く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<12人のチェロアンサンブル> 「セロ弾きのコーシュ(巧手)」

2015年06月28日 | 音楽

【ソプラノとの共演でヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ第5番」も】

 気鋭のチェリスト12人が一堂に会したコンサートが27日夕、奈良県文化会館(奈良市)で開かれた。題して「12人のチェロアンサンブル セロ弾きのコーシュ(巧手)」。地元奈良出身のチェリスト2人が加わっていることもあって、今年で4回目の「ムジークフェストなら」で今や最も人気の高いコンサートの1つ。演奏が終わるたびに会場の国際ホールを埋め尽くした熱心なファンから万雷の拍手が送られた。

 メンバー12人は昨年から3人が入れ替わった。新しく加わったのは加藤文枝・菜生姉妹と高木俊彰の弟、高木良。カザフスタン出身のアルトゥンベク・ダスタンを除く日本人11人のうち10人を東京芸術大学の卒業生や在学生たちで占める。最年長で奈良育ちの西谷牧人は東京交響楽団首席チェロ奏者で、東京芸大非常勤講師。伊東裕はその西谷の奈良高校、東京芸大の後輩。若くして日本音楽コンクール・チェロ部門第1位に輝いた逸材で、今春、東京芸大器楽科を首席で卒業し、大学院音楽研究科修士課程に進学したばかり。

 演奏曲目はアンコール2曲を含め全8曲で、曲目ごとに12人、8人と編成を変えた。17世紀後半にドイツを中心に活躍したダヴィッド・フンク作曲「ソナタ組曲」で開幕。2曲目のヴィラ=ロボス作曲「ブラジル風バッハ第5番」ではソプラノの浅井順子(のりこ)が加わった。9番まである「ブラジル風バッハ」の中でとりわけ有名なのがこの5番のアリア「カンティレーナ」。ヴォカリーズ(母音唱法)で始まる切々とした美しい主旋律を、浅井が強弱のめりはりの利いた豊かな声量で披露すると、チェロのソロを務めた伊藤裕も重厚な味わい深い音色で応えた。

 後半最初の2曲、アストル・ピアソラ作曲「ル・グラン・タンゴ」とフォーレ作曲「パヴァーヌ」はいずれもメンバーの1人、佐古健一の編曲。編曲のために3~4日徹夜したという。1曲目はその佐古と西谷の2人がソロを務め、リズミカルで力強い演奏を披露し、8人編成の2曲目では甘美なメロディーと弦をはじくピチカートの音色が心地よく融合した。続く「12本のチェロの為の讃歌」はあの斎藤秀雄がドイツ留学中に師事したというユリウス・クレンゲルの作曲。チェロの響きの美しさを改めて堪能させてくれる名演奏だった。

 後半最後のバッハ作曲「シャコンヌ ニ短調」(ラースロー・ヴァルガ編曲)はバイオリンの独奏曲として有名な作品。これを12本のチェロの合奏によって、1本のバイオリンとは一味違った魅力を引き出してくれた。アンコールはグリーグの「ホルベルク組曲のサラバンド」に続き、昨年もアンコールを飾ったパブロ・カザルス編曲によるスペイン・カタルニア民謡「鳥の歌」。カザルス自身が晩年、ニューヨークの国連本部で「私の故郷の鳥はピース(平和)、ピースとさえずるのです」と言って演奏したこの曲は、何度聴いても毎回胸に迫るものがある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする