火のないところに煙は立たない。「世界の支配者がいる」と言われるのには、元になる事実がいくつかある。
そのひとつは、第二次世界大戦の後に、アメリカのアイゼンハワー大統領の演説で世に知られることとなった、「軍産複合体」(ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス、MIC)。
20世紀に入り、戦車や飛行機、潜水艦と、兵器が途方もなく巨大で複雑になったおかげで、「戦争の最中は兵器を作り、戦争が終わったら普通の工場に戻りましょう」ってわけにいかなくなった。でも、平和な時期に、軍需産業を維持するのは大変。だから、軍部と産業界が協調して、軍需産業および軍事技術を、日頃から守り育てていくことになった。
戦争には、確かに大きな経済効果がある。世界大恐慌の地獄からアメリカ経済が立ち直ったのは、第二次世界大戦で軍需工場がフル回転したおかげであることは、広く知られている。その第二次世界大戦で荒廃した日本だって朝鮮戦争の特需景気で立ち直り、その朝鮮戦争でボロボロになった韓国もまた、ベトナム戦争による特需景気で立ち直った。
問題は、戦争中にフル回転した経済を、終わった後でどうやって維持するかだろう。常に敵がいないとやっていけないのが、軍需産業の困ったところだ。でも、軍需産業はアメリカ経済の屋台骨で、もはや一心同体の存在。なんとか、これを続けていかなきゃいけない。
戦後は長らく東側との冷戦が続いて、激しい軍備拡張競争が続いたから、軍需産業はネタに困らなかった。でも、20年前にソビエト連邦が崩壊して冷戦は集結。軍産複合体は、大きな危機を迎えた。
だからと言って、あちこちで戦争を起こし続けるのも大変だ。イラク人やアフガン人の頭上に、武器弾薬が雨アラレと降り注ぐたび、「また、軍需産業の在庫一掃セールが始まったな」と、陰口を叩かれる。これは、やりにくい。
第二次大戦で軍国主義の日本とドイツが消え、冷戦でソビエト連邦が消え、戦争のネタは、なんだかんだ言いつつ、一つ一つ消えてきた。この流れが続けばいいものを、東アジアには、何を思ってか、いまさらせっせと燃料投下してる大陸国家もあるのだが・・・。でも、それだって、いつまでも続かないだろう。軍需産業の存在意義が失われるのは時間の問題だ。
もうひとつは、シオニストの存在。これまた、第二次世界大戦の少し後、パレスチナの地にイスラエルが建国されて、世に知られることとなった。
エルサレムには、「シオンの丘」ってところがあって、ユダヤ人にとっては、魂の故郷みたいなところ。「シオンの丘を目指そうよ」というわけで、イスラエルの建国を目指して運動する人たちのことを、「シオニスト」というようになった。
アメリカの新聞・テレビ・映画などの産業には、シオニストが多い。これは、日本でも、在日韓国人が芸能・スポーツ界で活躍してきたのと同じで、アウエーの地に生きる少数派が、その方面に活路を見出してきた結果と言えるだろう。世論がメディアに左右されやすいのは、アメリカも日本と一緒だから、政治家にとっては、敵に回すと厄介な存在。特に、大統領選挙では、「ユダヤ・イスラエルを敵に回した者は、必ず落選する」と言われている。
それから、イスラエルの建国に賛同していて、資金協力などの支援をする会社のことを「シオニスト企業」という。こちらは、コカコーラなんかが有名だ。日本でいえば、韓国や北朝鮮を支援する「在日企業」といったところだろう。
こういうのは、別に陰謀論の世界ではなく、普通に世間一般で周知の事実だ。でも、シオニストも、一部の人たちが言ってるほど、アメリカを支配できているわけではない。
シオニストと対立する勢力に、「グローバリスト」というのがある。90年代に、このグローバリストの存在を日本に紹介したのは、国際政治学者の藤井昇氏だった。今では、かなり広く知られている。
グローバリストは、イスラエルの建国になんか、まったく興味を持ってない。そんな国に肩入れするより、アジア・アフリカ・中南米その他にガンガン進出して、ビジネスを世界に広げたいと考えている。こちらは、IBMあたりが昔から代表選手とされている。
グローバリストは、ユダヤとは関係ない。それどころか、イスラエルを厄介なお荷物と考え、アメリカはそんな国にいつまでも肩入れすべきではないと考えている。それに対して、イスラエルという、ひとつの国にこだわり、そのためには他の国々を敵に回しても気にしないのが、シオニストの特徴。
今は、どちらかといえばグローバリストに追い風が吹いている時代。シオニストにとっては、自分たちの存在が埋没しないよう、必死であがいている状況だ。なんとしてでも、アメリカがイスラエルに注目し、肩入れするような中東情勢を続けたい。
いずれにしても、支配階級というのは、いつの時代にもいるけど、一枚岩で団結することは滅多にない。いつも対立してる上に、次々と入れ替わっていくものだ。ひとつの勢力が、ずっと支配し続けるのは無理がある。
軍備拡張競争や、中東での対立を必要としている勢力は、確かに存在する。自分たちの存在意義を守るため、対立を煽り続けようとするのは当たり前だろう。でも、常に変化し続けるのが、世の中の常。彼らの時代の終わりは、とっくに始まっている・・・。
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