きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く③ 「労働力の女性化」が進む

2024-09-06 07:17:44 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済と女性 フェミニズム経済学の視点 長田華子茨城大准教授に聞く③ 「労働力の女性化」が進む

―フェミニスト経済学においてグローバリゼーション(経済の地球規模での拡大)の問題はどのように位置づけられていますか?
フェミニスト経済学にとってグローバリゼーションやグローバル資本主義がもたらす女性やコモンズへの影響を分析することは、重要な研究課題です。中でも、フェミニスト経済学者が初期の頃から関心を持って取り組んだのが、先進国企業による途上国への資本移転の問題でした。

途上国への進出
1970年代後半以降、先進諸国の多国籍企業が途上国へ進出すると、途上国では先進国向けの輸出用品(例えば衣服や電化製品)の製造工場が多数建設されました。途上国の輸出加工区(輸出目的の外国企業を優遇し原材料の輸入関税や法人税を減免させる区)がその典型で、そこでは10代後半から20代の若年の女性が、先進国の多国籍企業にとって,「最適な」労働力として、多数雇用されていたのです。この現象を「労働力の女性化」と言います。
フェミニスト経済学者は80年代初頭以降、東南アジアの電子産業や南アジアの縫製産業などでのフィールドワークを通じて、多数の若年女性が雇われていることを明らかにしたのです。
多くの場合、輸出向け工場での雇用は、農村から都市へと移動してきた女性たちにとって初めてのフォーマルな雇用でした。フェミニスト経済学者は、このフォーマルな雇用が途上国の女性たちにとって何をもたらしたのかを、フィールド調査により探究してきました。



給料日に縫製工場の外で買い物を楽しむバングラデシュの女性たち(長田氏提供)

―長田さん自身もバングラデシュの事例を現地で研究しました。
バングラデシュの縫製工場で働く女性たちを事例にした研究は、女性たち自らが毎月一定額の収入を得ることが、女性たち自身のアイデンティティーを向上させていること、また自身に何かあったときの術(すべ)を確保するなど、女性のエンパワーメシトにつながる側面をいくつも明らかにしています。
一方で、女性たちは企業組織の末端で何の権限もなく、劣悪な労働環境の中で働いていることも浮き彫りになりました。

13年の崩落事故
2013年には、五つの縫製工場が入るビル「ラナ・プラザ」の崩落事故で1137人の命が犠牲になりました。そのほとんどが多国籍企業の委託先の縫製工場で働く女性でした。甚大な被害をもたらした同事故は国内外で注目され、労働法の改正や最低賃金の引き上げなど、縫製工場の労働改善につながる動きはあるものの、労働者のディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を保障するには程遠いのが現状です。
ラナ・プラザの事故後も、先進諸国の多国籍企業による搾取の構造は温存されたままです。それは時に女性の犠牲のもとに成立します。コロナ危機に便乗して、妊娠中の労働者を解雇する、出産給付の支払いを拒否するなど、既存のジェンダー格差をさらに広げかねない事態です。
フェミニスト経済学者のダイアン・エルソン氏は、国家が低賃金労働力や社会的保護の削減に依存するこれまでの「邪道」路線から、女性に対する教育投資をすすめ、技術訓練の機会を女性に付与し、女性個人の能力を強化する「本道」路線の開発政策へ移行することを提言しています。
持続可能な社会の実現に向けて、バングラデシュ政府の責任とともに、途上国に犠牲を押し付けている、私たち日本の消費者の責任も間われています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月29日付掲載


2013年には、五つの縫製工場が入るビル「ラナ・プラザ」の崩落事故で1137人の命が犠牲になりました。そのほとんどが多国籍企業の委託先の縫製工場で働く女性。
フェミニスト経済学者のダイアン・エルソン氏は、国家が低賃金労働力や社会的保護の削減に依存するこれまでの「邪道」路線から、女性に対する教育投資をすすめ、技術訓練の機会を女性に付与し、女性個人の能力を強化する「本道」路線の開発政策へ移行することを提言。
持続可能な社会の実現に向けて、バングラデシュ政府の責任とともに、途上国に犠牲を押し付けている、私たち日本の消費者の責任も。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする