検証アベノミクス TPPと農業① 多国籍企業を最優先
「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げる安倍晋三政権は、環太平洋連携協定(TPP)をアベノミクス(安倍政権の経済政策)の「成長戦略の切り札」と位置付け、早期発効を目指しています。それと一体に、家族農業を基本にしてきた戦後農政と決別し、企業的農業へ向けた農政への転換を図っています。
経済主権売る
安倍政権の「日本再興戦略」改訂2015は、「モノ、カネ、技術等の国境を越えた移動を促進する経済連携協定は重要性を増している」として、TPP推進を掲げました。TPPは、多国籍大企業の国境を越えた利潤追求のために、関税を撤廃するほか、多国籍大企業が障害物とみなす各国の規制を取り払う協定で、「あらゆる分野で日本の経済主権をアメリカに売り渡す」(志位和夫日本共産党委員長)ものです。
日米など12力国が署名したTPPは、貿易や投資、企業活動を最優先し、各国の経済主権や国民生活をないがしろにします。TPP下に設置される「小委員会」を通じ、「利害関係者」という名目で多国籍大企業が各国の制度へ口出しする経路も設けています。
各国の食品安全基準を緩和し、独自の新基準の導入を妨げて、輸入食品の安全を脅かします。製薬大企業の利益のために、生物製剤の新薬データ保護期間を延長して、安価なジェネリック(後発医薬品)の普及を遅らせ、患者や医療関係者に害を与えます。保険や共済の分野を多国籍企業に明け渡します。労働や環境の基準も実質的に引き下げられる危険性があります。
投資家対国家紛争解決(ISDS)条項も盛り込まれました。進出先の国の制度や政策の変更で被害を受けたと主張する外国企業が、その国の政府に対し損害賠償の訴訟を起こせる規定です。国外の国際仲裁廷の判断が優先するため、主権を侵害するという批判が強いものです。訴訟で脅し、規制を断念させる「抑止効果」も指摘されています。

「TPP反対」「安倍政権NO」のプラカードを手にする中央メーデー参加者=5月1日、東京・代々木公園
米企業に経路
12力国の交渉とともに、日米並行交渉も行われました。日本のTPP交渉参加を認める条件として、米国が押し付けた交渉です。
投資分野では、日本の「規制改革」で、外国企業の意見を規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとることを約束しました。米国の多国籍企業が口出しする経路になります。保険分野では、米保険会社が日本郵政の販売網を利用すること、かんぽ生命を他の保険会社と同じ扱いにすることなどで合意しました。
衛生植物検疫(SPS)の分野では、防カビ剤の承認手続きを簡素化し、未承認の4種の添加物を1年以内に承認すると約束しました。牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制の緩和も確認しました。
いずれも、米国が長年、「年次要望書」などの形で要求してきたものばかりです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月26日付掲載
「モノ、カネ、技術等の国境を越えた移動を促進する経済連携」は必要な事はわかりますが…
食料自給率を減らす、食の安全性を緩める、ジェネリック医薬品の普及に規制。などなど、デメリットの方が大きいTPPの実態。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げる安倍晋三政権は、環太平洋連携協定(TPP)をアベノミクス(安倍政権の経済政策)の「成長戦略の切り札」と位置付け、早期発効を目指しています。それと一体に、家族農業を基本にしてきた戦後農政と決別し、企業的農業へ向けた農政への転換を図っています。
経済主権売る
安倍政権の「日本再興戦略」改訂2015は、「モノ、カネ、技術等の国境を越えた移動を促進する経済連携協定は重要性を増している」として、TPP推進を掲げました。TPPは、多国籍大企業の国境を越えた利潤追求のために、関税を撤廃するほか、多国籍大企業が障害物とみなす各国の規制を取り払う協定で、「あらゆる分野で日本の経済主権をアメリカに売り渡す」(志位和夫日本共産党委員長)ものです。
日米など12力国が署名したTPPは、貿易や投資、企業活動を最優先し、各国の経済主権や国民生活をないがしろにします。TPP下に設置される「小委員会」を通じ、「利害関係者」という名目で多国籍大企業が各国の制度へ口出しする経路も設けています。
各国の食品安全基準を緩和し、独自の新基準の導入を妨げて、輸入食品の安全を脅かします。製薬大企業の利益のために、生物製剤の新薬データ保護期間を延長して、安価なジェネリック(後発医薬品)の普及を遅らせ、患者や医療関係者に害を与えます。保険や共済の分野を多国籍企業に明け渡します。労働や環境の基準も実質的に引き下げられる危険性があります。
投資家対国家紛争解決(ISDS)条項も盛り込まれました。進出先の国の制度や政策の変更で被害を受けたと主張する外国企業が、その国の政府に対し損害賠償の訴訟を起こせる規定です。国外の国際仲裁廷の判断が優先するため、主権を侵害するという批判が強いものです。訴訟で脅し、規制を断念させる「抑止効果」も指摘されています。

「TPP反対」「安倍政権NO」のプラカードを手にする中央メーデー参加者=5月1日、東京・代々木公園
米企業に経路
12力国の交渉とともに、日米並行交渉も行われました。日本のTPP交渉参加を認める条件として、米国が押し付けた交渉です。
投資分野では、日本の「規制改革」で、外国企業の意見を規制改革会議に付託し、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとることを約束しました。米国の多国籍企業が口出しする経路になります。保険分野では、米保険会社が日本郵政の販売網を利用すること、かんぽ生命を他の保険会社と同じ扱いにすることなどで合意しました。
衛生植物検疫(SPS)の分野では、防カビ剤の承認手続きを簡素化し、未承認の4種の添加物を1年以内に承認すると約束しました。牛に由来するゼラチンとコラーゲンの輸入規制の緩和も確認しました。
いずれも、米国が長年、「年次要望書」などの形で要求してきたものばかりです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月26日付掲載
「モノ、カネ、技術等の国境を越えた移動を促進する経済連携」は必要な事はわかりますが…
食料自給率を減らす、食の安全性を緩める、ジェネリック医薬品の普及に規制。などなど、デメリットの方が大きいTPPの実態。