「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。
「日本よい国」の時代 愛国者たちの暗黒郷② 雑誌広告は戦争一色
早川タダノリ
ごく最近になって、書店の棚に「反中・反韓・反朝鮮」をうたう「愛国」本があふれていることがようやく問題視されはじめた。安倍晋三首相にしてから『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』などという恥ずかしいタイトルの対談本を刊行しているほどである。こんな本が「枯れ木も山の賑わい」とばかりに書店の本棚を占領しているのは、まさに安倍式「クール・ジャパン」のお寒い光景である。
もちろん、本が売れなくなっている中で、売れる本ならなんでも並べざるをえない書店の窮地もわかるが、そんなことをやっているとこうなりますよという実例が、この東京朝日新聞(現在の朝日新聞)1942年1月25日の2面雑誌広告(写真)だ。
「売れるから」
ここに並んでいるのはいずれも当時の総合論壇誌で、今も残っているのは『文芸春秋』『中央公論』の2誌だけだ。いずれも特集は「大東亜戦争」一色。開戦1カ月目なので、マスコミとしては当然なのだろうが、短い期間によくもこれだけの企画記事をそろえたものだと感心してしまう。
もちろん37年の「支那事変」勃発以降、各誌とも戦争モノの記事が特集されていたわけなので、現在のわれわれが考えるほど困難なことではなかったはずだ。
ともあれ、こうした記事が並ぶ最大の理由は「売れるから」だった。政府当局による指導と統制があったとはいえ、実際に企画を立て・原稿を依頼し・レイアウトしたのは出版社の編集者たちにほかならない。
東京朝日新聞に掲載された雑誌広告(1942年1月25日付)
対抗言論期待
もちろん、当局の気に入らない記事が続けば、この広告中にある『改造』と『中央公論』のように編集者が逮捕され、44年の段階で休刊を強制されることもあった。積極的な戦争協力と出版資本としての生き残り策とは表裏一体の関係にあり、その双方の要素が椙乗効果を生み出して、戦争末期になればなるほど神がかり的なトンデモ企画が践雇するようになっていく。
ともあれ「売れるんだからしょうがない」とあきらめていると、この広告のようにどの雑誌を買っても「大東亜・新しき構想」「東亜共栄圏の確立」「大東亜戦争の前進段階」「大東亜の建設」「大東亜戦争の構想」「大東亜経営の具体策」といった見出しが並ぶ―ということになりかねない。対抗言論の奮闘に期待したい。
(はやかわ・ただのり編集者)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月18日付掲載
雑誌の広告に、これだけ「大東亜共栄圏」など国の政策をずらりと並ぶのは異常ですね。
「売れるから」と言うのは、情報が意図的に操作されたからの事。現在ではそうではないぞ!
変貌する経済 財界の策動⑤ 改憲へ 旗振り役つとめる
2013年2月22日、訪米した安倍晋三首相はオバマ米大統領とホワイトハウスで首脳会談を行いました。この会談の主要なテーマは「日米同盟の強化」でした。
「認識においても、そして具体的な政策においても、方向性においても、完全に一致することができました。日米同盟の信頼、そして強い絆は完全に復活した、と自信をもって宣言したい」
記者会見の席上、緊張感をみなぎらせた安倍首相は、硬い表情を崩さずに発言。椅子に深く腰を下ろしつつも、組んだ手の指は、小刻みに動いていました。
首脳会談の中で安倍首相は、「集団的自衛権についての検討を開始し、これらの取り組みを同盟強化に役立つものにしていく」との考えをオバマ米大統領に説明。同大統領は、「同盟強化に向けた取り組みを歓迎」しました。首脳会談後には、環太平洋連携協定(TPP)の推進をうたった「日米の共同声明」も発表されました。
「憲法が足枷に」
日米首脳会談の2カ月前のこと。財界中枢の人物は、「安倍首相の訪米土産は、集団的自衛権の行使の問題とTPPになる」と語っていました。
経団連はすでに、05年1月18日に集団的自衛権行使容認を求める提言(「わが国の基本問題を考える」) を発表していました。そこでは、次のように明記されています。
「集団的自衛権が行使できないということは、わが国として同盟国への支援活動が否定されていることになり、国際社会から信頼・尊敬される国家の実現に向けた足枷(かせ)となっている。今後、わが国が、世界の平和・安定に主体的に関わっていくためには、必要な場合には、自衛隊によるこうした活動が可能となるような体制を整備しておく必要がある。従って、集団的自衛権に関しては、わが国の国益や国際平和の安定のために行使できる旨を、憲法上明らかにすべきである」
