【2022年春の完成目指し復元工事が本格化】
国の特別史跡、平城宮跡で第一次大極殿院の南門復元工事の見学デッキが4月1日から開放され、一般客が工事の進捗具合や作業風景を見学できるようになった。南門の建設は木曳祭(こびきさい)と工事の安全を祈願する手斧始式(ちょうなはじめしき)が行われた昨年11月にスタート、3年後の2022年春の完成を予定している。(素屋根の南面には原寸大のカラープリント。左手奥は2010年に復原された第一次大極殿)
南門は奈良時代前半に元日の朝賀の儀や天皇の即位など国家的な重要な儀式が行われた第一次大極殿院(南北約320m、東西約180m)に入る正門。広場を挟んで北側には中枢施設の大極殿(2010年復原)がそびえる。奈良文化財研究所による発掘調査などを基に、南門は礎石建ちの入母屋造りで五間三戸二重門(二重屋根)として復原される。規模は朱雀門(1998年復原)よりやや小ぶりだが、それでも高さは約20m、幅と奥行きはそれぞれ約22.1m、約8.8mもある。
工事現場は巨大な鉄骨造りの素屋根(高さ約30m、幅約50m)で覆われている。その南面には原寸大のカラープリントで完成イメージを表しているが、近づいて見上げると圧倒されるほどの大きさ。見学デッキはカラープリントの初重(下の屋根)より少し下側の右手部分に設置されている。現在は基壇の造成や木材加工などの段階で、年内には初重の組み立てに着手し、来年には二重の組み立てや高欄、瓦工事、そして再来年には塗装、左官工事などを予定している。
南門の復原に要する木材は約480㎥(部材8000丁)に及ぶ。その多くを紀伊山地から調達、中には樹齢約200年の吉野檜などもある。奈良時代、南門の両脇には二階建ての東西楼があり、饗宴などが行われたという。南門完成後にはその東楼と西楼(高さ16.8m、幅22.9m、奥行き11.5m)や、大極殿院を取り囲む築地回廊なども順次整備していく予定。南門工事現場の西側にある「復原事業情報館」では第一次大極殿院の200分の1模型や大きな柱の加工過程を示すサンプル(上の写真、8角形→16角形→32角形→円形へ)、部材の加工に使う奈良時代と同じ道具の手斧(ちょうな)や槍鉋(やりがんな)なども展示している。