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「この映画は見逃さないでくださいね」
試写会のご案内をいただいた
日本有機農業研究会の方から、
そう、念を押されていた作品でした。
<サブ・タイトル>
農薬や化学肥料による食物汚染が、
子供達の未来を脅かす。
すべての学校給食と、
高齢者の宅配給食を
オーガニックにしようと
フランスの小さな村が
立ち上がった。
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環境汚染、地球温暖化、農薬、化学肥料、
食品添加物などなど、多くの問題を
食の観点から指摘したドキュメンタリー映画です。
ドキュメンタリーですから、事実です。
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農業のあり方と食生活。
切り口はいくつもありましたが、
料理をするわたしは、
こどもたちがオーガニックの給食を
食べ続けていくことで
食への意識が高まり、
変化していく過程を楽しみました。
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南フランス・ガール県
バルジャック村の小学校では、
オーガニック給食を導入。
と同時に
こどもたちに農業体験をさせるべく、
校庭に畑をつくり野菜づくりを指導していきます。
給食の厨房では、
地元で獲れたオーガニックの野菜を愛しむように扱い、
料理をしていく調理師。
料理を食卓に配膳するたび、
家庭における母と子のように、
こどもたちの顔や料理の反応を確かめ、
問いかけます。
「味はどう?」と。
率直に感想を述べるこどもたち。
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やがて、野菜が育ち、
こどもたちは収穫し、厨房に運びます。
調理師は、その野菜を使って料理をつくり食卓に。
こどもたちに訊きます。
「どう?」
こどもたちは、
自分たちが育てた野菜で作られた料理を
新鮮な思いで食べます。
しかもおいしい。
次第に、
こどもたちの味に対する反応が、くっきりしてきます。
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1年後、こどもたちの嗜好は変わり、
すっかりオーガニックに目覚めてきました。
ただ1人、
フライドポテトが好物のフィリップという子は、
オーガニックの野菜の味がわからず、
「どう?」と訊かれても無言。
目が泳いでいます。
しかし、その後、給食を食べ続けるうち、
発言するようになったといいます。
こどもの好みが変われば、親も変わります。
親たちも、こどもに影響されてオーガニックに目覚め、
「すべてオーガニック、というわけにはいかないけど」
と食卓を変えていきます。
食料を直接購買する親の意識が高まり変われば、
企業も変わり、農業のあり方も変わらざるを得ないでしょう。
それが今、真剣に立ち向かうべき「未来の食卓」です。
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多くの深刻な問題をまとめた映画です。
しかし、さすがフランス映画。
美しい画面構成で問題を提示しています。
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「未来の食卓」を観た翌日。
隣の駅・千歳船橋にある「岩手屋」という
岩手県のアンテナショップでのこと。
70代前半と思われる女性が
「こんなところに岩手の店があったなんて」
と、岩手なまりの言葉で入ってきました。
その方が野菜を手にとり
「野菜も岩手から?うれしいね」
店主の若い女性(30代)
「はい、うちの野菜は全部、岩手の無農薬です」
その女性
「わたしの実家は岩手で手広くやってた農家。
そんなことができるはずがない。
減農薬ならわかるけど、無農薬だなんて
いい加減なことをいうんじゃないの」
店主
「わたしも実家は岩手の農家です。
うちは無農薬で野菜作ってます。
今は、土に手をかけて土を改良していけばできるんです」
「いや、絶対使ってる!不可能だ。
それでなきゃ農家は食べていけない」
「使ってません!
それでなきゃ、わたしこの店やってません」
土をつくればやれます」
真剣にやりあう2人。
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映画では、有機栽培農家と一般農家との
対話のシーンがありました。
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こんな偶然に出会うなんて・・・。
千歳船橋版の「未来の食卓」の1シーンでした。
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「未来の食卓」8月上旬より一般公開。
2008年フランス映画・112分
銀座シネ・スイッチ
渋谷アップリンク
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