当時、財界団体は相次いで、集団的自衛権の行使容認と改憲を求める提言を発表していました。先駆けたのは経済同友会でした。03年4月に「憲法問題調査会意見書を発表。「集団的自衛権の行使に関する政府解釈を改め、適正な目的と範囲を踏まえて『自衛権』の行使についての枠組みを固めること」としていました。
日本商工会議所は、04年12月に「憲法改正についての意見」の「中間取りまとめ」を発表。その後、05年6月に「憲法問題に関する懇談会報告書」を取りまとめました。
05年1月の財界3団体の新年共同記者会見では、改憲を求めた発言が財界首脳から相次いで出されました。
オバマ米大統領と話をする安倍首相=2013年2月22日(ホワイトハウスのHPから)
異論を封じ込め
経済同友会の北城恪太郎代表幹事(肩書はいずれも当時)は、「9条など、(現憲法の)矛盾点をまず改正すべきだ」と強調。経団連の奥田碩(ひろし)会長は、「憲法改正の問題については、外交、安全保障も含めて検討している」と発言していました。日本商工会議所の山口信夫会頭は、9条を「全面改正すべき」だとした「憲法改正についての意見」(04年12月の提言)にふれ、「これ以上のいい案がほかの団体、政府とか政党から出てくることを期待している」と改憲への旗を振っていました。
経団連が改憲提言を発表したその年は、第2次世界大戦が終結して60周年の節目の年でした。新年賀詞交換会では、ある大物財界人からは「改憲をいっている連中は、なにも考えちゃいない。ムードにのってやっているだけ」と批判。「9条の意味を真剣に考えないといけない」との声が聞かれました。
しかし、異論を唱える財界人を押さえ込むかのように、財界首脳たちは、戦後の日本の「国のかたち」を問題にして、大きくかじをきっていったのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月18日付掲載
財界は早い段階から憲法9条などの改憲を求めていたんですね。財界人でも戦争体験者などからは憲法9条の意味を強調したが、財界全体としては改憲の方向に大きく舵を切った。政界と同じような構造ですね。
変貌する経済 財界の策動④ 集団的自衛権 内から圧力
安倍晋三政権は、憲法9条を改変して米国とともに海外で戦闘行動ができるよう集団的自衛権行使容認に向けた策動を続けています。
安倍政権の暴走を加速させる発言が米国側から相次いでいます。
背中を押す米国
5月16日、自民党本部を訪れたキャロライン・ケネディ駐日米大使は、高村正彦副総裁と会談し、集団的自衛権行使容認について「日本政府が検討することはとてもよいことだ。評価している」と安倍政権の背中を押しました。
同月27日に首相官邸を訪れた米海軍制服組トップのグリナート作戦部長も「集団的自衛権の行使にかかわる憲法解釈の見直しの議論を歓迎し、支持する」としました。同部長は、ワシントンのシンクタンクでの講演(同月19日)の中で「将来的に北大西洋条約機構(NATO)の同盟国と同じように作戦を実施することも考えるべきである」と強調。日本の自衛隊がNATOと同じような米軍への軍事支援を行うことに期待感を示しました。
同月31日にはヘーゲル米国防長官もシンガポールで開かれた第13回アジア安全保障会議の演説で、集団的自衛権行使容認に向けた安倍政権について「努力を支持する」と表明しました。
「アメリカは、日本にある程度の集団的自衛権を行使してほしい、というのは長い間ある。ただ、日本は主権国家ですから、圧力をかけたということはできないけれど、長く安全保障に携わっているものにとっては常識だ」。高村自民党副総裁が8日のNHK「日曜討論」でのぞかせた本音は、集団的自衛権行使容認が、米国側の長年の要求だったことを改めて示しました。
「海外で戦争する国づくりに賛成?反対?」と語りかけて宣伝する日本民主青年同盟の同盟員=5月23日、東京・渋谷駅前
同友会の「提言」
集団的自衛権行使容認への“内からの圧力”は、財界から加えられています。
経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事は、5月13日の記者会見で「基本的には、憲法改正はもちうん望ましい」と、改憲賛成論を披歴。その上で、「日本として、限定された状況とシビリアン・コントロールや国会への事前承認等さまざまなガバナンスは守りながらも、集団的自衛権(の行使)を認めていく方向については、本会としても容認している」と発言しました。
経済同友会は2013年4月5日、「『実行可能』な安全保障の再構築」と題した提言を発表し、安倍政権に対し「政治的決断によって政府解釈を変更し、集団的自衛権行使を認めるべきである」と迫りました。
