く~にゃん雑記帳

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<春日大社国宝殿> 特別展「絵解き!春日美術」

2021年04月15日 | 美術

【絵巻に描かれた祭礼や貴族の暮らしを分かりやすく】

 春日大社国宝殿(奈良市春日野町)で「絵解き!春日美術」と題した春・夏特別展が始まった。『春日権現験記』(春日本)を中心に絵巻物などに描かれた光景を「神秘なる御神前」「華麗な春日の祭礼」「王朝の邸宅や貴族文化」などのテーマごとに絵解きを添え分かりやすく解説している。会期を前期と後期に分け8月29日まで開く。

    

 『春日権現験記』は春日明神の数々の霊験を詞と絵で表した20巻に及ぶ絵巻物。平安末期から鎌倉時代にかけて編纂され、1309年に時の左大臣西園寺公衡(1264~1315)が藤原氏の繁栄を祈念して春日大社に奉納した。原本は宮内庁三の丸尚蔵館が保管し、模写本を春日大社や陽明文庫(京都市)などが所蔵している。絵巻には当時の春日社や興福寺のほか貴族や庶民の風俗、暮らしぶりも精緻に描かれており、社寺縁起絵巻の一級品として高く評価されている。

   

 験記第3巻には美しい襖絵や鏡台・硯箱(絵の右上)などのある藤原忠実(1078~1162)の邸内の様子が細かく描かれている。この絵などから襖障子の開閉は今と違って金具に取り付けた紐(房)を引っ張る仕様になっていたことが分かる。鏡も当時はまだ持ち運びできる手鏡や柄の付いた鏡はなく、大きな鏡を載せる台を必要とした。展示中の「黒漆平文根古志形鏡台」(国宝)は平安後期のもので、その脚が木を根ごとこじた(掘り起こした)ような形から「根古志形」と呼ばれている。

 絵巻に神殿の軒に吊るされた青色の灯籠が描かれた場面がある。これは火袋に青い玉を連ねた瑠璃灯籠で、展示中の「瑠璃灯籠」(奈良県指定文化財)は社伝によると藤原頼通(992~1074)が1038年に寄進したという。「華麗な春日の祭礼」のコーナーに展示中の「抜頭(ばとう)・相撲図衝立」(江戸後期の1863年作)は春日若宮おん祭にも伝わる相撲と舞楽抜頭を表裏に描いたもの。こうした衝立類もかつては20年に1度の社殿の造替ごとに描きかえられていたという。相撲の図では褌姿の相撲人が右手を上に、左手を下にして向き合う。これが当時の立ち合いの姿勢とみられ、この後、練歩という立ったままの姿勢で組み合って試合を始めたという。

 特別展の前期(6月20日まで)には国宝の「笙(しょう)」(平安後期)や「黒漆平文飾剣」(平安中期~後期)、重要文化財の「牡丹唐草尾長鳥八稜鏡」(南北朝時代)なども展示中。また初公開として大和絵の絵師冷泉為恭(1823~64)筆「春日明神降臨夢之図」や「春日赤童子像」なども展示されている。

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