【五穀の一つ、縄文時代から栽培】
イネ科エノコログサ属の穀物で、原産地はインドや中央アジアといわれる。日本には稲作が伝わる前、縄文時代に朝鮮半島を経て渡来した。穀類の中ではヒエ(稗)とともに栽培の歴史が古く、米・麦・豆・稗(または黍=キビ)とともに五穀の一つに数えられている。
アワはエノコログサが作物化したものといわれる。子犬の尻尾のような花穂から漢字で書くと「狗尾草」。一般に「ネコジャラシ」という俗称で呼ばれることが多い。草丈は1~2m。長さ10~40㎝の穂に2㎜ほどの黄色い粒状の子実を無数に付ける。穀類の中で最も小粒で、五穀米や団子、菓子、小鳥の餌などに使われる。諺に「濡れ手で粟」など。
英名は「フォックステイル・ミレット」や産出国から「イタリアン・ミレット」「ジャーマン・ミレット」など。学名は「Setaria italica(セタリア・イタリカ)」と、種小名に「イタリアの」と付けられている。命名者はパリゾ・ド・ボーヴォワ(1752~1820)というフランスの博物学者。
アワは古くから皇室の伝統儀式「新嘗祭」で米とともに供物として用いられてきた。万葉集にはアワを詠み込んだ歌が5首。その一つに「ちはやふる神の社し無かりせば春日の野辺に粟蒔かましを」(巻3-404娘子)。「神の社」は相手の奥さんを意味する。「粟の穂の垂れし重さにしづかなり」(長谷川素逝)