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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日本経済どうなっている 実体経済低迷 お金滞留

2019-02-10 16:20:13 | 経済・産業・中小企業対策など
日本経済どうなっている 実体経済低迷 お金滞留
“アベノミクスによる好景気”のウソも、統計不正の発覚で暴かれつつあります。昨年末は株価も暴落。日本の経済はどうなっているの?消費税を増税したらどうなってしまうの?暮らしと経済研究室の山家悠紀夫さんに聞きました。(手島陽子)

―クリスマスにアメリカの株価とともに、日本の株が暴落しました。年始には日本の株が急上昇し、乱高下しています。どうしてそういうことが起きるのですか?
山家
 株価は景気のバロメーターのように見られていますが、日本の株価は実体経済とかけ離れた高さになっています。
国の経済規模を示す指標である国内総生産(GDP)は、アベノミクスが始まる前年の2012年から17年の5年間で実質1・06倍になりました。ところが、株価は2・18倍に達するのです(グラフ1)。GDPがわずかしか伸びないのに、株価は2倍以上も伸びている。そのわけは、安倍政権が恣意的につくった株価だからです。




噂だけで暴落
株価の上昇はアベノミクスの「異次元の金融緩和」(注1)がつくりだしたバブルです。足腰の部分である実体経済を反映したものではありません。この状態では、たとえば「金融緩和をやめるらしい」と噂されただけで、株が暴落することも起こり得ます。アメリカでも、「トランプ大統領が中央銀行の総裁を代える」という噂だけで暴落しました。
加えて、この間「日本の株式市場は5頭のクジラが現れる」といわれてきました。
5頭のクジラとは、日本銀行(日銀)、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、共済の五つの公的機関です(図1)。株価が下がり始めると、巨大な五つの公的機関が買い支えてきました。恣意的に株価をつり上げておいて、株価が高いことがアベノミクスの成功の証しのようにいってきたわけです。
この間、日銀は国債(注2)を大量に買いこんできました。すると、買ったお金が日銀から銀行に行きますが、銀行は貸し出す相手がいないので、銀行にため込まれてしまいます。
これ以上下げられないほどの超低金利で、企業が借金しやすくしていますが、消費が伸びないと、企業は投資しない。実体経済が思わしくないから、お金は行き場を失っている状態です。(図2)



(注1)異次元の金融緩和 「アベノミクスの第1の矢」として日銀が民間銀行の保有する国債などを買い上げ、大量に資金を供給すること。
(注2)国債 国家が国民や企業などから借金する際に発行する債券。




―金利と国債は関係があるのですか?
山家
 通常、金利は物価を反映して決まります。物価は今、年1%ぐらい上がっています。本来なら金利は1%ぐらいになるはずで、国債の金利も上がるはずです。それを異次元緩和政策の下で、日銀は国債の金利を0・1%程度に抑えています。
緩和政策をやめると、新しい国債の金利は1%ぐらいに上がるはずです。すると、金利0・1%の古い国債は売れなくなり、値下げせざるをえなくなる。そうなると、古い国債を保有している企業や銀行は損を出すことになります。

庶民に大打撃
―仮に、アベノミクスの金融緩和をずっと続けたらどうなりますか?
山家
 円安が進む可能性があります。今のところ、円の目立った下落は起きていませんが、これはアメリカやEUの経済状況がより不安定に見えるので、円を買う投資家がいるためです。
もし、欧米諸国の経済がもっと安定したり、日本の経済が危ういと見られれば、投資家が逃げはじめ、円安が大きく進む可能性があります。円が下落すれば、石油などの輸入品が大きく値上がりし、庶民の暮らしには大打撃となります。
ジンバブエやベネズエラでは、政府の失政やアメリカの経済制裁などが原因で、数万%の物価上昇率というハイパーインフレが起きていますね。日本は、そこまで極端なことは起きないでしょうが、特に低所得者は一層の困窮状態になります。
今でさえ、海外で株価の暴落が起きたときには、何も打つ手がありません。株価が暴落した場合、金利を下げるのが一般的な対処法です。欧米は、昨年まで低金利政策をおこなっていたのですが、リスクに対応するために金利を上げる方向に転換しました。日本だけが超低金利を続けていて、これ以上金利を下げるわけにはいかず、株価下落が起こっても打つ手がない状態なのです。
こんなどうしようもない金融緩和政策は早くやめるべきですが、やめると噂が立っただけで投資家が逃げて株価が暴落しかねないので、安倍政権はやめられないのです。


