【旺盛な繁殖力、一時〝花粉症の元凶〟という濡れ衣も】
北米原産のキク科アキノキリンソウ属の多年草。代表的な帰化植物で、空き地や川原の土手などに群生し、花期の10~11月頃、一面を黄色く染める。背丈は1~2mほど。日本全国に分布するアキノキリンソウ(別名アワダチソウ)に似て大型なことから「背高泡立草」の和名が付いた。「セイタカアキノキリンソウ(背高秋麒麟草)」とも呼ばれる。
日本への渡来は明治時代中頃で、当初は観賞用や切り花として入ってきたといわれる。戦後、進駐軍が北九州に入ってきたのをきっかけに急速に広がり始め、昭和30年代後半以降、爆発的に分布域が広がったという。繁殖力旺盛で、地下茎を伸ばして増える。九州地方では閉山に追い込まれた炭鉱のボタ山などにはびこったことから、かつて「閉山草」とも呼ばれた。
根からはヨモギなどと同様、他の植物の種子の発芽を抑制し生長を妨げる「アレロケミカル」という成分を出す。その現象は「アレロパシー(他感作用)」と呼ばれる。そのため群生地域周辺ではススキのほかにほとんど他の植物が見当たらないことが多い。ただ、この成分は自らの種子発芽も抑制するため、その自家中毒症状によって数年後には枯れてしまうそうだ。
かつて一部マスコミが「花粉症の元凶」と取り上げたこともあって、一時嫌われ者の雑草とみなされた。「世の末の花かも背高泡立草」(矢野絢)。この句はその元凶説が信じられていた頃に詠まれたのだろうか。だがセイタカアワダチソウは花粉を風で飛ばす風媒花ではなく、昆虫によって受粉が行われる虫媒花。養蜂業者にとっては花の少ない晩秋の蜜源植物としてありがたい植物なのだ。欧米では「Goldenrod(ゴールデンロッド=黄色の杖)」の英名で親しまれており、米国のケンタッキー州やネブラスカ州では州花にもなっている。