きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

没後10年 井上ひさしを語る 妻・井上ユリさん 憲法、核兵器、コロナ禍、大事なのは弱者の視点

2020-06-03 07:59:09 | 政治・社会問題について
没後10年 井上ひさしを語る 妻・井上ユリさん 憲法、核兵器、コロナ禍、大事なのは弱者の視点
記憶せよ、抗議せよ、そして生き延びよ

今年は、作家・劇作家で、九条の会呼びかけ人でもあった井上ひさしさんの没後10年です。4月から6月にかけ『井上ひさし発掘エッセイ・セレクション』全3冊(岩波書店)が刊行されます。神奈川県鎌倉市の自宅で妻の井上ユリさんに聞きました。
松田繁郎記者



いのうえ・ゆり=1953年生まれ。料理研究家。87年、井上ひさしと結婚。著書『今日からわたしは一流シェフ』全4巻(米原ゆり名義)、『姉・米原万里』ほか


井上ひさしさん(1934-2010)

新緑が美しい鎌倉市の閑静な住宅街。35段の石段を上ると、いまも井上ひさしさんが自宅にいるかのようなたたずまいです。
蔵書の大半、約22万冊は、ひさしさんの故郷・山形県川西町の遅筆堂文庫に寄贈されています。自宅には今も蔵書の一部があります。
本の虫だったひさしさんが自宅で執筆していた当時の様子は?
「玄関に、本を入れた箱がダーッと並んで、本の山が100%片付くことはないですね。片付けながら、次が届くという感じでした。階段にも本が積み上がって、だんだん、けもの道になっていく(笑い)」
ひさしさんの言葉へのこだわりには、すさまじいものがあります。
ひさしさん愛用の日本語辞書を見せていただきました。
『広辞苑』や『新潮国語辞典 現代語・古語』などに細かい文字で丹念に書き込んでいます。版ごとに買い替えていた辞書の表紙の裏に、その辞書の特徴が書いてありました。
「『○○が載ってない』とか『わかってない』とか、そういうことを書き込んでいるんです(笑い)



井上ひさしさんの国語辞典には多くの書き込みがありました

しあわせな社会を問い続けた
ひさしさんのエッセーは、生前にまとめられた『井上ひさしコレクション』全3巻(岩波書店)のほか、井上ユリさんが編んだ『井上ひさしベスト・エッセイ』(ちくま文庫)などがあります。
今回収録された文章を選んだのは、札幌市在住で井上ひさし研究家として知られる井上恒(ひさし)さんです。
「いちいち『札幌の』と言わないと面倒ですけど(笑い)。大変助かりました。収録されていないエッセーは、まだ今回の倍くらいあります。遅筆堂というけれど、筆は遅くはなかったですね」
新刊の『井上ひさし 発掘エッセイ・セレクション 社会とことば』には、高校生の頃から長編小説『吉里吉里人』を構想していたことがわかるエッセーが収録されています。
「『吉里吉里人』のことは、ずっと頭にあったんですね。東北出身ということや、アメリカ映画『少年の町』(1938年)の影響もあったんじゃないのかな。スペインの『ベンボスタ子ども共和国』のこともすごく喜んでいました」
「人間って、もっと、しあわせな社会をつくれないものかという思いがすべての作品にありますね」



『井上ひさしコレクション』全3巻 岩波書店・税別2000円
『吉里吉里』誕生秘話収録

毎年4月9日の命日前後に川西町で開かれる吉里吉里忌の集いは、コロナ禍の影響で今年は中止となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大の中で、ひさしさんの言葉《記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ》が演劇人をはじめ改めて注目されています。
ひさしさんは、小森陽一さんとの対談で《イギリスの反核運動のリーダーで歴史学者のエドワード・トムソンの、「抗議せよ、そして、生き延びよ」というスローガンが、ぼくのなかにもありました。抗議しないと駄目だ。でも何によって抗議するかというと、それは記憶じゃないかと思った。だからぼくは、「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」と、ひとつ足したんです》と語っています。
「今、生き延びなきゃ。こんな時に改憲を考えるなんて、安倍政権は本当に火事場泥棒ですよね。とんでもないところまで来ています」
憲法、日本語など、ひさしさんの大きな骨格が見えてくるエッセーの数々。
「改めて思ったのは、生活実感から出発してものを見ることです。丸乙と考えようとする。細かいところにグーッと行かないで、歴史とか社会全体で見るんです」
「私が、ひさしさんのすごいなと思うところは、何を考える時も、常に一番弱者の視点でものを見ること。それがスッと自然にできた人でした。何か起きると、それで一番困るのは誰かを考えていました」

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年5月31日付掲載


井上ひさしさんは『広辞苑』や『新潮国語辞典』などを買いそろえていて、本当に言葉を大切にしていたようですね。
そして、何を考えるときも、弱者の視点で見ていた。だからこそ「生き延びる」ことが大事だ!

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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記事を読んで (中嶋紀世美)
2021-06-02 19:41:46
素敵な記事を有難うございます。
井上ひさし様がご存命中、滋賀県だったかの母親大会で講演なさったときに、「(これだけの人たちが)芝居を観に来てくれないかなあ」と言っていたことが心に残っています。様々な方がなかなかお芝居を観に行くことができないこと、そのことが文化が貧弱というか豊かでないことの現れと思い考えさせられ続けています。エッセイ、読んでみますね。
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Re)没後10年 井上ひさしを語る 妻・井上ユリさん 憲法、核兵器、コロナ禍、大事なのは弱者の視点 (きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影)
2021-06-02 22:14:48
コロナ以前から文化への支援は弱かった。
金銭的余裕がないとお芝居も観に行けない。
文化・芸術は贅沢品ではなくって、生きていくための必需品です。
「しんぶん赤旗」に記事が載ってから1年余。「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」が求められています。
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