消費税増税に替わる道は
内部留保 還流の方策を

―こんな時に、消費税を増税したらどうなるのでしょう。
山家
 消費税増税はますます消費を冷え込ませ、生活困窮者が増大します。
収入が少ない層20%ほどは今でも食べるのに精いっぱいです。貯蓄を取り崩し、食費にあてています。医療費を抑え、教育費を猛烈に抑えて、やっと生活しています。
政府は、食品を軽減税率にするといっています。店内飲食は10%で、持ち帰りや出前は8%にするといいます。さらに、ポイント還元を導入するという。これは、カード決済の人だけが得をする仕組みです。ポイントを読み取る機械がない店やコンビニなどは対象外にするとか、どんどん複雑怪奇になっています。
生活必需品には容赦なく税金をかけ、消費税増税で景気が悪くなるのを防ぐため、家や自動車など、高額の購入は還付するというのも、おかしな話です。こんな混乱必至の制度なら、増税しないのが一番です。
一方、日本の財政が厳しくなっているのは確かです。それも安倍首相の責任が大きい。大企業のために法人税を引き下げ、税収に大穴を開けました。一方、トランプ大統領の要求のままに戦闘機などを買ったり、不要不急の公共事業などに税金を無駄遣いしているからです。


優遇なくせば
税収を増やすために、法人税や株の配当などにもっと税金をかけることは十分可能です。大企業の利益は、12年と比べて1・7倍です。企業は、さまざまな形で税金を減免されているので、優遇税制をなくすことも必要です。
また、所得税の最高税率が45%なのにたいして、配当などは20%です。働いて得た給与所得への税金が最高45%なのに、働かずに得た株への税金が20%というのは明らかに不公平ですよね。
税金は、儲けたところからとるべきです。給与も株の配当も、すべての収入を合計して、収入に応じて税率を決める総合課税方式にしただけでも、2兆~3兆円の財源ができますよ。
大切なのは、株価が暴落しても動じない足腰の強い実体経済にすることです。消費税増税は、それとまったく逆なのです。

―経済をよい方向に転換する方法は?
山家
 大企業は内部留保(注3)をため込んでいるので、そうした余剰金が社会に回る方策を考えることが必要です。法人税の増税などで内部留保を吐き出させることも一つです。さらに、賃上げや下請け企業への単価の引き上げも必要です。
この間、政府は経団連に給与を引き上げるよう申し入れてきました。ところが、現実には大企業の正社員の給料がわずかに上がっただけで、莫大な利益が還元されたわけではありません。17年までの5年間で、働く世帯の実質収入はマイナス2・1%と減少しています。統計不正が発覚して、厚生労働省も実質収入がマイナスだと認めました。正しい値で計算すれば、実質収入の大幅下落が明らかになるでしょう。


(注3)内部留保 利益から税金や支払い配当金などを引いた残りの分で、企業にため込まれたもの。



賃金落ち込み
そもそも、日本の経済の停滞が始まったのは1998年、賃金の下落がはじまった年からです(グラフ2)。95年から97年まで、実質2%前後の成長を続けていた日本経済が、98年にマイナス成長に落ち込みました。その背景には賃金の落ち込みがあり、それを反映しての民間消費の落ち込みがあります。結果としてGDPも落ち込むことになりました。ところが、内部留保はどんどん増え続けたのです。
労働運動総合研究所の調査によると、昨年の内部留保の残高は667・3兆円に上ります。その大半が海外への投資に回っています。同調査では、サービス残業をなくすなど不払い労働の根絶で、約9兆1000億円、非正規雇用を安定した正規雇用に切り替えれば9兆700億円を吐き出させられるとしています。
時給を1500円くらいにした国やアメリカの州がいくつもあります。日本の最低賃金は東京でさえ1000円に達していません。先進国でも最低クラスです。
労働組合とともに、春闘で賃金を上げるよう声をあげ、世論をつくることが大切です。
それと同時に、政治の役割として、最低賃金を欧米並みの1500円に引き上げることです。結果として、実体経済が底上げされ、足腰が強くなる―それがアベノミクスの混迷にたいする一番確実な処方せんではないでしょうか。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年2月9日付掲載


2014年の8%への消費税増税も日本経済を冷え込ませていますが、そもそもは1998年からの賃金の落ち込み、そして1997年の消費税3%から5%への増税があったこと。
合法的に内部留保を吐き出させる方策が必要ってことです。
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