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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

北東アジア平和協力構想 実現への道を探る① 9条でリーダーシップを

2014-05-08 14:56:00 | 国際政治
北東アジア平和協力構想 実現への道を探る① 9条でリーダーシップを

韓国の首都ソウルから北東へ特急で約1時間。春川市があります。日本で韓流ドラマ人気の火付け役となった「冬のソナタ」の舞台。人口約30万の自然環境にも恵まれたのどかな地方都市です。4月はじめ同市を訪れました。
(中祖寅一 写真も)

日本で『韓国の軍隊』(中公新書)の著書がある尹載善(ユン・ジェソン)さんに、日本共産党
が提唱している「北東アジア平和協力構想」について意見を聞くためです。
尹さんは、陸軍少佐を経て、研究職に就き90年代に日本の九州大学に留学。日本の植民地支配の歴史と今も続く朝鮮半島の軍事的緊張について、日本の若者があまりに無知であることを知り、同書を書きました。現在は、市内の翰林聖心大学で行政学の教壇に立ちながら小さな教会の牧師を務めています。



尹載善(ユン・ジェソン)さん



軍隊が今も対峙
「ぜひ、春川まで来てほしい」。取材の申し入れに、尹さんはこう言いました。
市内を車で案内してもらうとドラマには現れない、北緯38度線・停戦ラインから約50キロの軍事拠点という現実が迫ってきました。
駅前の広大な駐車場は2005年11月まで米軍の前線基地「キャンプ・ページ」でした。市内各所には、韓国陸軍司令部の一つなど軍事施設が多数存在します。軍事上の制約のため、存在そのものを明かせない部隊や基地もあちこちにあります。基地の門前で大声をあげ訓練する若い兵士たちの姿に日本では経験のない「怖さ」を感じます。
停戦ラインを境に、南北双方合わせて約200万人の軍隊が今も対峙する緊張が続いているのです。



訓練する若い兵士

平和のシンボル
尹さんは言います。「ここまで来てもらったのは、この現実を見てもらうため。偶発衝突も含め、戦争になれば北朝鮮も韓国もなくなってしまう。戦争を絶対に起こしてはならない」
「あなたたちの平和構想には賛成だ。大いにすすめてほしい」という尹さんが強調するのは、「日本は平和憲法を絶対に維持して、平和のリーダーシップをとってほしい」ということ。「中国が軍事力強化を進めるもと、日本が平和憲法に自信を失えば軍拡競争になり、東アジアに再び戦争が起きる」
「日本のおにぎりはナショナルミニマム(最低限の生活保障)のシンポルで、平和憲法は世界平和のシンボルだ。日本の平和憲法をもとに、アジアの平和憲法をつくる。理想主義的といわれるかもしれないが、戦争はできないのだとすれば、一番強い武器は平和憲法だ。日本の平和憲法こそ東アジアの平和への最大のヘゲモニー(主導権)だ」

【日本共産党の北東アジア平和協力構想】
東南アジアで発展している平和の地域共同体を北東アジアでも構築しようというもの。目標と原則に、①関係国を律する平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」の締結、②北朝鮮問題の「6力国協議」を北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させる、③領土紛争問題の解決にあたっては冷静な外交的解決に徹する、④日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配への反省は不可欠の土台であり、歴史逆流の台頭を許さない―ことを掲げています。



平和のルール作りが本流
韓国 「協力通じ信頼醸成を」
ASEAN 武力不行使「日米中も」
海軍シンポ 衝突回避へ「規範」採択


いま世界が、北東アジアの安定に注目するなか、さまざまな多国間対話の提案が出ています。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が昨年5月、米国議会で提唱した北東アジア平和協力構想もその一つ。
朴大統領は「域内国家間の経済的相互依存の増大にもかかわらず、政治と安保協力は立ち遅れている、いわゆる『アジアパラドクス』現象をどう管理するか」としつつ、「米国を含む北東アジア国家が環境、災害救助、原子力安全、テロ対策などの『ソフトイシュー』(やわらかい課題)から対話と協力を通じて信頼を積み重ね、他の分野に協力範囲を広げていく」ことを提唱しました。



