く~にゃん雑記帳

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<京都地名研究会> 綱本会長が退任記念講演「万葉の未詳地名」

2019年04月29日 | メモ

【新会長に小寺慶昭氏、副会長に金坂清則・小西宏之両氏】

 京都を拠点に学者や郷土史家らでつくる地名研究団体「京都地名研究会」の2019年度総会・講演会が28日、龍谷大学大宮学舎で開かれた。総会では2014年度から会長を務めてきた綱本逸雄氏が退任し後任の新会長に小寺慶昭氏(龍谷大学名誉教授)、副会長に金坂清則・小西宏之両氏を選任。この後、前副会長の糸井通浩氏が「偽書の偽善性と資料価値―『丹後国風土記残欠』の場合」と題して研究発表し、続いて綱本氏が退任記念講演を行った。

 綱本氏の演題は「万葉の未詳地名を考える(京都編)」。日本最古の歌集『万葉集』には天皇から庶民まで広範の人々が詠んだ歌約4500首が収められている。万葉研究者によって歌の解釈を巡って多くの注釈書や事典が出版されてきた。ただ歌の中に登場する地名に関しては「未詳」で済まされているものも多い。京都ゆかりの歌でも未詳地名が30カ所以上あるという。そこで綱本氏は主な未詳地名を取り上げ地形などを基にそれらの地名の場所や意味を掘り下げた。

 まず最初に「布当(ふたぎ)」。布当の宮、布当の野、布当山などの表現で恭仁京付近の地名として登場する。「布当山、山並見れば百代にも易(かは)るましじき大宮所」(巻6-1055)。綱本氏は「布当とは何か」という観点から検証した。恭仁京は木津川北側の高い段丘上に造営された。その東側で和束川が木津川に合流し、河口右岸に小高い流岡山が位置する。和束川右岸にある春日神社には「二井(ふたつゐ)」と呼ばれる名水があり、和束川の別称二井川もこれに因む。綱本氏は『和名抄』の長門国厚狭郡の郷名に二処郷(ふたゐのごう)があり、そこの地形がよく似ていることなども引き合いに出しながら、布当は二つの河川が合流する地を意味するのだろうと話した。

 次は「活道(いくぢ)」。活道岡・活道山・活道路として登場する。綱本氏は活道の路とは「恭仁京から聖武天皇が度々行幸した離宮・紫香楽宮へ〝往く道〟で、途中の和束町白栖に安積皇子(聖武天皇の皇子)の墓がある」と指摘。また大伴家持たちが宴を開いた活道岡は「恭仁京近傍で東に位置する流岡山だろう。和束へ向かう通り道にある」などと話した。他に「鴨川」「泉の杣」「高」「多奈久良(棚倉)」「鷺坂」「名木河」「宇治若郎子宮所」「彼方(をちかた)」などの地名も取り上げた。

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