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18日
尾道での宿泊は、海岸べりの住吉神社前のホテル。
北前船の寄港した岸の前にあります。
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8時半、ホテルをチェックアウトし、
開店前の今川茶舗へ直行することにしました。
店主・今川吉広さんは高校時代の生物研究部の部長。
わたしが当時所属していた部活は美術部でしたが、
ある日のぞいた生物研究部の部室でおたまじゃくしを
飼っているのを見つけ、しょっちゅう見に行ってるうちに
部員扱いに。大学の研究室にみじんこを観察しに行くとか、
鳥取の大山に登山するなど、イベントにはよく参加してました。
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今川茶舗はホテルから徒歩10分の距離です。
キャリーバッグをゴロゴロひこずりながら海岸通りを
歩いていると、
海岸から1本入った十四日町のビルの角で、
時折CMでみかける引き売りの魚屋「ばんより」のおじさんに
遭遇。
「あれ?おじさんコマーシャルに出とってでしょう?」
笑ってうなずくおじさん。
箱の魚は、ちぬ、こち、おこぜ、はぜ、海老、たこ、穴子
10cm未満の甲いか・・・・・。
「懐かしい魚ばっかりじゃね。とくに、この海老と穴子。
好きじゃった、よう食べたわ」
「みんな、朝、獲ってきたんよ」
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9時前。
久保町(水尾町)の今川玉香園に到着。
いつもなら8時にはシャッターが開いているのに、
閉まっており、あれ?、と思ったら
シャッターが1枚、身の丈ほど開いており、
のぞいてみると、暗い中で店主がお茶を詰めています。
「おーーい、おっはようさんっ!」
「・・・・・・・?
おーーー! なんじゃ、帰って来たんか。
奥で待っとってくれ、配達してくるけ、7分で戻る」
「ええよ、7分ね」
奥には書棚と6角形の囲炉裏風のカウンターがあります。
戻って来るや、菓子器に和菓子が盛られ、
香りのよいお煎茶で一服よばれます。
6年ぶりですが、昨日も来たような感覚。
シャッターが開いていないので、暗い店内。
話題は、世間話ではなく陶芸の話で話がはずみます。
こういう話のできる人、周囲にいなくなりました。
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「ところで今日の予定は決まっとるんか?」
「10時から12時まで、山波の森迫君のとこに行って、
いちじく食べて、いちじく畑を見せてもらうことになっとる」
「ほうか、とう柿(いちじくのこと)、好きじゃったのぅ。
荷物はこけー(ここへ)置いとけ、送ってったらぁ。
家はどこか知っとるんか」
「山波。山波のJAで待ち合わせしとるんよ」。
長男智弘さん出勤。
わたしのカメラのバッテリーが切れたので智弘さんの
カメラを借りていちじくを撮りに行きます。
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山波のJAに着くや、真ちゃんの車も到着。
車から降りてきた真ちゃん「おう!」「元気そうじゃね」
挨拶はこれでおわり。
10数年ぶりか、いや、もっとか、
真ちゃんとも、昨日まで会ってた感じ。
高校の同級生、森迫真一くん
通称、真ちゃん。
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尾道特有の細い坂道を車で登ります。
「ちょっと家で食うてから、畑行こうや」と真ちゃん。
「あ、うれしいうれしい!」
下が、尾道のいちじくです。
粉を吹いたような皮、きれいでしょう?