提言は、日本をとりまく経済・政治情勢について次のように指摘します。
「戦後60年余を経て、日本は各国との相互依存関係を世界中に拡大し、その人材や資本、資産、権益もあらゆる地域に広がっている。いわば、日本の国益は、日本固有の領土・領海と国民の安全のみではなく、地域、世界の安定と分かちがたく結びついているのであり、この流れはグローバル化の中で、一層進展していくことだろう」
「米国の同盟国としての責任を果たすためには、わが国の安全保障体制の刷新に今すぐ取り組むことが不可欠である」
戦後、米国の世界戦略のもとで多国籍企業化を進めてきた日本資本主義。その中核をなす財界は、戦後の憲法体系を破壊する国内最大の推進勢力です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月17日付掲載
経済団体である経団連や同友会が、日本の外交、それも軍事面に口を出し始めている。
多国籍企業化している日本の大企業は、軍事面でもアメリカの戦略に沿う事で利益を上げようという事でしょうか。
変貌する経済 財界の策動③ 人件費切り下げ競争加速
2008年9月のリーマン・ショックは、世界経済の危機に先進国だけでは対処できないことを劇的に示し、途上国も含めたG20体制時代の幕を開けました。同年11月に開かれた初回のワシントン会議は、金融分野での甘い規制が歴史的な経済危機へつながったとし、「カジノ資本主義」の害悪を認めていました。
その後、各国中央銀行による歴史的金融緩和と各国政府による財政膨張政策に支えられ、世界経済はかろうじて緩やかな回復基調を示しています。しかし、肝心の雇用情勢は改善されていません。13年9月にロシアのサンクトペテルブルクで開催されたG20首脳会議で採択された首脳宣言は、雇用問題が最優先課題だとの認識を示し、次のように指摘しました。
「生産的でより質の高い雇用を創出することは、強固で持続可能かつ均衡ある成長、貧困削減および社会的一体性の向上を目指す各国の政策の核である」
そして、「失業、不完全雇用および非正規雇用を持続的に減少させるとともに、より高い雇用水準の確保に貢献する」ことが重要だと強調しました。
規制見直し狙う
「質の高い雇用の創出」「非正規雇用の持続的減少」という首脳会議が強調した「最優先課題」に背を向けているのが日本の安倍晋三政権と財界です。
5月28日に開かれた産業競争力会議課題別会合に出席した榊原定征(さかきばら・さだゆき)東レ会長は、「労働時間制度の新たな選択肢をつくる」として、労働時間規制の見直しを求めました。この会合の直前、経団連の米倉弘昌会長(当時)に同行して訪中していた榊原会長は会合出席のため帰国していました。
榊原会長が同会合に配布した資料には、経団連が1月に発表した「経営労働政策委員会報告」の抜粋が示されていました。
「働き方そのものの変化に対応した時間管理を行うには、法律で画一的に律するのではなく、労使自治を重視した労働時間法制に見直すべきである」
財界の狙いは、労働基準法で定められた労働時間規制を死文化させることで、企業側の残業代支払い義務を取り払おうというものです。
労働時間規制をなくし「成果で評価」する職種の対象について、厚生労働省は、「高度専門職」に限定する考えを同会合で示しました。
働く者の切実な要求をかかげて行進するメーデー参加者=5月1日、東京都渋谷区
G20宣言に逆行
これにかみついたのが榊原会長です。「一握りの人だけに適用しても意味がない」と発言。「研究や技術、マーケティングなど、非常に幅広い分野において、新たな働き方が求められている。ぜひその適用範囲を広げていただきたい」と強調しました。
榊原会長は、「私たちが言っているのは、少なくとも全労働者の10%ぐらいは適用を受けられるような、そういった対象職種を広げた形での労働時間制度にしてほしい」(9日の会見)と強調します。安倍内閣は、とりあえず年収1000万円以上の労働者に限定する考えですが、いったん労働時間規制を外した働き方を認めれば、今後どんどん広がり、「残業代ゼロ」と「過労死」がまん延する危険性があります。G20首脳宣言が求めた「質の高い雇用の創出」からのあからさまな逆行です。
経団連は、14年度の事業方針で、「柔軟な労働市場の構築による労働移動の円滑化を図る」ことも要求しています。「非正規雇用を持続的に減少」するとしたG20首脳宣言に反し、不安定雇用をいっそう拡大するものです。
安倍政権が財界の求めのままに日本の雇用破壊を進めれば、グローバル競争の中で多国籍企業が勝ち抜くことを狙いとした人件費切り下げの世界的な競争を激化させてしまいます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月14日付掲載
