チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

初繭

2012年06月04日 11時10分07秒 | 日記
密かにに期待はしていた今日は満月なので
きっと蚕が繭を造り始めるだろうと思ったのだ
案の定キラキラ光る繭を朝二つ見つけた
嬉しい

チャコちゃん先生の所ではたった20頭しか育てていない
それでもバルコニー庭で育てている4本の桑の木の葉っぱを
蚕はほとんど食べ尽くした

ごまの点のような大きさから今日体長を測ってみたら7㎝
体の丸みは直径1センチ弱
その体を反り返らせつまりイナバーわーをしながら糸を吐いていく

たくさん育てるところは蚕棚というマンションのような産室を造っている
しかし此方はそんなことは出来ない
前にも育ててみたとき「先祖返りして」桑の葉に丸まって繭を造った

蚕はもともと「桑蚕」といって桑の葉に付く害虫であった
桑の葉は古代から薬草として認識されていて桑だけを育てる人も大勢いたのだ
そこに害虫が住み着き繭を造った
そのときの繭は白ではない
外敵から身を守るため葉っぱの色と変わらない

その繭を採集し糸をとった先人の知恵に驚く
そして今度はもっと大量に糸を造ろうとして室内で育て始めた

蚕はもう天敵を心配することはなく何でも人間に与えてもらえる
人間に無条件の愛を捧げてしまった
その蚕の愛に応えて日本人は一ミリも布を捨てないきものを作り上げた
美しいきものは蚕の無条件の愛に支えられている

蚕は繭を作りその中で脱皮を遂げ子孫を残すために蛾にになって相手を探しに行くのだが
しかしその蛾は羽があっても飛べないがになっている
相手探しも受精も人間が世話をする

ここまで人間の思い通りになってしまった蚕
自分で飛び立つことのできない蛾

天から頂いた虫の「蚕」糸も今や空前のともしび
石油繊維に押されてしまっている
今この日本があることは明治時代の養蚕の奨励で絹糸を世界に輸出できたからだと
私たちはそれを思い返さなければならない

無心に吐く蚕の糸の美しさ
その糸はタンパク質そのもので身に着けるだけでも肌も美しくなるという

今夜あたりここにいるほとんどの蚕がきっ繭を作る
満月なもの







コメント
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