そもそも税金講座⑫ 社会保障再生の財源は? 大企業優遇の是正で確保
民自公3党は6月27日、消費税増税法案、「社会保障制度改革推進法案」などの衆議院採決を強行しました。
「社会保障制度改革推進法案」は、社会保障の基本的考え方は「自助」「自立」だから、社会保障に税金を使わないとして生存権(憲法25条)を否定しました。
税金を使いたいなら消費税の増税をのめという財界が望む経済の論理です。財界の論理にしたがえば、市場競争で勝利をした大企業が多くの富を蓄積し、それに敗れたものとの間に貧富の差が生ずるのは当然のこととなります。財界の論理は、生活を保障するどころか生活を破壊するのです。
社会保障は、国家にたかることでも、他人に甘えることでもありません。社会保障なくして国民の自助も成り立ちません。だから、憲法25条は国民の生存権とともに、国の社会保障増進義務を規定しているのです。

消費税大増税に反対し、大企業・大金持ちに応分の負担を求める人たち=6月26日、高知市
応能負担でこそ
社会保障を再生させる財源は、応能負担原則(応能原則)をよみがえらせることによってのみ確保できます。
応能原則による租税の中心に位置すべきは、担税力の把握が容易な所得課税(法人税・所得税)となります。財源を試算してみましょう。
配当所得は、分離課税で、証券優遇税制が適用されると、所得の大小に関係なく一律10%(所得税7%、住民税3%)の税負担しか求められません。
2010年度に法人企業が配当した課税対象配当額は9兆2352億円で、これに対する所得税収は1兆5592億円となっています。(国税庁統計年報2010年版)
本来、個人株主が受ける配当所得については総合課税をすることが重要です。
しかし、ここでは上記の配当を個人株主が受け取ったとみなして、所得税の過去における金融所得分離課税(最高60%)を勘案して40%の分離課税で計算してみます。その結果は次のように2兆1348億円の所得税の増収となります。
①現行所得税収1兆5592億円(配当合計額9兆2352億円)
②適正な所得税(40%)=9兆2352億円×40%=3兆6940億円
③増収額 ②マイナス①=2兆1348億円
不公平な税制をただす会は、所得税の配当優遇制度などを是正し、過去に採用していた税率の適用を行うことによって、3兆530億円の増収を見込んでいます。(2012年版『福祉と税金』)
所得税の課税の仕方 (2012年現在)
税率適用の仕方
「働いても半分も税金に取られるなら働く意欲がなくなるのではないか」という論者がいます。
所得税の最高税率の適用者は課税所得が1800万円超の人です。しかし、40%の税率となるのは1800万円を超えた部分についてだけで、課税所得の全額に40%の税率が適用されるのではありません。(表)
所得税は超過累進課税を採用しており、高額所得でも最高税率の適用前に5%の税率から順次高くなる税率が適用されます。だから、働く意欲がなくなることなんかありません。
法人税率(資本金1億円超の法人)は1984年当時、43.3%でした。しかし、2011年度税制改定で26.5%まで下がりました。法人税は一つの税率(単一税率)で、所得が多い大企業が断然有利です。単一税率に加え大企業は数多くの優遇税制によって、実際の税負担はとても少なくなっています。
法人税の優遇制度を是正し過去に採用していた税率の適用を行うことによって、6兆8778億円の増収を見込めます。(2012年版『福祉と税金』)
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年7月8日付掲載
社会保障が、自立・自助なんて・・・。とんでもありません。社会保障は貧富の差にかかわりなく享受されるべきものであり、税金や保険料の支払いの額によって差をつけてはいけないものです。
その点、民間の保険と違うところです。
負担能力のある人や企業がたくさん負担して、経済力のない人や障害のある人などの弱者に還元する。
社会保障は、所得の再分配の一端を担っているのです。
民自公3党は6月27日、消費税増税法案、「社会保障制度改革推進法案」などの衆議院採決を強行しました。