4月25日、韓国ソウルの青瓦台(大統領府)で、記者会見する朴槿恵(パク・クネ)大統領(AFP時事)

太平洋またぎ
昨年12月には東京で開かれた日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議に参加するために来日したインドネシアのユドヨノ大統領が、憲政記念館での特別講演で、「中国と日本の良好な関係は、われわれの地域の未来に決定的に重要だ」と日中の緊張緩和を促しつつ、インド・太平洋友好協力条約の締結を呼びかけました。ASEAN諸国が互いに武力の不行使を約束しあっていることを、太平洋をまたいでアメリカから、北東アジア、東南アジアへ、そしてインド洋まで広げるという壮大な提唱です。
ASEAN諸国は、南シナ海での中国との対立をめぐり、南シナ海行動規範策定へ「履行指針」を採択(昨年7月)。同9月からは規範策定への公式協議を開始し、4月21、22日の高官会合で作業の加速化を合意しています。
これに先立つ昨年6月には、ベトナムがASEAN10力国に対し「武力の先制不使用の協定」を結ぶよう呼び掛け。この協定をASEANの対話パートナー国である中国、米国、日本などにも適用することを提案しました。
昨年11月にブルネイで開かれた東アジア首脳会議(EAS)18力国の高官会合では、ロシア、中国、ブルネイが「アジア・太平洋安保・協力の原則枠組み宣言」を共同提案。今年に入っても、台湾の馬英九総統が2月26日、中国の防空識別圏設定をめぐり、日本、中国を含む関係各国に対し東シナ海の洋上、空域での「行動規範」を共同で策定するよう呼び掛けました。
4月22日には、日米中など21カ国の自衛隊・海軍の代表が開いた「西太平洋海軍シンポジウム」で「海上衝突回避規範」を全会一致で採択。海軍艦艇や航空機が海上で予期せず遭遇した場合に射撃管制用レーダー照射を回避すべきことなどを決めました。緊張が激化する一方だった東シナ海を含む新たな動きです。
多国間対話と武力の不行使を中心とする平和のルールづくりは、単なる理想論ではなく、現実政治のもとでのアジアの本流となってきているのです。
日本共産党は、昨年11月、こうした流れに学びつつ、日本の立場でより具体化した「北東アジア平和協力構想」を提唱、今年1月の第26回大会で確認しました。
アジアの動きと日本共産党の提起について日本の外務省元高官はつぎのように述べます。
「ルールづくりの話し合いは決定的に重要。中国との間で領土問題の存在を認めるか認めないかに固執するのは愚の骨頂だ。ルールづくりの主張が市民権を得つつある中で、安倍首相が靖国神社に参拝し、チャンスの芽をつぶした。しかし、今はできるところから始めるしかない。韓国提案にも賛成だ」



「西太平洋海軍シンポジウム」で言葉を交わす、中国海軍の呉勝利最高司令官(左)とグリナート米海軍作戦部長=4月22日、青島(ロイター)

反感より友好
日本の著名なASEAN研究者の一人は、ASEANが地域の平和共同体として発展してきた秘けつを語ります。「ASEANも最初は悲観的だったが、その悲観を裏切り続けて前進した。成功のポイントの一つは、外交の不文律として互いに反感を持っていてもそれを表に出さない政治家の知恵。互いに我慢、妥協することで、そこから手に入れる友好関係がどれほど大きいかを理解し、政治家が決断することだ」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年4月30日付掲載


反感を持っていても、それを表に出さない事。「柔らかい課題」から対話を積み重ねて信頼を醸成する。そして他のより困難な課題に広げていく。外交には、そういった姿勢が大事なのでしょうね。
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