大企業の決算どうみる① 電機 労働者犠牲で収益確保

大企業の決算どうみる①　電機　労働者犠牲で収益確保
２０１９年３月期大企業決算の特徴を、業界ごとに見ました。

電機大手８社の決算は明暗がわかれました。日立製作所、ソニー、パナソニックの３社が本業のもうけを示す営業利益を増やす一方、三菱電機など５社が営業利益を減らしています。富士通、東芝、シャープの３社は売上高も減らしています。

電機大手８社の2019年３月期決算

社名	売上高	営業利益	純利益
日立製作所	9兆4806(1.2)	7549(5.6)	2225(▲387)
ソニー	8兆6656(1.4)	8942(21.7)	9162(867)
パナソニック	8兆27(0.3)	4114(8.1)	2841(204)
三菱電機	4兆5199(1.7)	2904(▲11.3)	2266(▲11.4)
富士通	3兆9524(▲3.6)	1302(▲28.6)	1045(▲383)
東芝	3兆6935(▲6.4)	354(▲58.9)	1兆132(260)
ＮＥＣ	2兆9134(2.4)	584(▲8.4)	402(▲12.4)
シャープ	2兆4000(▲1.1)	841(▲6.6)	742(5.7)

単位億円、未満は切り捨て。カッコ内は前期比増減％。▲はマイナス

原発輸出で利益減
日立は前年度に引き続き、海外での売り上げが好調でした。国内での売り上げが横ばいだったのに対し、海外は２％増です。欧州での鉄道事業や北米などでの建設機械などの売り上げが増加しました。
しかし、イギリスで進めていた原子力発電所の建設計画への参加を凍結したことで、これまでにかかった費用、２９４６億円を損失として計上したことなどから、純利益は２２２５億円と前年度に比べて３８・７％の減益になりました。また、国内外で連結子会社を整理するなど、国内で１万１３３４人、海外で５３３１人の従業員を減らしました。
ソニーは売上高は１・４％増にとどまりましたが、営業利益は２１・７％と最高益を更新。純利益も８６・７％増と大幅に増やしました。とりわけゲーム事業ではソフトウエアや有料会員サービスの増加などにより、売上高１８・９％増、営業利益７５・３％増と大幅な増収増益となりました。
一方でスマートフォンなどモバイル事業は売上高３１・２％減で昨年度より赤字を増やしました。
最大の要因は端末の売れ行き不振です。売り上げ台数は前年度から半減しました。ソニーはモバイル分野での事業を組織再編するとしています。
パナソニックは売り上げ、営業利益、純利益ともにふやしました。しかし、事業分野ごとに見ると軒並み減益です。従業員の年金制度の改悪や土地売却などによって利益を確保しました。純利益は法人税減税などが寄与し、４８１億円の増益となりました。


家電見本市「シーテック・ジャパン」で人工衛星技術などを紹介した三菱電機＝2018年10月16日、千葉市

各社リストラ計画
三菱電機とＮＥＣは売り上げを増やしたものの、営業利益も純利益も減らしました。いずれも海外での収益が悪化したことが要因です。とりわけ三菱電機では米中貿易摩擦を受けて、中国の顧客企業による設備投資が抑制され、工場自動化機器の受注が低迷しました。
ＮＥＣでは３０００人規模の早期退職を募集したほか、つくば研究所を閉鎖するなどのリストラ費用を計上したことで営業利益が減少しました。
富士通は減収減益。海外売り上げの低迷に加えて、事業再編による収益悪化が要因です。リストラにも着手し、２８５０人が早期退職に応募しています。
米原発事業での巨額損失で経営危機に陥っていた東芝は、パソコン事業を連結対象から外し、火力発電や送配電事業も振るわなかったために売り上げを減らしました。営業利益も減らしましたが、半導体メモリ事業の売却で純利益は１兆１３２億円と大幅に増やしました。
東芝は昨年１１月、５年間でグループ全体で７０００人の従業員を減らすリストラ計画を公表しています。すでに３月末までに８００人以上が早期退職をしました。今回、パソコン用ハードディスクなどを生産・販売する子会社、東芝デバイス＆ストレージで１９年度に３５０人のリストラを追加すると発表しました。
（つづく）（４回連載です）

「しんぶん赤旗」日刊紙　2019年5月28日付掲載

電機各社とも営業利益の確保に苦労していますね。ソニーはハードよりもソフトウェアの売り上げで利益を確保。国内市場がしぼむ中で、リストラはさらにマイナスのスパイラルへ。