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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

危機の経済 識者は語る③ 富の再分配こそ必要

2020-08-03 08:10:40 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る③ 富の再分配こそ必要
静岡大学教授 鳥畑与一さん

日本銀行が巨額の国債を購入しているにもかかわらず、インフレ率が上昇しないことは、現代貨幣理論(MMT)の正しさの実証とされます。国債発行残高は、国内総生産(GDP)比200%をはるかに超えます。その半分を日銀信用でまかなっています。
これは、MMT流の対策である巨額の政府貨幣供給をすでに行っているということです。それでもデフレ状態を克服できていないのは、MMT流がすでに破たんしていること、資本主義が直面する危機が中央銀行の量的緩和や財政赤字による需要形成では解決できない原因によること、を示しています。

貧困と格差拡大
新自由主義的政策が広がった1980年代以降、世界的な貧困と格差の拡大、とりわけ先進国における経済的格差が拡大してきました。国際社会の取り組みで絶対的貧困(1日1・9ドル以下の生活費)の数は大きく低下しましたが、この基準は貧困の実態に合っておらず、世界人口の半分は依然として1日5・5ドル以下の貧困状態に置かれています。
先進国では、所得でみて上位1%の富裕層への所得と金融資産の集中が進みました。
国連人権理事会への報告によると、1980年から2016年に上位1%の富裕層が所得増大額の27%を獲得(2017年は82%に増大)し、上位1%が富の45%を保有する一方で、下位50%は1%以下の保有です。
富の集中、貧困と格差の拡大を生み出してきたのが、大企業・金融機関と富裕層に対する税負担の軽減であり、租税回避地(タックス・ヘイブン)を使った税逃れでした。



タックス・ヘイブンとして知られるケイマン諸島で最大の島、グランドケイマン島

大企業が税逃れ
米国の非営利組織、タックス・ファンデーションによると、国際的な平均法人税率は1980年の40・4%から2019年には24・2%へ低下しました。非営利組織のオックスファムによると、米国50大企業は1・6兆ドルを、欧州20大銀行は4分の1の利益(250億ユーロ)をタックス・ヘイブンに隠している(2015年)とされます。多国籍企業は利益の40%をタックス・ヘイブンへ移転し、6500億ドルの税収が失われています。個人でも、毎年2000億ドルの租税回避がなされ、富裕層は税収の4%しか負担していません。
日本でも、不安定雇用増大による家計所得の低下が劇的に進む一方、法人税引き下げのもとで、企業の内部留保は480兆円まで増大しています。
問題は、富がタックス・へイブンに本拠を置く投資ファンドに流れ込み、世界的な株主重視経営でいっそうの経済格差を押し広げたことです。このファンドの資産価値(富裕層の資産)を維持するために、資本市場に中央銀行信用が投入され、労働分配率低下等で失われた需要を財政支出でカバーする政策が推し進められてきました。この政策自体が、富の集中と貧困格差のいっそうの拡大という悪循環を引き起こしています。
この「不平等による危機」の構造を是正する政策、つまり社会保障切り捨てを主眼とした賢い投資(ワイズ・スペンディング)ではなく、賢い課税(ワイズ・タクゼーション)こそが必要なのであり、能力に応じた税負担の徹底による富の再分配と新自由主義政策との決別が求められているのです。(この項おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月31日付掲載


税制による富の再分配が必要になっています。
大企業への税金の引き下げ競争をやめさせ、負担能力に応じた税金を納めるように、各国が取り組むべきです。
ちなみに、タックスヘイブンのヘイブン(Haven)は安息の地・避難所・港という意味。税金を回避するところって意味。税金天国(ヘブン:Heaven)ではありません。


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