【重文「円窓亭」の移築完了は遅れ今秋に】
新型コロナの感染防止と園内の改修工事のため休園していた「春日大社神苑万葉植物園」(奈良市)がこのほど約1年ぶりに再オープンした。園内では「藤の園」のフジの花がちょうど見ごろ。27日に訪ねたところ、平日にもかかわらず予想以上の見物客が詰めかけ、入り口で検温をすませて次々に入場していた。園内改修の目玉「円窓亭(まるまどてい)」(国の重要文化財)の移築は当初4月をめざしていたが、半年ほど遅れて11月ごろになるという。
春日大社は藤原氏ゆかりとあって「藤」が社紋になっている。このため「藤の園」も充実しており、植栽されているフジは20品種約200本に上る。早咲きから遅咲きまでそろっており、例年4月下旬からゴールデンウイーク明けの5月上旬まで長く楽しめる。ここではフジ棚ではなく「立ち木づくり」にこだわっているため、目の高さで花を身近に観賞できることも人気を集めている。
園内のフジを大きく分けると野田藤系と山藤系の2種類。九尺・黒龍・新紅などの野田藤系は花穂が長く基部から下側に向かって順に咲く。一方、昭和紅・緋ちりめん・白甲比丹(しろかぴたん)などの山藤系は花穂が短めでほぼ同時に咲くのが特徴。このほかには麝香藤(じゃこうふじ)など一部中国系も。その甘い香りが漂う中、来園者は今が盛りと咲き誇る色とりどりの花を写真に収めていた。
園内では円窓亭移築などの改修工事のため、一部通路が立ち入りできなくなっていた。円窓亭は鎌倉時代後期に建てられた高床式の経蔵。春日大社では唯一現存する仏教関連の建物で、神仏習合時代のなごりを残すもの。明治時代の初め神仏分離令に伴って現在の万葉植物園の場所に移築され、そのとき四方の側壁に丸い窓が刳り抜かれるなど東屋風に改造された。その後1893年に奈良公園内の浅茅ケ原・片岡梅林エリアに再移築され、一時集会所などとして使われていた。再び万葉植物園内に移築されると約130年ぶりの〝里帰り〟となる。