パラダイス文書の衝撃② 格差が格差呼ぶ 自動増幅メカニズム
政治経済研究所 合田寛理事
「パラダイス文書」はオフショア=タックスヘイブン(租税回避地)が、巨大多国籍企業や超富裕者など、選ばれた一部の特権者だけのための楽園(パラダイス)であることを明らかにしています。
その結果、オフショア=タックスヘイブンを利用できる人々と、そうでない人々との格差は開くばかりです。近年、特に顕著にみられる極端な富の格差の拡大の主因もそこにあります。
超富裕者が急増
「パラダイス文書」が公開されて間もなく発表された、クレディ・スイスの「世界ウェルス・リポート2017年」によれば、世紀の変わり目の2000年に、世界のトップ1%が所有する富は、全世帯の人々が保有する富の45・5%を占めましたが、現在は50・1%を占めています。特に5000万ドル(約55億円)超の資産を有する超富裕者の増加が著しく、この間に5倍に増えています。
「パラダイス文書」はいかにしてオフショア世界が、深い秘密のべールの下で、超富裕者や彼らが所有する巨大企業に対して、払うべき税を減らし、富をますます増やすために貢献しているかを明らかにしています。
たとえば「パラダイス文書」ではヘッジファンド(投機的投資組合)王、ジェームズ・シモンズ氏の例が紹介されています。氏は個人資産185億ドル(約2兆円)を保有し、フォーブズの世界長者番付で49位の超富裕者の一人です。シモンズ氏はヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」の創設者であり、その旗艦ファンドは年率40%の高収益をあげています。
一方、シモンズ氏および家族の資産はバミューダにあるいくつかのトラスト(信託)で管理されています。オフショア・トラスト(海外信託)は複雑な所有構造を持ち、富裕者が富を隠し、税を逃れる手段の一つです。タックスヘイブンでヘッジファンドを運営し、個人資産もオフショアのトラストで運用すれば、富は膨らむ一方です。

パラダイス文書に記載された米国のウィルバー・ロス商務長官(ロイター)
献金で権益擁護
またシモンズ氏は民主党への主要な献金者の一人ですが、同じ「ルネッサンス・テクノロジー」の運営者でシモンズ氏のビジネス・パートナーであるロバート・マーサー氏は、先の大統領選でトランプ氏への大口献金者でした。
このことはオフショアのファンド運営によって得られた巨額の収益が、アメリカの民主・共和両党への献金のための資金になっているということを意味しています。彼らの献金の目的は言うまでもなく、オフショア・ファンドの権益の擁護であり、ファンドを運営しているファンド・マネージャーおよびその家族の利益の保護であることは明らかです。
彼らの献金を受け政権についたトランプ大統領が、富裕者・企業減税のための税制改革案を提案しているのもまた当然のことです。オフショアが格差拡大を呼び、格差拡大がさらなる格差拡大の政策を招きます。オフショア世界では格差拡大を増幅する自動メカニズムが働いています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月25日付掲載
タックスヘイブンの擁護の政策を政府に求めるために献金をする。その行為にアメリカの商務長官自らが関わってる。
許せないことです。
政治経済研究所 合田寛理事
「パラダイス文書」はオフショア=タックスヘイブン(租税回避地)が、巨大多国籍企業や超富裕者など、選ばれた一部の特権者だけのための楽園(パラダイス)であることを明らかにしています。
その結果、オフショア=タックスヘイブンを利用できる人々と、そうでない人々との格差は開くばかりです。近年、特に顕著にみられる極端な富の格差の拡大の主因もそこにあります。
超富裕者が急増
「パラダイス文書」が公開されて間もなく発表された、クレディ・スイスの「世界ウェルス・リポート2017年」によれば、世紀の変わり目の2000年に、世界のトップ1%が所有する富は、全世帯の人々が保有する富の45・5%を占めましたが、現在は50・1%を占めています。特に5000万ドル(約55億円)超の資産を有する超富裕者の増加が著しく、この間に5倍に増えています。
「パラダイス文書」はいかにしてオフショア世界が、深い秘密のべールの下で、超富裕者や彼らが所有する巨大企業に対して、払うべき税を減らし、富をますます増やすために貢献しているかを明らかにしています。
たとえば「パラダイス文書」ではヘッジファンド(投機的投資組合)王、ジェームズ・シモンズ氏の例が紹介されています。氏は個人資産185億ドル(約2兆円)を保有し、フォーブズの世界長者番付で49位の超富裕者の一人です。シモンズ氏はヘッジファンド「ルネッサンス・テクノロジーズ」の創設者であり、その旗艦ファンドは年率40%の高収益をあげています。
一方、シモンズ氏および家族の資産はバミューダにあるいくつかのトラスト(信託)で管理されています。オフショア・トラスト(海外信託)は複雑な所有構造を持ち、富裕者が富を隠し、税を逃れる手段の一つです。タックスヘイブンでヘッジファンドを運営し、個人資産もオフショアのトラストで運用すれば、富は膨らむ一方です。

パラダイス文書に記載された米国のウィルバー・ロス商務長官(ロイター)
献金で権益擁護
またシモンズ氏は民主党への主要な献金者の一人ですが、同じ「ルネッサンス・テクノロジー」の運営者でシモンズ氏のビジネス・パートナーであるロバート・マーサー氏は、先の大統領選でトランプ氏への大口献金者でした。
このことはオフショアのファンド運営によって得られた巨額の収益が、アメリカの民主・共和両党への献金のための資金になっているということを意味しています。彼らの献金の目的は言うまでもなく、オフショア・ファンドの権益の擁護であり、ファンドを運営しているファンド・マネージャーおよびその家族の利益の保護であることは明らかです。
彼らの献金を受け政権についたトランプ大統領が、富裕者・企業減税のための税制改革案を提案しているのもまた当然のことです。オフショアが格差拡大を呼び、格差拡大がさらなる格差拡大の政策を招きます。オフショア世界では格差拡大を増幅する自動メカニズムが働いています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月25日付掲載
タックスヘイブンの擁護の政策を政府に求めるために献金をする。その行為にアメリカの商務長官自らが関わってる。
許せないことです。