朝日新聞に、興味深い記事が載っていた。インド最大の企業グループ・タタ財閥が、後継者選びをしているというのだ。
タタ財閥を率いる72歳のラタン・タタ会長は、そろそろ引退の時期が近づいている。でも、後継者に困っている。というのも、タタ一族は、インドでも珍しいゾロアスター教徒だ。日本の明治維新と同じ時期に創業し、今年で140年の老舗。グループ売上6兆円を誇るインド最大の財閥で、10万円の格安自動車を作ったことでも知られる。その一方では、超高級車の名門・ジャガーを買収したりもしている。
ゾロアスター教は、イスラム教が広がる前のイランで栄えた、古代の宗教。古代の超大国・ペルシア帝国が国教としてきた。教えはインドにも広がり、6万人ほどの信者が残っているという。その中に、巨大財閥のタタ一族がいるというのも、いかにもインドらしい。
ゾロアスター教は、別名を「拝火教」というとおり、火を拝むことで知られる。古い寺院には、千年以上も前から燃やし続けられている火なんてのがある。日本でいえば、比叡山延暦寺の法灯みたいなものか。死んだ人を鳥に食べさせる「鳥葬」でも有名だ(現在は、禁止されているようなのだが)。世の中を善と悪の闘争の舞台としてとらえ、終末には善が勝利すると信じている。善悪二元論と、終末思想の祖。キリスト教やイスラム教はもちろん、現代のスピリチュアリズムにも、絶大な影響をおよぼしている。
そんなゾロアスター教なのだが、ヒンドゥー教が圧倒的に優勢なインド社会の中で、長く受け継いでくるのは大変だった。結婚は相手が信者でなければならないし、父親が信者でなければ、入信できない。これでは先細りになるばかりで、記事によると「信者の25%は独身で終わる」という。このため、少子高齢化が著しく進んでいる。タタ会長も、独身だ。
創業以来140年、ゾロアスター信者のタタ一族によって受け継がれてきたのだが、ここ20年ほどの間に、会社は著しくグローバル化した。もはや、経営のプロでなければ、とてもやっていけない。会社としては、「後継者はゾロアスター教徒でなくてもいい」と言っているようだ。
それにしても、なんとも奥が深い、神秘のインド。ゾロアスター教徒のタタ一族ばかりでなく、少数派のシーク教徒も経済界で大活躍していることで知られる。「インド人のビジネスマン」といえば、多くの人が頭にターバンを巻いた人を連想するのだが、これはシーク教徒の特徴だ。10億人の人口を抱えるインドの中では、わずかな人数にすぎないシーク教徒が、そんなイメージを世界中に植えつけている。
やっぱり、言っちゃあなんだが、ヒンドゥー教やイスラム教は、ビジネスに向かない思想なのかもしれない(笑)。あの「カースト制」だの、「利子を取ってはならない」だのの、シチ面倒くさい余計な話がなくなれば、インドやイランも文明の底力を発揮して、もっと経済が活性化しそうに思えるのだが・・・。
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カーストのような迷妄は無い方がいい。でも利子は取ってはならないは正しいよ。
やはり、「イラン系は優秀だ」という評判は本当なのか・・・!?
>カーストのような迷妄は無い方がいい。でも利子は取ってはならないは正しいよ。
なるほど。でも、利子がない社会は不便なような気がします(笑)