く~にゃん雑記帳

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<春日大社国宝殿> 春季特別展「いきもののデザイン」

2022年04月10日 | 美術

【霊獣の龍・鳳凰、吉祥花鳥文の鶴・牡丹…】

 春日大社に古くから伝わる宝物類を収蔵・展示する国宝殿(奈良市春日野町)で、春季特別展「いきもののデザイン 宝物に躍動する花・鳥・動物」が9日から始まった(7月10日まで)。平安時代の古神宝から江戸時代の工芸品まで合わせて67点(前後期で一部展示替え)。その中には「平胡籙(ひらやなぐい)」や「銀鶴及磯形」「蒔絵筝」「緑地彩絵琴箱」(いずれも国宝・平安時代)をはじめ、霊獣や吉祥の花鳥文などが精緻にデザインされた第一級の工芸品が多く含まれる。

     

 「平胡籙」は矢を収納する武具の背板部分。表は銀板に磯千鳥文、裏には尾長鳥と宝相華が装飾されており、銘文などによると1131年(大治6年)に藤原頼長が使用し、その5年後に若宮神社に奉納した。「銀鶴及磯形」はミニチュアサイズの2羽の鶴が向かい合うように立つ。1135年(長承4年)に春日若宮の創建に際し奉納されたとみられる。若宮御料古神宝類にはこの他に単独の「銀鶴」や「金鶴及銀樹枝」なども伝わる。このうち「銀鶴」は奈良国立博物館の分析で表面から金の成分が検出し、当初は全体に金メッキが施されていた可能性があると、つい先日ニュースで報じられ話題を集めた。

 「緑地彩絵琴箱」は蓋の裏面に藤や松の枝、鳥、蝶などが胡粉地に描かれている。鶴と松の組み合わせは平安時代以降、代表的な吉祥意匠の一つになっており、「藤原氏の関わりを示すものかもしれない」との説明が添えられていた。掛け軸の「紅葉鹿図」は江戸時代後期に興福寺に仕えた絵師の内藤其淵筆。鹿の絵を得意とし、描いた鹿を牡鹿が本物と思って突き破ったという逸話も残っているそうだ。大展示室には甲冑史上屈指の名品として名高い「赤糸威(おどし)大鎧(竹虎雀飾)」や「鼉(だ)太鼓(左方龍火焔・右方鳳凰火焔)」「御本殿獅子狛犬(第二殿)」(ちらしの写真)なども展示中。

 大展示室の向かいにある小展示室には秋草文様を中心とした工芸品が並ぶ。「秋草蒔絵手箱」は梨地に蒔絵で秋草を描いた優美な手箱。社伝によると1314年(正和3年)に永福門院から寄進された。永福門院は伏見天皇の中宮で鎌倉時代後期の代表的な歌人。中身の内容品も一部がそのまま伝わっており、手箱とともに重文に指定されている。「秋野鹿蒔絵笛筒」は雅楽の龍笛(りゅうてき)の容器で、江戸後期の蒔絵の名工原羊遊斎(1769~1846)の作。その隣にはよく似た美しい「秋野蒔絵笛筒」。説明書きに目を向けると、なんと――。作者名がタイトルは「本阿弥長周」、その下の文中には「幸阿弥長周」と。調べてみると、蒔絵師として代々将軍家に仕えた幸阿弥家の16代幸阿弥長周のようだ。帰りに受付の方に声を掛けておいたが、果たして手直しされただろうか。

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