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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

AIと産業④ ビジネスを優先する日本

2024-04-22 07:16:57 | 経済・産業・中小企業対策など
AIと産業④ ビジネスを優先する日本

桜美林大学教授 藤田実さん

生成AI(人工知能)の急激な普及を受けて欧州連合(EU)は3月、AIのリスクを4段階に分け、使用禁止や罰則を含む規制を重視した方針を決定しました。
日本では、政府のAI戦略会議の場でAIのあり方が議論され、2023年12月に「AI事業者ガイドライン案」が示されました。
同時に提出された「AI戦略会議の今後の課題(案)」では、「高度AIシステム(基盤モデル等)の開発やスタートアップ含めた幅広い組織に対する投資・環境整備などの競争力確保の道筋を検討すべきではないか」と競争力確保を強調。また「DX(デジタルトランスフォーメーション)と相まってAI導入を進め、中堅・中小企業等の生産性向上、人手不足解消等を進めることが重要ではないか」とAIの利用促進も提起しました。



AI戦略会議で発言する岸田首相(左から2人目)=2023年12月21日、首相官邸(首相官邸ホームページから)

EU規制に対し
ガイドライン案はAI開発者、AI提供者、AI利用者のそれぞれにリスクを認識し、対策を講じることが必要だというスタンスです。EUがリスクに応じて禁止事項や罰則を規定して厳格に規制したのに対し、ガイドライン案は「過度な対策」はAI活用を阻害し、そこから得られるはずの「便益を阻害してしまう」として、あくまで事業者による自主的な取り組みを促すことにとどまっています。AIの開発や利活用が日本にとってビジネスチャンスで、競争力確保に資するものだというビジネス優先の立場が示されています。
政府の姿勢を受け、情報通信技術(ICT)企業やスタートアップ企業は、日本向けの生成AIの開発や生成AIを組み込んだサービス展開に乗り出し、GAFAM(ガーファム=グーグル、アマゾン、フェイスブック〈現・メタ〉、アップル、マイクロソフト)も交えて日本市場同けのサービス競争を展開しています。
米国発の生成AIが基本的には英語圏での利活用を中心にしており、日本語での利活用が進んでいない事情もあります。
経産省が所管する産業技術総合研究所は、日本語能力に優れた大規模言語モデルを公開し、高度な日本語処理が必要な生成AIの利活用を推進。ソフトバンクは国産の大規模言語モデルを開発する会社の設立を発表しました。NTTやICT分野のスタートアップ企業は生成AIを利活用するサービス展開に乗り出しています。

問題深刻化恐れ
生成AIの開発や利活用をめぐる企業間競争が激化する一方で、産業分野での規制は遅れています。特定企業のサービスを導入することで生じる「ロックイン(囲い込み)効果」により、他の企業のサービスへの乗り換えが難しくなり、独占が生じやすくなります。
現在、日本では、GAFAMが市場を独占し、ビジネスでも個人の生活でも大きな問題が生じているのに規制ができていない状況があります。ガイドライン案は、こうした問題を深刻化させる危険性を放置することになりかねません。
急速に進む生成AIの開発や利活用に対しては、産業政策上も直接的な規制が必要になっているのでないでしょうか。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月19日付掲載


ガイドライン案はAI開発者、AI提供者、AI利用者のそれぞれにリスクを認識し、対策を講じることが必要だというスタンス。EUがリスクに応じて禁止事項や罰則を規定して厳格に規制したのに対し、ガイドライン案は「過度な対策」はAI活用を阻害し、そこから得られるはずの「便益を阻害してしまう」として、あくまで事業者による自主的な取り組みを促すことに。AIの開発や利活用が日本にとってビジネスチャンスで、競争力確保に資するものだというビジネス優先の立場が。
経産省が所管する産業技術総合研究所は、日本語能力に優れた大規模言語モデルを公開し、高度な日本語処理が必要な生成AIの利活用を推進。

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