カセットデッキがもう少し音質改善出来るのでないかと、再生ヘッドアンプを見直してみた。
愛用のカセットデッキはTEAC製V-5010。
前回のBIAS TRAP回路に続いての検討になります。
カセットデッキにおいて、ヘッドでの高域減衰は仕方ないので、何かしら補正する必要があります。
1.再生イコライザの時定数(ノーマルテープの場合)
<高域側>
規定値は120uSですが、購入時は4.3kΩ(R106) x 0,027uF(C103) = 116.1uS。
過去の改造により現在の設定は、4.42kΩ x 0.027uF = 119.34uS。
これを4.75kΩ x 0.027uF = 128.25uSとし、高域の減衰量を少な目に。
<低域側>
摩耗したヘッドを研磨した為か、コンターエフェクトで低音が若干うねってモヤモヤしてる。
このうねりで高音を汚しているかも知れない。
そこで、低域のEQを若干高めにシフトしてみる事に。
今は、規定値3,180uSに対し120kΩ(R107) x 0.027uF(C103) = 3,240uS (購入時状態)。
若干低めに設定してある。
NFBの電解コンの容量が他社よりも大きい事からもかなり低域を攻めたのではと思う。
本機スペックの周波数特性も「15Hz~」となっている。
しかし、これではコンターエフェクトをまともに受けそう。
それに15Hzが鳴らせるスピーカーってどんなの? 普通は必要ないのでは。
これを120kΩ//1MΩ=107kΩとし、時定数を107kΩ(R107) x 0,027uF = 2,889uSに変更。
※この様に設定しているメーカー、機種もある。
目論見通り、低音がスッキリして、高域も綺麗になりました。
2.ヘッドの共振コンデンサ
ヘッドの材質や種類にも依るので、機種によりこのコンデンサが有ったり無かったり。
ナカミチやTEACの一部機種には付いています。このV-5010には無し。
これは、ヘッドのインダクタンス(L)とCを並列共振させて高域を補正するためのもの。
取り敢えずディップ・マイカ・コンデンサ 100pFを追加しました。
ヘッドのLが不明ですので共振周波数の計算が出来ません。シールド線の浮遊容量も。
このコンデンサには、ヘッドの機械的共振による高周波ノイズを低減する役目も有る様です。
3.高域補正回路
実は、バイアストラップ回路に秘密が有ったのです。
RLCフィルタ回路が、高域補正の役目も担っていたのです。
インダクタのおかげで30kHz付近にヤマが出来て、これで高域を持ち上げているのです。
※RLCフィルタの「カットオフ周波数」「周波数解析」には、「フィルタ計算ツール」を使わせて頂きました。
現行は直列抵抗1.5kΩ(R109)でしたが、これに10kΩをパラって1.3kΩに。
1.3kΩ(R109)、27mH(L101)、1,000pF(C109)で構成。
fcは30kHzで変わりませんが、Qによるヤマが僅かに高くなりました。
聴いてみると高域が持ち上がって良い感じです。
さらに1kΩでも試しましたが、高域が持ち上がり過ぎて不自然、クセが強くなります。
1.3kΩが適当な様です。
今回の変更は、2.、3.を実施しただけでは、濁った高域が持ち上がるだけで、煩く感じました。
まずは、1.の低域のうねりを対策してから、2,3を実施する必要がありそうです。
<変更前の回路図>
<変更後の回路図> 赤丸で囲んだ所が今回変更箇所。
変更後のヘッドアンプ部の写真。
今回、「テープ・レコーダーとその活きた使い方」(誠文堂新光社)を参考にしました。
今から40年前に購入した本です。
抵抗、コンデンサが潤沢にあれば、更に良い設定が見つかるかも知れませんが、手持ちの抵抗、コンデンサでは、こんな感じです。
テストテープは所有してないので、自分の耳だけを頼りに、同じ曲をCD、レコードと聴き比べながら、調整しました。
80年代中頃の同じ曲を比較した場合、端的に言えば、「CDの音は繊細で美音」、「レコードの音は抜けが良く空間表現が豊か」、「カセットテープは音が厚い」ですかね。
特にカセットテープは、音がギッシリと詰まっていると言った感じです。