く~にゃん雑記帳

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<ヤブコウジ(藪柑子)> 明治時代に投機熱、葉の斑入りが1鉢1000万円超!

2015年11月11日 | 花の四季

【正月の縁起物、古名「ヤマタチバナ」万葉集にも登場】

 ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木。日本、朝鮮半島、中国、台湾に分布し、山地の日陰の林床などで地下茎を伸ばして群生する。高さは10~20cmほど。「柑子」はミカンの古名。秋から冬にかけて赤く熟す丸い実や葉の形を山のミカンに見立てて「藪柑子」の名が付いたという。同様に赤い実を付ける万両、千両、百両(唐橘=カラタチバナ)に対比させて「十両」という別名を持つ。

 昔から正月の縁起物として寄せ植えや床飾りなどに用いられてきた。万葉集や古今和歌集、源氏物語などには「ヤマタチバナ(山橘)」の名前で登場する。「あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢うこともあらむ」(万葉集、春日王=かすがのおおきみ)。漢名は「紫金牛」。有用植物で、漢方では根や葉、茎が解毒・利尿剤などに使われる。

 ヤブコウジは古典園芸植物でもある。江戸時代には寛政年間(1789~1801年)を中心に京都や江戸で栽培が大流行し、葉に斑(ふ)が入ったものや実が白いものなど変わり種が珍重された。その100年後の明治時代半ば、今度は新潟県を中心に一大ブームが再燃、投機の対象となって高値での取引が全国に広がった。

 ピークだったのは日清戦争直後の1896年(明治29年)。珍品は現在の価格に換算して1鉢なんと1000万円を超える高値が付いたそうだ。その過熱ぶりに、新潟県庁は翌年、売買内容の届け出などを義務づける「紫金牛売買取締規則」まで作ったとか。古典植物だけあって、今も流通している斑入り種にはなかなか優美な名前が多い。「花車」「峰雪」「御所錦」「亀鶴」「三保の松」「糸覆輪」……。「かがみ見てさらに地のもの藪柑子」(井沢正江)。

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