【平城宮跡東院庭園、平等院庭園なども紹介】
名勝大乗院庭園文化館(奈良市高畑町)で「『発掘された庭園』~つちに埋もれた古の庭~資料展」が開かれている。発掘調査によって再び地上に現れて復元・整備された古代~中世の“発掘庭園”をパネルで紹介している。10月9日まで。
大乗院は興福寺の門跡寺院で1087年に創建された。現在地に移転後、足利将軍家に仕えた善阿弥によって作庭が始まり、完成後は「南都随一の名園」と称えられた。1995~2007年の発掘調査で、江戸時代末期の「大乗院四季真景図」などに描かれた往時の姿が地下に眠っていることが判明。埋め戻した後、盛り土の上に遺構を復元し2010年から一般公開を始めた。庭園の広さは約1万3000㎡。「旧大乗院庭園」として名勝に指定され、日本ナショナルトラストが管理している。(東大池の中島に架かる朱色の反橋は庭園のシンボル的存在)
2枚のパネルのうち1枚目には奈良文化財研究所による発掘調査位置図や出土した石組み井戸、東大池の護岸、埋まっていた西小池などの写真を掲載。もう1枚で庭園史家の重森三玲(1896~1975)が昭和初期の1938年に庭園を調査したときに作製した平面図と記録写真を紹介している。重森は国内の古典的な庭園の大半を実測調査する傍ら、生涯に約200の作庭を手掛けた。主な庭に東福寺、松尾大社(京都)、岸和田城(大阪)、旧友琳会館(岡山・吉備中央)などがある。(復元された西小池には4つの小さな橋が架かる)
平城宮の東南隅から発掘された「東院庭園」と、奈良時代初期に長屋王の屋敷があった場所の南側から発掘された「宮跡庭園」(平城京左京三条二坊六坪)もそれぞれパネルで紹介中。東院庭園の池には小石を敷き詰めた洲浜があり、自然風景を模した日本庭園のルーツといわれる。この東院庭園は遺構保存のため埋め戻したうえでの復元だが、宮跡庭園は出土した石材などに保存処理を施し、埋め戻すことなく発掘当時の姿で公開しているのが特徴。
奈良県内で現在進行形の発掘庭園といえば、やはり「飛鳥京跡苑池」(明日香村)だろう。これまでに南北2つの大きな池と水の祭祀に使われたとみられる流水施設(写真)などが出土した。7世紀の斉明天皇の時代に築造が始まり、天武天皇のときに改修されたと推測され、日本最初の本格的な宮廷庭園といわれている。県は2025年度にまず中島や噴水とみられる大きな石造物などが見つかった南池の史跡整備工事に着手する予定。どのような姿で復元・公開されるか、今から楽しみである。
今回の資料展では京都市の「大沢池・名古曽滝跡(大覚寺御坊跡)」や京都府宇治市の「平等院庭園」など奈良以外の発掘庭園も取り上げている。旧大乗院庭園を訪れたのは2022年6月以来1年3カ月ぶり。前回はあちこちに「カラスが背後から飛来接近してくることがありますのでご注意ください」という貼り紙や立て札があったが、今回は取り払われていた。