労働者の労働を「成果で評価」するという財界。聞こえは良いようだが、実際は「残業代ゼロ」。「生産性でより質の高い雇用」どころか、「劣悪な雇用」で逆に「生産性」を落とすものになります。
安倍内閣の野望 「残業代ゼロ」④ 「成果で評価」というけれど…
安倍晋三首相は、近くまとめる「成長戦略」で、「成果で評価される自由な働き方にふさわしい、労働時間制度の新たな選択肢を示す」といいます。制度の提案者である産業競争力会議の長谷川閑史氏(武田薬品社長)は、「時間ではなく成果で評価される働き方」「成果に応じた報酬を基本に据える新たな働き方」は働くもののニーズに応えるものだといいます
装い変えて
いったい「成果で評価される自由な働き方」とはどんな働き方でしょうか。さかんに新しさを強調していますが、1990年代中頃から大企業を中心に導入されてきた成果主義賃金制度を装いを変えて持ち出してきたものです。
成果主義賃金制度は、1993年に電機大手の富士通が導入して知られるようになりました。95年に当時の日経連が「新時代の日本的経営」で成果主義への転換を提唱したことをうけて、裁量労働制とのセットで急速に広がりました。
日本の賃金制度は、生計費、年齢・勤続年数に重きをおいた年功賃金といわれるものが中心でした。これを上司の人事考課による目標達成度で賃金を決める方式に転換しようというものです。
二つの大きなねらいがありました。ひとつは総額人件費の抑制です。もうひとつが「成果をあげれば賃金が上がる」という宣伝で労働者を競わせ、差別化し、個別支配をはかることです。結果は、賃金が上がるどころか、目標を達成するために長時間のただ働きがまん延し、メンタル障害が増え、職場の荒廃がすすみました。「がんばれば報われる」はずが「がんばっても報われない」ことが明らかになり、多くの企業が制度の廃止または見直しをせざるをえませんでした。
厚生労働省が2008年に出した「労働経済白書」は、成果主義賃金制度の拡大にふれて、「企業の対応は人件費抑制的な視点に傾きがちで、労働者の満足度は長期に低下」していると指摘しました。とくに賃金が低いことと、評価の納得性が確保されていない問題をあげ、企業の反省を求めました。政府でさえ是正を求めざるをえないほど弊害は大きいものでした。
安倍首相や長谷川氏は「成果で評価する」制度と簡単にいいますが、客観的でだれもが納得できる「評価」「査定」は実際には不可能です。たとえばある開発プロジェクトチームで、全員が夜なべして頑張って納期までに仕事を完了させたとします。しかし全員が同じ最高ランクに評価されるわけではありません。
「相対評価」はランクごとに割合が決まっていて、必ず下位にランクされる人が出ます。15%が最下位という企業もあります。最上位と最下位の報酬の差額が100万円以上という例もみられます。まったく同じように働き同じ成果でも、上司の主観による評価で差別され、賃金で大きな格差がつくのです。
帰宅するサラリーマン=東京都内
長時間労働
成果主義賃金制度は、企業による「評価」で労働者の賃金が決まるので、企業の支配力が圧倒的に強まります。長谷川氏がいうような「効率的に働けば短時間労働でも報酬確保」になるほど企業は甘くはありません。むしろ労働時間の適用除外を幸いに、際限ない長時間労働に追い込まれかねません。
4月22日の会議で榊原定征議員(東レ会長、6月3日に経団連会長に就任)が、企業側の本音を語っています。
「熾烈(しれつ)な国際競争の中で、日本企業の競争力を確保・向上させるためには、労働時間規制の適用除外は必要不可欠である」といい、具体的な企業側のニーズとして次のようにのべています。「国際業務における時差への対応、技術開発、顧客対応、あるいは新設の設備の立ち上げ、受注獲得時などで、1年間ぐらいの長期にわたって、集中的・波状的な対応が必要なケースが数多くある」
成果主義賃金と労働時間の適用除外が結びついたとき、労働者の働き方は劇的に悪化することは間違いありません。労働組合が組織の垣根を越え、世論を大きく高めて政府、財界のたくらみを阻止するたたかいの強化が急がれています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月18日付掲載
具体的な企業側のニーズとして、「国際業務における時差への対応、新設の設備立ち上げなどで1年間ぐらいの業務が集中する事がある」と。
僕が約30年前、日本のある主要な鉄鋼メーカーで派遣労働者として働いていた時の事。僕は働いた時間だけの賃金をもらっていましたが、鉄鋼メーカーの労働者は残業時間を○○時間までと足きりされていました。まさに、1年間余りのスパンで計画されたプラント開発でした。
「成果で評価」という賃金の別の形態でもありました。