【多くが小型種、原種の交配で多くの園芸品種が誕生】
スイセンはヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)の球根植物。主な原産地はヨーロッパ南西部(スペインやポルトガル、フランスなど)から北アフリカ(アルジェリア、モロッコなど)にかけて。40種ほどの原種が確認されており、総称して「原種スイセン」と呼ばれている。それらの交配や品種改良で無数ともいわれる園芸品種が生まれた。原種スイセンには小型のものが多く、園芸品種に比べると華やかさに欠けるが、素朴で楚々とした美しさがある。
原種スイセンでよく栽培されるものの一つに「ナルキッスス(N)・カンタブリクス」がある(上の写真)。種小名はスペイン北部の地名「カンタブリア」に因む。花期は12月~3月頃で、細長い花茎の先に直径3cmほどの白花を一つずつ横向きに付ける。花は外側にある小さな披針形の花被片とその内側の大きな漏斗状の副花冠で構成する。「N・バルボコディウム」(下の写真)は遅咲きの黄花で4月頃まで咲く。その交配種にはカンタブリクスに似た白花も。種小名バルボコディウムは「柔毛に覆われたバルブ(球根)」を意味する。この原種スイセンの系統は花の形から「ペチコートスイセン」とも呼ばれる。
ニホンズイセンの原種は1本の花茎に数輪ずつ付ける房咲き種の「N・タゼッタ」。これがシルクロードから中国経由で改良されて室町時代に日本に伝わったといわれる。ちなみにニホンズイセンの学名は「N・タゼッタ var.(変種)キネンシス(中国の)」。原種スイセンにはほかにラッパズイセンの元親「N・プセウドナルキッスス」や「N・ポエティクス」「N・キクラミネウス」「N・ルピコラ」「N・ロミエウクシィ」「N・トリアンドルス」などがある。このうち「N・ポエティクス」は花姿から「クチベニ(口紅)ズイセン」とも呼ばれる。ギリシャの詩人たちはこの花を好んで競って詩を作ったという。ポエティクスの名前も「詩人の」を意味する。