く~にゃん雑記帳

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<クマザサ(隈笹)> 寒くなると葉の縁に白い隈取り

2022年04月14日 | 花の四季

【別名に「縁取笹」や「焼刃笹」など】

 クマザサはイネ科ササ属の1種。日本各地の山地に広く分布するが、元々の原産地は京都盆地周辺の鞍馬山や大原などといわれる。若葉は葉全体が深緑色だが、秋から冬にかけて寒くなると縁が枯れて白くなる。この縁取りを歌舞伎役者の化粧「隈取り」になぞらえ「隈笹」と名付けられた。別名に「縁取笹(へりとりざさ)」「焼刃笹(やきばざさ)」「縞笹(しまざさ)」など。ただ大型のササ類全般をクマザサと呼んで「熊笹」の漢字を当てることもある。

 稈(かん)とよばれる茎は高さ1~1.5mで、葉は長さ20cmほどの長楕円形。クマザサによく似て葉に白い縁取りが入るものに「ミヤコザサ(都笹)」があるが、こちらは全体的にやや小型で、茎の節々が丸く膨らむのが特徴。クマザサの葉は殺菌・防腐作用がある精油成分を含み、古くから笹寿司や笹団子、粽(ちまき)などを包んだり、傷薬や胃痛、高血圧などの民間薬として活用されたりしてきた。

 学名は「Sasa veitchii(ササ・ヴェイチ)」。属名はもちろん日本語のササから。ササ類は東南アジアに多いが、とりわけ日本は世界一種類が多いことで知られる。種小名は19世紀の英国の植物学者J.G.Veitch(1839~70)の名前に因む。万葉集にはササを詠んだ歌が6種ほどある。その1首に柿本人麻呂の「ささの葉はみ山もさやにさやけども われは妹思ふ別れ来ぬれば」(巻2-133)。ササの万葉表記は「小竹」「佐左」などだが、それらのササはクマザサを指しているともいわれる。

 クマザサはまれに紫がかった緑色の小さな花を付け、穂状に実を結ぶ。岐阜県北部の旧飛騨国ではその実を「野麦」と呼んだ。作家山本茂実(1917~98)は「ある製紙工女哀史」の副題で「あゝ野麦峠」を書いた。以下はその冒頭部分。「日本アルプスの中に野麦峠とよぶ古い峠道がある……<野麦>という名から、人は野生の麦のことかと思うらしいが、実はそうではなくて、それは峠一面をおおっているクマザサのことである。十年に一度ぐらい平地が大凶作と騒がれるような年には、このササの根元から、か細い稲穂のようなものが現れて、貧弱な実を結ぶ。これを飛騨では<野麦>といい、里人はこの実をとって粉にし、ダンゴをつくって、かろうじて飢えをしのいできたという」

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