「社会保障制度改革推進法案」は、社会保障の基本的考え方は「自助」「自立」だから、社会保障に税金を使わないとして生存権(憲法25条)を否定しました。
税金を使いたいなら消費税の増税をのめという財界が望む経済の論理です。財界の論理にしたがえば、市場競争で勝利をした大企業が多くの富を蓄積し、それに敗れたものとの間に貧富の差が生ずるのは当然のこととなります。財界の論理は、生活を保障するどころか生活を破壊するのです。
社会保障は、国家にたかることでも、他人に甘えることでもありません。社会保障なくして国民の自助も成り立ちません。だから、憲法25条は国民の生存権とともに、国の社会保障増進義務を規定しているのです。

消費税大増税に反対し、大企業・大金持ちに応分の負担を求める人たち=6月26日、高知市
応能負担でこそ
社会保障を再生させる財源は、応能負担原則(応能原則)をよみがえらせることによってのみ確保できます。
応能原則による租税の中心に位置すべきは、担税力の把握が容易な所得課税(法人税・所得税)となります。財源を試算してみましょう。
配当所得は、分離課税で、証券優遇税制が適用されると、所得の大小に関係なく一律10%(所得税7%、住民税3%)の税負担しか求められません。
2010年度に法人企業が配当した課税対象配当額は9兆2352億円で、これに対する所得税収は1兆5592億円となっています。(国税庁統計年報2010年版)
本来、個人株主が受ける配当所得については総合課税をすることが重要です。
しかし、ここでは上記の配当を個人株主が受け取ったとみなして、所得税の過去における金融所得分離課税(最高60%)を勘案して40%の分離課税で計算してみます。その結果は次のように2兆1348億円の所得税の増収となります。
①現行所得税収1兆5592億円(配当合計額9兆2352億円)
②適正な所得税(40%)=9兆2352億円×40%=3兆6940億円
③増収額 ②マイナス①=2兆1348億円
不公平な税制をただす会は、所得税の配当優遇制度などを是正し、過去に採用していた税率の適用を行うことによって、3兆530億円の増収を見込んでいます。(2012年版『福祉と税金』)
所得税の課税の仕方 (2012年現在)
課税所得金額 | 税率 | |
超 | 以下 | |
195万円 | 5% | |
195万円 | 330万円 | 10% |
330万円 | 695万円 | 20% |
695万円 | 900万円 | 23% |
900万円 | 1800万円 | 33% |
1800万円 | 40% |
税率適用の仕方
「働いても半分も税金に取られるなら働く意欲がなくなるのではないか」という論者がいます。
所得税の最高税率の適用者は課税所得が1800万円超の人です。しかし、40%の税率となるのは1800万円を超えた部分についてだけで、課税所得の全額に40%の税率が適用されるのではありません。(表)
所得税は超過累進課税を採用しており、高額所得でも最高税率の適用前に5%の税率から順次高くなる税率が適用されます。だから、働く意欲がなくなることなんかありません。
法人税率(資本金1億円超の法人)は1984年当時、43.3%でした。しかし、2011年度税制改定で26.5%まで下がりました。法人税は一つの税率(単一税率)で、所得が多い大企業が断然有利です。単一税率に加え大企業は数多くの優遇税制によって、実際の税負担はとても少なくなっています。
法人税の優遇制度を是正し過去に採用していた税率の適用を行うことによって、6兆8778億円の増収を見込めます。(2012年版『福祉と税金』)
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年7月8日付掲載
社会保障が、自立・自助なんて・・・。とんでもありません。社会保障は貧富の差にかかわりなく享受されるべきものであり、税金や保険料の支払いの額によって差をつけてはいけないものです。
その点、民間の保険と違うところです。
負担能力のある人や企業がたくさん負担して、経済力のない人や障害のある人などの弱者に還元する。
社会保障は、所得の再分配の一端を担っているのです。