「種類は「蓬莱柿(ほうらいし)いうんよ」。
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長い間、食べたかった尾道のいちじくです。
収穫時期はお盆後から9月末まで位だそう。
もうそろそろ終盤とか。粒も小粒になっています。
さて、いただきます。
皮が薄いのですが、もぎたてなのですーーっとむけます。
半分に割りますね。
数年前の全国農業新聞に、尾道のいちじくの味が日本一と
いう記事がありましたが、
これが尾道のいちじくです。
「真ちゃんおいしいねぇ、甘ったるうのうて。
もぎたてのせいか、さわやかだわ」
「先月じゃったら、もちーと(もっと)うまいんじゃけどのぅ・・・。
今年は雨が,よぅ降ったし、しかもこの間の台風でやられて
台風以降、今年はよーない。雨にあたると商品にならんのよ。
たまらんで、ほんま」。
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畑に着きました。
小山のような畑。下はいちじく畑で、上のほうは八朔。
「見てみ!上向いとるやつ、横向き、下向き、向きが色々じゃろ。
同じじゃないんよ。
雨が降って商品としてダメになるんは上を向いとるやつ。
ほれ、左のこれ。こりゃあ雨がふりゃ、雨をもろに受ける。
今九州の方に来よる台風が、こっちに来たら確実にダメになる。
樹は接木で増やすんじゃが、ここに細い枝を挿すんよ」。
「へーー、小さい穴じゃね」
「ほうよ、こんくらい細い枝挿すんよ」。
「これは接木して3年。
なんぼかなっとろう?いちじくは、3年目から実をつけるんよ」。
あちこちに、にらが自生しています。
「春は、葉が、もちーと幅があって元気ながのぅ、
だんだん、こぎゃあに細うなる」。
しかし、地面はふわふわふかふか。
1歩1歩踏みしめて歩かないと倒れそう。
しかもさわると温かい。
「すごいふかふかの土じゃね。何入れとるん?」
「そりゃ、わしなりに努力しとるで。
全部は言われんのう、ヒミツじゃ(笑)」
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真ちゃんは、東京で学生生活の後、広島マツダで営業マン
として働き、退職後、実家の農業を継ぎました。
学生時代、同級生男子の多くが真ちゃんのアパートを訪れ、
真ちゃん手づくりのごはんを食べたりしてました。
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「退職して農業やってみてわかったけどのぅ。
農業は趣味なら楽しい、ほいじゃが農業で食うていくんは、
ほんま厳しい。順天の日ばーじゃないけのぅ。
何ヶ月もかかって世話して育てたもんが全部収穫できるわけ
じゃない、それがつらいわのぅ。
特にいちじくは軟(やわ)いけ、台風じゃ、雨じゃで、カンタンに
落下したり腐っていくけ。
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真ちゃんの車の窓から見る、右手の尾道と左手の向島(むか
いしま)。向島の海岸べりには、数社の造船所が軒を並べて
います。湖みたいでしょう?
今川茶舗に到着。12時です。
シャッターも開き、国旗がゆれてます。
今川茶舗は、昔から、祝日にはかならず国旗を立てます。
白い車の後ろには明治時代からの、今川家の蔵があります。
敬老会のボランティアから帰ってきた奥さんもいますね。
「いま、帰ってきたんですよ。
お昼、2人でなにか尾道らしいもの食べに行ったら?」と奥さん。
あーーでもない、こーーでもない、の結果、
おそばやさん「そば鴻」に。
大阪のこんぶやさん土居さんのお知り合いです。
「だしは、すべて土居さんおすすめのもので取っています」と
ご主人。
今川先輩は
「一応言うときます。
尾道の麺ゆうたら、うどん。
そばは食わんけ、わしは、そばの味はわからん。
そばはわからんが、だしはわかる」。
「どれにしよう・・・」
「麺はだしじゃ。ごちゃごちゃ色んな具が入ったんは嫌いじゃ。
具の味がだしに混じってだしの味がわからんけ。
一番、具の少ないんがええ」
「同感!」
というわけで、こちらを。
3種のおだしの味、しっかり味わえました。
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そば鴻さんを後にして、
今川先輩は、
「おかしなもん使うてないいうことが、わかるだしじゃった。
天然のだしは、あとに残らん、あとくちがええ」
わたしのだし取り教室の話など、一切話してないのですが、
西のちゃんとした人の、普通の会話です。
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ご挨拶したいところもありましたが、休日ですし、
時間の余裕がないため、次回伺うことに。
わたしの好きな今川茶舗のお茶、極上「青柳」と紅茶。
下は、長男・今川智広さん企画のイベントです。
今川家の蔵で催されます。