く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<アカメガシワ(赤芽槲・赤芽柏)> 別名「御菜葉」「菜盛葉」

2022年04月29日 | 花の四季

【〝先駆樹種〟裸地でいち早く発芽し急成長】

 トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉樹。日当たりのいい山野に生え、大きなものは高さが10mにも。公園や空地、道端など身近な場所でもしばしば見かける。春、枝先に鮮やかな紅色の若芽を出すのが特徴。アカメガシワの名前もその赤芽と、大きな葉が古くからカシワ(ブナ科)と同じように食べ物を載せたり包んだりするものとして利用されてきたことによる。そのため「御菜葉(ごさいば)」や「菜盛葉(さいもりば)」などの別名を持つ。

 雌雄異株で、6~7月ごろ、穂状の円錐花序に花弁のない小花を多くつける。雄花は淡黄色、雌花は赤みを帯びた黄緑色。有用植物の一つで、葉や樹皮は神経痛や胃痛などの民間薬として用いられ、花や葉は草木染の染料として活用されてきた。学名は「Mallotus japonicus(マロツス・ヤポニクス)」。属名は「長軟毛のある」を意味し、アカメガシワの蒴果には刺状の軟毛が密生し褐色に熟すと果皮が裂開して種が顔を出す。種小名は「日本産の」。観賞用として庭に植えられる近縁種にオオバベニガシワ(別名オオバアカメガシワ)がある。

 アカメガシワは代表的な「先駆樹種(パイオニアツリー)」として知られる。種子は土の中で長く休眠し、時には100年以上もじっと出番を待つ。そして山火事、土砂崩れ、森林伐採などの撹乱で荒地や裸地になり、土壌が熱や直射日光で温められると眠りから目覚めいち早く発芽し急成長する。ある発芽試験によると、種子の剥皮に加え35度の加温処理で発芽率が高まったという。アカメガシワ以外の先駆樹種にはタラノキ、ヤマウルシ、シラカバ、ヌルデ、キリ、ネムノキなどがある。

 アカメガシワは万葉植物でもある。万葉集に4首詠われている「久木(ひさぎ)」はキササゲ(ノウゼンカズラ科)や雑木、老木など諸説あるが、最も有力とされているのがアカメガシワ。手元の『万葉の花』(片岡寧豊著)や『草木万葉のうた』(稲垣富夫著)なども「万葉名ひさぎ」としてアカメガシワを紹介している。以下は山部赤人の歌。即位して間もない聖武天皇の吉野離宮行幸に従った時の作といわれる。「ぬばたまの夜の更けゆけば久木生(お)ふる清き川原に千鳥しば鳴く」(6巻925)

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