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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く② 「無償のケア労働」に着目

2024-09-05 07:11:09 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く② 「無償のケア労働」に着目

―フェミニスト経済学にはどんな特徴がありますか?
フェミニスト経済学について、女性の権利伸長や女性の問題だけを要求している特殊な経済学のように見られることがあります。女性が抑圧され、権利が制約されている現実があるからです。
しかし、これはフェミニスト経済学の一面しか捉えていません。なぜなら、抑圧からの解放、権利の保障は女性に限らず、男性、子ども、高齢者など万人にとって必要だからです。フェミニズムの視点とは一人ひとりの権利を保障することにより、万人にとっての「ウェルビーイング(暮らしぶりの良さ)」の向上を目指すものです。

育児時間は3倍
さまざまな学派の経済学と比較して、フェミニスト経済学を特徴づけるのが、アンペイドワーク(無償労働)です。無償労働は家事全般を指します。そのうち育児、介護などが無償のケア労働です。
例えば、6歳未満の子を持つ夫婦(共働き)の場合、妻の育児時間は、夫の3倍です。家電の進歩に伴い洗濯や掃除の家事時間は減少していますが、ケア時間は逆に増えています。女性は睡眠や余暇などの時間を削って育児などのケア労働にあてている実態があります。
一方の日本人男性の長時間労働の傾向は変わらず、無償のケア労働を担う女性による支えの上に、男性中心の経済社会が存在しています。




―フェミニスト経済学は、主流の経済学の何を問題視しているのでしょうか?

合理的像を描く

主流派経済学(近代経済学)は「個々人が合理的選択をした結果の集積が社会だ」とみなし(方法論的個人主義)、常に合理的、選択的に能動する人間像(合理的経済人)を描きだします。
合理的経済人のモデルは、すでに十分に成長した健康的で若々しく市場に生登場する男性です。子ども・老年期は存在せず、誰にも依存しない代わりに、他者の生存に責任を負わず、市場で自己の利益を最大化する人間像です。無償のケア労働を女性に担わせた経済社会に極めて適合的なモデルだと言えます。
これに対し、フェミニスト経済学は「関係性のなかにある個人」を措定しました。本来人間は、依存状態にある子どもとして生まれ、家族やコミュニティー間の中で守られながら成熟した人間に成育し、老年期にも他者からケアを受ける存在です。また社会、文化の影響を受け、感情や嗜好(しこう)を形成し、自然界にも依存する存在です。
こうした人間存在のウェルビーイングの向上を目指すため、フェミニスト経済学は、従来の市場経済のみならずインフォーマル(非公式)経済や市場以外の領域も分析の対象に含めます。フェミニスト経済学では、人間の必要(ニーズ)を満たす財やサービスがいかに提供され、一人ひとりに届くかという視点を重視しています。
万人のウェルビーイングの向上に役立つ、財やサービスの生産、提供、調達、準備、保管(プロビジョニング)の遂行が経済的な「成功」「成長」に位置付けられるのです。プロビジョニングの担い手は、世帯、国家、市場、地域コミュニティーの四つの領域が想定されています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月28日付掲載


さまざまな学派の経済学と比較して、フェミニスト経済学を特徴づけるのが、アンペイドワーク(無償労働)です。無償労働は家事全般を指します。そのうち育児、介護などが無償のケア労働。
フェミニスト経済学では、人間の必要(ニーズ)を満たす財やサービスがいかに提供され、一人ひとりに届くかという視点を重視。
万人のウェルビーイングの向上に役立つ、財やサービスの生産、提供、調達、準備、保管(プロビジョニング)の遂行が経済的な「成功」「成長」に位置付けられるのです。プロビジョニングの担い手は、世帯、国家、市場、地域コミュニティーの四つの領域が想定。
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