く~にゃん雑記帳

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<平城宮跡資料館> 秋季特別展「地下の正倉院展 造酒司木簡の世界」

2015年11月02日 | 考古・歴史

【造酒司出土木簡568点の一括重文指定を記念して】

 奈良文化財研究所の平城宮跡資料館(奈良市)で「地下の正倉院展 造酒司(ぞうしゅし)木簡の世界」が開かれている。造酒司は平城宮で酒や酢の醸造をつかさどった役所。奈良時代を通じて内裏の東方の同じ場所に位置した。「地下の正倉院展」は秋季特別展として2007年から毎年開催。今回は造酒司出土木簡568点が一括して国の重要文化財に指定されたことから、それを記念して代表的な木簡75点を3期に分けて展示するほか、大きな甕(かめ)や祭祀具など関連遺物約30点を通期展示する。会期は11月29日まで(第Ⅱ期10月31日~11月15日)。

  

 造酒司は南北約125m、東西約110mの区画で、築地塀で囲まれていた。これまで発掘調査が行われたのは西側半分だが、掘立柱の建物や井戸が複数見つかった。掘立柱建物は内部に甕の据え付け穴が並ぶものが多いことから、醸造・保管のための施設とみられる。井戸は3基確認され、その1つは周囲に石敷きを巡らせ、六角形の屋形を持つ大きなものだった(写真㊧)。

             

 木簡は主に西側の井戸からの排水路から出土した。その中に造酒司からの呼び出し状(写真)や造酒司に酒を請求した文書、造酒司の役職名を記した木簡などが含まれていたことが、発掘調査地が造酒司であることの決め手になった。また「酒司□」(□は不明)などと墨書された土師器の杯の出土も補強材料の1つとなった。酒の醸造に用いられた酒米や赤米の荷札も多く見つかった。送り主は尾張や丹後、播磨、備中、伊賀、紀伊、美濃など広範囲にまたがる。中には「臭い酢、ネズミが入っている」という意味のメモが書かれた木簡(写真㊥)もあった。

 造酒司では酒の醸造・貯蔵に使われた甕が完全な形では出土していないが、文献史料から口径30cm以上、高さ80cm以上の大きなものだったらしい。並べられた甕の位置を示す木簡が口縁部分に紐で括り付けられていたとみられる。上段の写真㊨の甕は平城宮・京の各所で出土したもの。造酒司からは銅印(写真)も見つかった。甕の紐に取り付ける「封泥」(封をするための粘土)に押印するものだったのではないかという。ただ印面の記号が何を表すのかは不明。

 出土した造酒司木簡の中には聖武天皇の大嘗祭に関わるものも含まれていると推定される。大嘗祭は天皇即位後に最初に行う新嘗祭(にいなめさい)のこと。聖武天皇の大嘗祭は724年(神亀元年)11月23~26日に行われ、造酒司が饗宴用の酒類や神事に用いる供物の準備などを担当した。大嘗祭が行われた月の日付を記した付け札や大嘗祭に使う草木のリスト、大嘗祭で用いる酒の量などを記したとみられる木簡などが見つかっている。


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