【語源は諸説、別名「オバナ」「カヤ」など】
全国の日当たりのいい山野に群生するイネ科の多年草。秋の七草の1つで、根元から何本もの茎を出して株立ちし、先端に長さ20~30cmほどの白い花穂をつける。草丈は1~2.5m。ススキの語源には「すくすく立つ木(草)」から、神楽に用いる鳴り物用の「鈴の木」に因むなど諸説があって、はっきりしない。
別名の「オバナ(尾花)」はふさふさした花穂をキツネなど獣の尻尾に見立てたもの。古くから屋根の茅葺き材をはじめ牛馬の飼料、燃料、炭俵や草履、簾(すだれ)、壁代の材料などとして利用されてきた。ススキは「カヤ(茅)」とも呼ばれるが、これは屋根を葺くイネ科の植物の総称として使われることが多い。ちなみに東京の日本橋茅場町の地名は江戸初期に幕府の命令でカヤを扱う商人たちが移り住んだことに由来するという。
ススキは古くから歌や俳句に詠まれ、花鳥画にもよく描かれてきた。万葉集には40首以上も登場する。その1つに「人皆は萩を秋と言ふ よし我れは尾花が末(うれ)を秋とは言はむ」(作者不詳)。秋の七草を詠んだ山上憶良はススキを萩に次いで2番目に挙げたが、この歌の作者は「みんなが何と言おうと私は秋風に穂先がそよぐススキこそ秋の風情を代表するものだと言いたい」と詠んだ。
ススキは「抱き薄」「薄の丸」「三つ追い薄」など、さまざまな文様が家紋にも使われてきた。奥州伊達氏も家紋の1つが「雪に薄」だった。ススキの仲間には常緑の「トキワススキ(常盤薄)」(別名カンススキ=寒薄)や暖地の海岸に自生する「ハチジョウススキ(八丈薄)」、葉幅が細い「イトススキ(糸薄)」などがある。奈良県曽爾(そに)村の曽爾高原はススキの群生地として全国的にも名高い(写真)。「山は暮れて野は黄昏の芒かな」(与謝蕪村)。