【高さ2mにも、鱗茎は食用のユリ根に】
ユリ科ユリ属の植物はアジアを中心に約100種が北半球の温帯地方に広く分布する。大別するとヤマユリ、テッポウユリ、カノコユリ、スカシユリの4系統に分類されるが、このオニユリはカノコユリ系に属する。その仲間は下向きに花を付けるものが多く、花弁は大きく反り返る。花弁内側には一面に斑点模様。花色が赤、朱、桃、白、黄など多彩なのも特徴の一つだ。
オニユリは中国が元々の原産地とみられ、古い時代に朝鮮半島を経て日本に伝わったといわれる。デンプンを多く含む球根の鱗茎は古くから食用のユリ根としてヤマユリなどとともに栽培されてきた。草丈は1~2m。真夏の7~8月に数個から20個前後の鮮やかな朱色の花を咲かせる。日本本土で見られるオニユリはなぜか3倍体ばかり。そのため種子はできないが、その代わり葉腋に黒いムカゴ(珠芽)ができ、花後にそれが落ちて発芽し増える。オニユリによく似た近縁種にコオニユリがある。こちらは全体的にやや小型でムカゴができない。
学名は「Lillium lancifolium(リリウム・ランシフォリウム)」。種小名は「披針形の」の意で、葉の幅が狭くて長いことを表す。和名の語源は鬼のように大きいことから、または花を赤鬼の顔に見立てたともいわれる。ちなみに英名は「タイガーリリー」。長崎県の対馬には「オウゴン(黄金)オニユリ」と呼ばれる珍しい黄花がある。対馬のオニユリは種子ができる2倍体が中心で、突然変異によって生まれたとみられる。花弁に斑点のないオニユリも見つかっているという。長崎県川棚町はオニユリが町の花。石川県白山市の八田農村公園内の「オニユリの里」には約1万5000株が群生する。「単線待ちの駅 鬼百合の一本挿し」(伊丹三樹彦)
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