そのめでたい名前から正月飾りによく使われる。赤い実はヒヨドリなどの野鳥たちにとって冬場の貴重な食糧。3月のこの時期ともなれば、実は食べ尽されているのが普通だが、玄関脇で人の出入りがあるためか、鳥の被害に遭わず実をいっぱい付けたまま。見る者にとってはうれしいが、子孫を増やしたい当の千両はとまどっているかもしれない。
華道の古書などには「仙蓼」として出てくるが、江戸時代に縁起を担いで千両と名付けられた。「草珊瑚」ともいわれる。姿の似た万両が赤い実を葉の下に垂れ下がるように付けるのに対し、千両は葉の上に万両より小さめの実を上向きに付ける。万両はヤブコウジ科だが、千両はヒトリシズカなどと同じセンリョウ科。
千両と万両があるからには百両や十両もあるの? もちろんある。唐橘(カラタチバナ)が百両、ヤブコウジが十両と呼ばれている。この2つも同様に冬場に赤い実を付ける。万両から十両までの〝序列〟は背丈によるらしい。実の付き方も万両、千両と下がるにつれて少なくなるようだ。百両、十両は万両と同じヤブコウジ科に属する。ミカン科のミヤマシキミ(タチバナモッコク)を億両、アカネ科のアリドオシを一両と呼ぶこともあるとか。