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グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く⑤ マクロ経済政策にも偏見

2024-09-08 07:15:36 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く⑤ マクロ経済政策にも偏見

―フェミニスト経済学はマクロ経済学やマクロ経済政策をどのように見ますか?
マクロ経済学は一国経済全体に関わる指標を扱います。国内総生産(GDP)、GDPの成長率、国際収支、財政収支、失業率、金利などの経済指標は、一見ジェンダー中立であるかの、ように見えます。しかし実際にはそうではありません。

より不平等助長
フェミニスト経済学者が最初にマクロ経済政策とジェンダーの関係に強い関心を抱いたのは1980年代以降、開発途上国における公的債務の削減を目的に国際通貨基金(IMF)や世界銀行が導入した構造調整政策がジェンダー不平等を拡大、助長していたことでした。
構造調整政策は各国がIMFや世界銀行から金融支援を受ける際に強要される一連の政策パッケージです。貿易・金融の自由化・通貨切り下げ、公務員賃金の引き下げのほか、公的社会ケアサービス部門の民営化や補助金の削減など公的支出の削減を求めました。
無償のケア労働や自家消費用の食料生産、水くみなどへの負担で女性の教育や労働市場への参加の機会が制限されていた途上国では、人々の生活はさらに貧しくなり、特に女性への影響は甚大でした。
アジア通貨危機では、金融機関や企業の経営破綻が相次ぐなか、大量の失業が発生しました。主な稼ぎ手であった男性の失業や雇用不安が生じる一方で、家計のために女性が新規就業や労働時間の増加という形で労働市場に参加する傾向が見られました。とりわけ、インフォーマル部門の零細事業に女性労働者が流入し、きわめて低い報酬と適正な労働基準が保障されない待遇を余儀なくされていたのです。



コロナ禍での女性に対する暴力の急増を警告するグレテス国連事務総長=2020年4月5日、UNウェブTVから

―公平中立を装うマクロ経済政策が不平等な作用を及ぼすということですね。
IMFと世界銀行の構造調整政策パッケージは、いまや新自由主義的な資本主義政策として批判されています。フェミニスト経済学者は、これに加えて、こうした政策対応が繰り返される理由に、男性バイアス(偏見)があることを指摘し、問題提起をしてきました。


差別と抑圧解消
日本ではコロナ禍で過度な女性のケア負担が可視化されました。通貨・金融危機のたびに繰り返しフェミニスト経済学者が警告してきたことと重なりますが、有効な対応策は取られませんでした。
フェミニスト経済学はケアを受ける存在としての人間のニーズ(要求)を充足させるために財やサービスの生産や提供、保管を意味する「プロビジョニング」の観点からマクロ経済を捉えなおすことを提唱しています。
同時にフェミニスト経済学は、万人の差別や抑圧を解消するという立場性を表明しています。格差、貧困、気候危機、そして戦争。私たちは、今直面する地球規模の課題にどう向き合うのか。ジェンダー平等や人間のウェルビーイング(より良い暮らし向き)、そして社会正義の点からみた打開策が求められているのではないでしょうか。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月31日付掲載


IMFと世界銀行の構造調整政策パッケージは、いまや新自由主義的な資本主義政策として批判。フェミニスト経済学者は、これに加えて、こうした政策対応が繰り返される理由に、男性バイアス(偏見)があることを指摘し、問題提起。
フェミニスト経済学は、万人の差別や抑圧を解消するという立場性を表明。格差、貧困、気候危機、そして戦争。私たちは、今直面する地球規模の課題にどう向き合うのか。ジェンダー平等や人間のウェルビーイング(より良い暮らし向き)、そして社会正義の点からみた打開策が求められている。

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