめでたい席で着られるものをつくります!絽縮緬が喜ぶ」
と言い返した時の社長の顔まで目に浮かぶ
社長は仕立て職人も最高な腕の人を選んでくださっていたのだと、いまさら気づく。解いてしまったら、社長に、仕立て職人に、きものに感謝の気持ちがより深まった

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